(続き)
ローマでの展示会の開催
111人全員が、自分の制作物の販売に問題を抱えていた。このため、女性芸術家[ホナルジュー氏]の行うべき最も重要な取組みは、国内外の市場でその作品が販売できる条件を整えることだった。「私たちの活動が成功した理由の一つは、私がこの仕事に〔私個人の〕経済的な見返りを決して求めず、作品を提供した女性たちの努力が実るようにすることに集中したためです。新型コロナウイルスの感染が拡大する前、私たちの事業はとてもうまくいっていました。個展を10回程度当組合が主催し、よい売上を記録しました。例えばイラン暦1398年〔西暦2019年~2020年〕にはイタリアのローマで展示会を開催し、ミーナーカーリー〔エナメル加工を施した図柄付き(銅製)器〕、キリム、装飾品、陶器のミーナーカーリーなどの作品全てが売れ、好評も博しました」。
ビジネス研修
ホナルジュー氏が言及している“芸術の高み” 手工芸協同組合のもう一つの重要な取組みは、仕事の量と質を高めたり、ビジネスや展示の方法を改善したりすることを目的とした、芸術の様々な部門での研修の実施である。「もちろん、より適切な価格で原材料を確保すること、作り手が必要とする原材料の製造元を紹介すること、様々な機会に行われる一時的・定期的な売り場を設置すること、作品を輸出すること等も、当組合が提供するサービスの一部です。作品の制作及びその提供と販売に関する支援を受けている人々はだいたいが社会の低層に属する人々であり、世帯の大黒柱となっている女性も含まれています。」
UAEにおける販売拠点の創設
同組合の組合員は、対面であれオンラインであれ、自らの作品の宣伝や販売のルートを持っていない人が多い。ホナルジュー氏はこの間、組合員同士の助け合いやチームワークの精神の強化に間接的に取り組んだ。「それぞれの売り場や展示会で役割や責任を与えることで、組合員一人一人に自分の仕事と関係のある社会の様々な分野を紹介しています。そして、助け合いやチームワークで、自分の作品を市場に出す新しい方法を彼女/彼らに教えています。」
UAEの芸術愛好家らがイランの窯業製品に関心を抱いたことがきっかけとなり、同国に女性の手による作品の販売拠点が置かれ、セラミックの食器が輸出されている。
他方、5か月前から同組合でエスラームシャフル県〔訳者注:テヘラン州の県で、テヘラン市の南西部に位置する〕で、世帯の大黒柱となっている女性を支援するための服の仕立て工房と販売所を開いた。「この工房では宝石が縫い付けられた伝統的な婦人用コートが作られていて、10人の女性が働いています。」
作品の買い手が見つかる
ファーテメ・ダールーゲさんは、“芸術の高み”手工芸協同組合のメンバーで、美容、服の仕立て、モザイク製品など、数年に亘って様々な芸術活動に携わった後、約4年前から、陶器のミーナーカーリーの制作と販売で生計を立てており、ホナルジュー氏との協働も始めている。「はじめは13歳の時、次は36歳の時に、それぞれ巻き込まれた事故の影響で大けがを負い、脊髄が損傷してしまいました。このことで私の生き方に制約が生まれましたが、私の活動や成長を阻害するものにはなりませんでした。ともかく苦労は多かったのですが、自分の仕事はきちんとこなすことができ、家でミーナーカーリーの仕事をしていました。しかしながら、顧客との関係構築、販売、受注などの業務が難しかったのです。ですので“芸術の高み”手工芸協同組合のメンバーとなったことは、とても助けになりました。もし私自身が展示会に出席できなくても、私の作品は販売支援や広告の対象となったのです」。
ファーテメ氏はここ最近、ナーズィーアーバードに家を借りて一人暮らしをしているが、障害者年金以外の固定収入はなく、(その年金と)自身の手工芸品のわずかな収入で、生計を立てている。
「福祉当局から支給される年金額はわずかで、何の足しにもなっていません。私は研修を開催するためのスペースが欲しいと思っています。このことについて何度も(テヘラン)16区の担当部局と話し合い、わずかなスペースを提供することで、地区の住民を対象とした研修や、障害者のための無料の研修を開催する環境が整えられるよう要望しましたが、まだ具体的な動きはありません。」