■イラク:イラク人歌手イルハーム・ミドファイー「イラクの歌曲における悲哀は歴史と悲劇の反映」(1)
【対談者:ムスタファー・ハリール】
音楽家にして歌手であるイルハーム・ミドファイーは、西洋式の曲調とアラブ・イラクのフォークロアを融合させた表現方法を特徴としている。それは楽器のギターをイラク音楽に取り入れることで、悲愴感の漂う音楽が一変して喜びに特徴付けられる曲となるのである。
ミドファイーは半世紀以上もこの作法にしたがい、長い歌手人生を通して数百もの楽曲提供をしてきた。
同氏は現在、ヨルダン国籍を取得した1999年以降、アンマンに定住し、昨今のコロナの感染拡大や付随的な禁止にも関わらず、未だ歌唱や作曲に精力的である。数多くの国々や世界の首都をギターとともに転々としつつ、それにより彼は芸術や個性において顕著な象徴を形作った。
これは、音楽活動の開始やそれに伴う困難の数々、そして芸術界や音楽界にまつわる、イラク人音楽家イルハーム・ミドファイーとの対談である。
[対談]
◯多くの人々はイルハーム・ミドファイーについてイラク音楽の近代化の先駆者であると認識しています。しかし、あなたは今日に至るまで形式面・内容面において特別な自分らしさを維持していますが、それに対しあなたは何とお答えしますか。
●ミドファイー:私の特別な表現方法というのは55年以上も前に開始したもので、アラブ・イラク式という点で私はこの方法を提示した第一人者です。アラブ・イラク式音楽に他の馴染みない方法を伴わせることで、若者、その中でも特に外国の音楽しか聴き慣れていない人々の間で好まれるようになり、イルハーム・ミドファイーの表現方法は当時のアラブ・イラク音楽の提供方法において大きな変革かつ革命でありました。
一方、作法と旧態依然の部分については、劇場でのコンサートの提供方法に依存していて、私はカーヌーンやナーイのようなアラブ固有の楽器を異なった表現方法で提供しています。このやり方はギターとアラブ固有の楽器との間における大いなる調和が特徴的です。すなわち、同じ歌を数々の世界的な舞台で提供しますが、披露と提供に新たな表現方法が随伴し、その形式と作法は他のいかなる音楽的枠組みとも異なっている、ということです。
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