カフェ・ゲッセ〜文学の魅力伝えるエスファハーンの憩いの場〜
2019年06月18日付 Hamshahri 紙
【ハムシャフリー電子版】ナグシェ・ジャハーン広場[訳注:通称王の広場、エスファハーンの中心に位置する]付近にある「カフェ・ゲッセ[訳注:ゲッセとはペルシア語で「物語」の意]」は、近頃エスファハーンの若い作家たちと、「世界の半分」として名高いこの都市を知りたいと願う観光客らの溜まり場となっている。このカフェにはどのような文学的経歴があるのだろうか。
イーブナー通信[訳注:IBNA(Iran Book News Agencyの頭字語))によると、エスファハーンの「カフェ・ゲッセ」はナクシェ・ジャハーン広場の東南、チャールスー・マクスード市場に位置し、経営の全てを女性が担う魅力的で文化的な場所である。
マンスーレ・ジャアファリ―とシーリーン・バデルローの二人は作家で、挿絵画家のスィ―ミーン・バデルローとともに「カフェ・ゲッセ」を経営している。カフェで提供するメニューの原材料調達をはじめ、本と文化の会開催のための企画立案に至るまでが彼女たちの毎日の仕事である。簡単な仕事に思えるかもしれないが、本の批評・研究会、戯曲や物語の朗読会などがカフェ・ゲッセでは定期的に催されているため、彼女たちの仕事はそれほどたやすいものではない。
シーリーンは、カフェの仕事を始めるにあたっての3人組の決断について、次のように語った。「カフェ立ち上げの構想は私たちの読書会から生まれたの。この集いの元になった一番大切なものは、定期的で恒常的な集会の開催だったから、心地よくていつまでも続く空間を作りたかったの。」
マンスーレはシーリーンに続けてこう言う。「カフェ設立の理由は昔から、夜通し火を囲んで語り合う集まりにあったわ。それがカフェの起源なの。物語を語るのは、人間が人生を再構築するのにそのことが欠かせないからよ、私たちの人生に意味を与えるために。」人が集うことと、言葉で人生を表現し直すことの必要性をあわせて考えた時、「カフェ・ゲッセ」を始めようと思い至ったたの。」
スィーミーンはこの文脈でこう言う。「イランではカフェはまだその本来の役割を果たせていなくて、娯楽や贅沢の面が強いけれど、私たちは信念をもって続けていくうちに多くの人をカフェに集めることに成功したのよ。語学の勉強のために訪れる人から、自作の物語を朗読するために来る作家や芸術家までいるわ。」
彼女は続ける。「ここで行われた最も重要な会のひとつは、ジャムシード・ハーニヤーン教授をお招きしての、モハンマド・キャルバースィー氏やサーデギー氏といったエスファハーン出身の作家たちの短編小説に関する討論や本の批評・研究ね。サイード・モフセニー氏にお越しいただいて催した戯曲朗読会もあったわ。なぜなら、私たちの長期的な目標の一つは若い世代の小説や物語への興味を引き出すことだから。青少年の日[訳注:アーバーン月8日(西暦10月30日))には青少年の家の子どもたちがここに集って、私と本の挿絵製作についておしゃべりしたの。」
そしてカフェ・ゲッセに対する観光客の反応についても語った。「カフェの壁に掛けてある写真の数々も観光客の皆さんにはとっても魅力的で、エスファハーンの文化人の多さに驚く人がたくさんいるのよ。彼らはこのカフェが二人の女性作家と一人の女性挿絵画家によって経営されていることを知ると驚いて、私たちの仕事やカフェの始め方について話しだすの。そして彼らの多くが興味を示してくれるわ。たくさんの観光客の方たちがカフェの壁に掛けてある写真に写る女流作家たちの名前を尋ね、彼女たちの作品を読もうとするの。」
彼女はさらに、昨年の夏[訳注:原文は「97年モルダード月」(西暦2018年7月23日〜8月22日)]にカフェを再開してから今までにここで催された企画を話してくれた。「まず作家たちによる朗読会といくつかの作品の批評・研究会の主催。モフセン・ラフナマー氏は戯曲『マクベスの夜の婦人』を朗読し、この作品についてジャムシード・ハーニヤーン教授と討論したわ。サイード・モフセニー氏も『レイラ―・ハータミーの手に届け』の最初の章を読み聞かせた。スィヤーヴァシュ・ゴルシーリー氏も自分が現在執筆中の小説の第1章を朗読し、バフラーム・サーデキーの短編小説『血の眠り』についての討論をジャムシード・ハーニヤーン教授と行ったのよ。」
スィーミーンは自身の経歴については次のように語る。「物語に対する私の興味は、本の挿絵の部分に由来しているの。なぜって私は本を読む時にはいつも、物語の多様で魅力的な箇所に、頭の中で挿絵を描き始めるから。子ども向けの物語やその挿絵に強い関心があるの。」
カフェ・ゲッセの経営者3人の話では、以下に列挙するのがこの店に招かれたゲストたちである。アフマドレザー・ダルヴィーシュ氏(映画監督)、アリーレザー・ゴルドゥーズィヤーン氏(挿絵画家)、モハンマドアリー・バーシェ・アーハンギャル氏(映画監督)、ルーベルト・サーファーリヤーン氏(研究者、ドキュメンタリー映画監督、批評家兼翻訳家)、ユーリーク・キャリーム・マスィーヒー氏、モハンマド・ゴザラーバーディー氏( 翻訳家兼映画脚本製作講師)、バーバク・キャリーミー氏、モハンマドラヒーム・アフート氏、ベフルーズ・アヴァズプール氏(作家、翻訳家、講師兼神話研究家)、ナヴィード・プールモハンマドレザー氏(作家、翻訳家、批評家兼大学教授)、プールヤー・ジャハーンシャード氏(批評家、講師圏研究者)、ペイマーン・イェガーフ氏(作家兼批評家)、マジード・バルゼギャル氏(作家、講師兼映画監督)、モハンマドホセイン・ミールバーバー氏(作家、批評家兼講師)。
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翻訳者:TM
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