マフブーベサーダート・ラザヴィーニヤー著『バーズィーダール』 イラン・イラク戦争時の逃亡イラク人兵士の物語
2021年12月23日付 Hamshahri 紙
『バーズィーダール[”自身の力を誇示するかのような動きを見せる鳩”を意味する語]』は、イラン・イラク戦争(1980-1988年)時の逃亡イラク人兵士の物語である。彼は2度にわたって戦線から逃亡し、イラン人の捕虜収容所に移送される。この収容所で、彼[イラク人兵士]はあるイラン人捕虜と知り合い、数々の出来事が彼の身の上に起こっていくこととなる。
【ハムシャフリー電子版】(アリーアッラー・サリーミー)『バーズィーダール」は、「マフブーベサーダート・ラザヴィーニヤー」によって書かれた「セイエド・アッバース・ムーサヴィー」という名のイラク人兵士の物語である。具体的には、彼の幼少期から、30歳でイラク軍での兵役を終えるまでの話だ。聖なる防衛の8年間(イラン・イラク戦争の期間中)のうち、[この]シーア派の兵士はバアス党に強制され、イラク人兵士の料理担当として二回戦地に送られる。しかし、その2回とも、イラン人兵士に抵抗したくない[イラン人兵士と戦いたくない]という理由で、戦線から逃走してしまう。しかし、彼は料理の腕が良いために、3回目には、司令官と軍幹部の炊事担当としてイラン人の捕虜収容所に派遣され、ここで彼に様々な出来事が起こる。というのも、この収容所でセイエド・アッバース・ムーサヴィーとセイエド・アリーアクバル・アブートラビーの間に交友関係が生まれ、そのことから戦争脱走兵はイラン人捕虜の弟子となるからである。この師弟関係は収容所の雰囲気にも影響を及ぼし、彼が捕虜らを援助したことで、ついには彼の本性が知られ、彼は情報部に身柄を引き渡されてしまう。
マフブーベサーダート・ラザヴィーニヤーは、[自身の]カルバラーへの旅行中、セイエド・アッバース・ムーサヴィーと知り合う。彼は、著者の滞在先のオーナーであり、ユニークなアラブ料理をふるまう。ハージ・アッバース[ハッジを行なった人への尊称)[という名前で]有名であり、幼少期、モハッラム(イスラーム暦1月)とサファル月(イスラーム暦2月)に料理鍋の傍らに立った時から(※訳注)料理を習得していた。著者はその後、他の旅行中にセイエド・アッバース・ムーサヴィーの思い出を記録し、物語を書く時に勝手に話を変えないように努力している。そして、何を書くにしても、イラン人である著者[の視点]ではなく、語り手の目線で描くようにしている。なぜなら語り手が、彼自身の発言において、自分の出身地のナショナリティや文化に沿って、例えば戦線でのイラク人戦死者を殉教者と呼ぶというようなテーマを語っているからである。これはもしかすると愛国的な[イラン人の]読者は[読んでいて]楽しいどころか反抗心を煽ることになるかもしれないのだ。しかし、真実を細大漏らさず保存し再現するという方針に基づき、まさにそのようにして描かれた物語がこの本の中に収められている。
『バーズィーダール』はページ数471頁、発行部数1250部で、スーレ・メフル出版から最近刊行された。
※訳注:イランでは、イスラーム暦1月(モハッラム月)と2月(サファル月)にイスラーム教シーア派追悼儀式(タースーアー、アーシューラ―、アルバイン等)が多く行われる。その際、街中では大鍋で作った料理がふるまわれる。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
翻訳者:FKM
記事ID:52471