■バルキース・シャラーラと記憶のかばん:イラク人の食とリフアト・チャーディルジーの香りについて
【ムハンマド・トゥルキー・ラビーウー】
イラク出身、あるいはヒッラ市出身とも言うべき研究者、バルキース・シャラーラは、今から10年ほど前にある考えを示していた。すなわち料理人の役割というのは、18世紀頃より、もはや食事を提供することに限られず、より大きな影響力を持つものになったというのである。料理人は、音楽家や芸術家、あるいは小説家にさえも劣らない重要な役割を果たすようになり、このことは、今日私たちの目にますます明らかなことである。つまり若い料理人の中にはInstagram上のページを通じて、偉大な思想家たちを上回るほど大きな影響をもつ者も現れている。彼らの役割は人々に未体験の味を紹介するだけにとどまらず、むしろそれぞれの家庭で彼らのレシピに倣うよう促すことにもあり、料理をする人々と食との間に新たな関係を創り出した。というのもこうした料理人らも、まず経験を積み重ね、母親と家族の伝統を踏襲することで料理を覚えた後に、長年(数年、あるいは数十年の)の経験という慣習的な拠り所を取り払ったうえで新たな拠り所を追求することを表明してきた。料理界における”歴史”も”古来の血筋”も持たないまま、料理という芸術を極め、味わいの追及と芸術的で審美的な見た目の付与とを調和させる。あるダマスカス出身の料理人の表現を借りるなら、それはすなわち「料理を躍らせる」ことである。
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