イランで最も美しい鳩たちをご覧ください!(1)

2023年05月30日付 Hamshahri 紙

 私たちはサッガーハーネ(多くの場合、屋根と壁に覆われた伝統的な公共の水飲み場)の上やラヴァーク(モスクなどの中庭にある、柱とアーチからなる屋根付きの空間)の小さな穴の中、また時にはシャンデリアの上やモスクのドームの上などで、日々たくさんの鳩を見ている。鳩は自由に飛び回り、旋回し、どこでも好きなところにとまる。

【ハムシャフリー電子版】ここはシーア派第8代エマーム[エマーム・レザー(彼に平穏あれ/以下省略)]の廟、あらゆるものにとって、動物にとってさえも安全な場所である。エマーム・レザー廟のあちらこちらに鳩がいる光景は、以下のようなことを考える人がほとんどいないほどに馴染み深いものとなっている。「鳩はどこから来て、どうやってここで生活しているんだろう?」「参詣者たちは鳩をとても尊重しているのに、昔に比べて鳩の数が減ったのはなぜなんだろう?」この美しい鳥たちは、もはやエマーム・レザー廟の一部になっている。近くからも、遠くからもやってくるこの廟への参詣者の多くは、鳩に餌をあげたり、聖廟内に鳩を放したりすることでエマームに願掛けを行う[※訳注1]。

 「あの方[エマーム・レザー]に、私のことを覚えていてくださるよう伝えてください[※訳注2]。」ラザヴィー大中庭のこちら側は人が少なく、鳩に溢れている。どの隅にも鳩がいて、餌を探している。しかしラザヴィー大中庭のあちら側、キブラのイーヴァーンに面した側には3メートルの赤い絨毯が敷いてあり、多くの会衆がその上に座っている。「アッラーの他に神はなし」と2回目に唱えられると、正午の礼拝の呼びかけ[アーザーン]に続くイカーマが終わり、礼拝者たちは立ち上がって礼拝を始める。「あの方に私のことを忘れないよう伝えてください。」少女がその中庭の隅にいる鳩を追いかけて走り出し、鳩たちとしきりに話している。彼女は鳩たちが中庭や金のドームの上を飛んでいるとき、エマーム・レザーに彼女からの挨拶の言葉を伝えるよう鳩たちにお願いしていた。少女はネイシャーブール[イラン北東部の都市]から来ていた。ここに参詣しに来て、ザリーフ[聖者の棺を囲む金属製(木製のこともある)柵]の傍で、心の痛みをエマーム・レザーに打ち明けていた。「でも、鳩たちはレザー様にとても近い存在です。いつもレザー様のお傍にいます。」



◆エマームの安全な聖域
 礼拝者たちの列が散ると、鳩たちは中庭を囲うラヴァークの方へ飛んでいく。真昼の強い日差しの中、鳩たちはラヴァークの中の陰を羽休めの場として選ぶが、彼らの動きがとまることはない。鳩たちは時にラヴァークから別のラヴァークへ飛び、また時には、別の中庭に立ち寄り、そこのラヴァークにとまる。「ラヴァークには鳩の巣はありません。」我々に同行していた鳥類学者、アリーレザー・ハーシェミーはこのように言い、こう続けた。「鳩たちは巣を作るための場所を聖域内に持ちません。彼らはドームの上で眠るか、聖域の外に巣を作ります。」

 ハーシェミー氏によると、この聖域にいる鳩は、井戸やカナートで眠るカワラバト、または三角屋根の下や街中の建物の小さな空間に巣を持つイエバトである。つまり、聖域はこの鳩たちの主な住処ではない。一方で、少なくない数の鳩たちがラヴァークの至る所やイーヴァーンの側に止まっている。聖廟では、ほぼどの境内にいても周りを見渡すだけで、飛んでいる鳩や身を寄せ合って止まっている鳩の姿が見える。何羽かは飛んでいて、何羽かは身を寄せ合って止まっている。

 では、これほどの鳩たちはどのように聖域に来たのだろうか?ちょうどこのとき、大中庭で出会い、私の質問に答えてくれたのは、この聖廟に勤務するアフマド・ハターイヤーン・ハリーラーバードさんだ。「人々はこの鳩に願掛けをしてきました。鳩は、エマーム・レザーへの寄進物でもあります。参詣者たちはここに来て、(連れてきた)鳩を解き放ちます。そしてここには鳩がたくさんいるので、鳩はほかの場所へ行ってもここに戻って来るようになり、ここに留まるのです。ここは彼らにとってとても安全な場所です。」


※訳注1:イランでは、鳩はエマームに近い存在であるとされている。したがって、「鳩に餌を与えるから、または、売られている鳩を買い自由にしてあげるから、自分の願いを神に伝えてほしい」とエマームに誓いを立て、祈ることがある。

※訳注2:参詣者が、鳩にエマーム・レザーへの言付けを頼んでいる様子。


−(2)に続く−


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翻訳者:NK
記事ID:55882