Abdulkadir Selviコラム:保守派のなかの自問の広がり

2019年03月28日付 Hurriyet 紙
地方選挙が近づく中、浮動票の割合が高いことが注意を惹いている。浮動票の割合は27~30%にまで達したと言われていた。

選挙までの残り日数が数えるほどとなり、私は世論調査会社と話をした。ここ2週間で浮動票の割合は減少している。世論調査会社・GENAR研究所のイフサン・アクタシュ所長は、浮動票の割合は8~10%であるとしている一方、オプティマル研究所のヒルミ・ダシュデミル所長は「6~7%まで減少した」と述べている。 

野党勢力の浮動票の割合は低い。浮動票の有権者はその大半が公正発展党への投票者であると言われている。ここ15日間で浮動票の数は減少したが、その多くもまた公正発展党への投票者だ。総合すると、公正発展党の浮動票が党に戻っている。経済危機、党内における首相、自治体首長、構造の変更による影響、司法に対する疑念などのため、公正発展党の一部で不和と衝突が発生していた。しかし選挙の日付が近づくにつれ、公正発展党の支持者が自問を始めた。

■野党の無能さ

初期に見られた「彼らに警告しよう」という形のアプローチの代わりに「警告はするが、やりすぎないようにしよう」という気持ちが生まれ始めた。安定のために公正発展党を選んだ中庸的な有権者は、経済危機の影響で「政権に警告しよう」という傾向を現した。この勢力の中で態度を変えなかった者も、野党勢力の無能さを目にして「これはよりよいものではない。国家が彼らの掌中に入れば、我々は冒険を続けることになりうる。彼らがよりよい政治を行うかどうかは確かではない」という形で比較をしていたということがわかる。この種の有権者は「野党はよりよい政治をする」と言うことができない。

国民的詩人であるメフメト・アーキフが「さあ破壊しよう、スレイマニエ・モスクをと言うなら、二つのショベルと二人の人夫が必要だ。さあ作り出そう、スレイマニエを元に戻そうと言うなら、それを作り出したスィナンとスレイマンが必要だ」と言ったように。

保守派の知識人は有権者に対して距離を保っている。しかし、基礎を形成している保守派が深刻な自問を始めているのは注目に値する。天秤の片方には不満、批判、怒りがあり、もう片方には利益がある。不満を抱いている公正発展党の有権者は、その不満とエルドアン大統領とを分けてとらえている。エルドアン大統領の指導力に問題はなく、「リーダーは別だ」と言っている。ここでは、エルドアン大統領の強いリーダーシップと、彼がイスラーム世界の問題に取り組む姿勢を示していることが大きく影響している。エルドアン大統領はイスラーム世界の声として見られている。この観点から人々は「他のエルドアンなどいない」と言う。「問題というのはエルサレムの問題だ。ピーマン、トマト、玉葱の問題ではない」と言われている。

■エルドアン大統領と候補者の関係 

保守派の有権者の間では近頃「問題は大臣ではなくエルドアン大統領だ」と囁かれている。政治集会でカヤハンが歌い波紋を呼んだ歌に「我々の愛の物語」とあった。保守派の有権者とエルドアン大統領との関係も「愛の物語」を思い起こさせる。7月15日に国民を戦車に向かって歩ませたのもこの感情だった。我ら国民は「メンデレスを守れなかったが、エルドアンを失うわけにはいかない」と言い、クーデターに立ち向かった。

なぜなら、2月28日の弾圧、政党閉鎖命令、スカーフ禁止令により学校にいられなくなった保守勢力は、現在の勝利がエルドアン大統領のお陰であるとわかっているためだ。そのため、天秤の片方にはスカーフ禁止令を、もう片方にはスカーフ着用の自由化が置かれているのだ。メルヴェ・カヴァクチュ氏はスカーフを被っているために大国民議会で発言できなかったが、現在はスカーフを被った議員がおり、内閣にもスカーフを被った閣僚が見られる。政党が閉鎖されエルバカン氏が首相を辞任することになった日々や、軍の後見が縮小し、政党の閉鎖が過去のものとして解除され、参謀本部が国民防衛省と結びつけられた時代を思い起こさせる。

クルドという言葉が禁じられていた時代と、クルド語が自由に話せる時代が比較される。

天秤の片方にピーマン、トマト、玉葱の値段の高騰が、もう片方には権利と自由が置かれている。

エルドアン大統領は遊説に出た際に、トルコが凋落しその国益が危機に瀕するだろうと見立てた。国益を失う危険を感じた後、自らの決定を見直している。そのため、この15日間で風向きが変わり始めた。なぜなら、保守派勢力が「エルドアン大統領がいなくなれば我々の利益はどうなるのか?」と考え始めたからだ。「忠告をする時間ではない。エルドアンを支持する時間だ」という考えが大きな影響を持ち始めた。

これが投票にどう反映されるのか、結果を見届けたい。


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翻訳者:神谷亮平
記事ID:46539