ウクライナ戦争を理解するための本

2023年08月11日付 Hurriyet 紙

東欧において何年も前から続いていた米ロ間の緊張が、昨年、激しい戦争に変わった。トルコのすぐ隣で続き、私たちに、そして国際社会にも影響を及ぼしたこの戦争は、二つの側面がある。ある側面ではこの戦争はロシアとウクライナといった2つの主権国家の間で行われている。しかし、別の側面ではこの戦争はロシアと西側諸国の間の戦争だ。近くから見れば、ウクライナが西側諸国の武器を手にしていること、兵士が西側諸国で訓練されていること、さらに西側諸国が戦争の早期終結に公然と反対していることがわかる。そのため、ウクライナでの戦争を、ロシアと西側諸国の対立から離して考えることは不可能だ。

この戦争(一般的にはロシアと西側諸国の緊張)は、軍事的な、政治的な、そして宗教的な側面がある。ロシアとアメリカ合衆国が東欧において自国の影響力を及ぼそうとするとき、そこでは宗教も利用される。東欧とバルカン諸国の正教会に影響を与えるために、モスクワ政府は1940年代からモスクワ総主教庁を利用し、アメリカ合衆国はフェネル・ギリシャ総主教庁を利用している。これが、アメリカ合衆国がフェネル・ギリシャ総主教庁に関してトルコに圧力をかける理由だ。

トルコはローザンヌ条約以降、フェネル総主教庁がトルコだけの正教会の教団組織であると主張する。一方、アメリカ合衆国はフェネル総主教庁がすべての正教会の絶対的な指導者であり、フェネル総主教をトルコ人とする条項を取り除き、フェネル総主教庁を国際的な総主教庁にしようとする。しかし、正教世界の他の教会はフェネル総主教を本当の意味での指導者と認めないばかりか、フェネル総主教庁の国際的な組織への変化は、イスタンブルではトルコが全く介入できない、宗教的な「インジルリキ基地」を出現させることになってしまう。

このようにデニズ・ベルクタイが共和国出版で第二版を出版した「ロシア・西側諸国の戦中のフェネル・ギリシャ総主教庁、ウクライナ戦争の宗教的側面」というタイトルの本が、このテーマについて読みやすい形で提供している。ジュムフリイェと紙の読者であればデニズ・ベルクタイの記事は読んだことがあるだろう。彼はウクライナで長年にわたる学術研究とジャーナリストとしての活動の成果としてこの本を書いた。「先生のなかの先生」という異名を持ち、アンカラ大学政治学部国際関係学科のかつての教員であるトゥルカヤ・アタエフが序文を書いたこの本は、多くのテーマにおいて重要な参考資料となっている。フェネル・ギリシャ総主教庁のようにトルコにありながらその経緯があまり知られていないこの組織に関して書かれた、最も包括的な研究だ。さらに正教世界の歴史に関して、トルコ語で書かれた最も内容のある研究でもある。ロシアとウクライナの歴史と現在を理解したい人にとっては重要な一冊だ。


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翻訳者:大屋千寛
記事ID:56120