イラク:バルキース・シャラーラと記憶のかばん(8)

2021年11月26日付 al-Quds al-Arabi 紙
パーティーで踊るバルキースとリフアト
パーティーで踊るバルキースとリフアト
■バルキース・シャラーラと記憶のかばん:イラク人の食とリフアト・チャーディルジーの香りについて

【ムハンマド・トゥルキー・ラビーウー】

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彼は初対面でバルキースに多くの質問を投げかけ、互いに意見が合うところがあるかを探った。数日後、バルキースに家族に会ってくれるよう頼むのだが、バルキースが思い出すのはこの訪問の時にリフアトによって出された茶である。イラク人政治家らが集う拠点であったカーミル・チャーディルジーの邸宅で、茶は金彩の陶磁器のカップに入れられ、クリーチャというケーキと一緒に提された。バルキースにとっては、父親の方のチャーディルジーはまるで、人々やそのルーツ、集団に関する知識を完備した歩く百科事典のように見えた。

同じ時期についてさらにバルキースが思い出すのは、婚約が決まった後、リフアトが指輪は要らないと言ってきたことである。彼は、結婚指輪を身に着けることは、第一次世界大戦の初期に近東が英仏に占領された際にイラクに持ち込まれ、その後社会の流行とみなされるようになった新しい慣習だと考えていた。また、リフアトは離婚する権利はバルキースにあると同意した。変わったエピソードとしては他にも、リフアトが結婚の日にバルキースにオックスフォード辞典を贈ることを決めたことが挙げられる。当時の左派界隈では、伝統的な儀式など時間の無駄でしかなく、単に「疎むべき過去」に奉じるだけの行為と考えられていた。そこで若い二人は、ささやかなパーティーさえも行わずに結婚した。

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翻訳者:下宮杏奈
記事ID:52923