米国が恐れた外遊;ワシントンの重要な戦略は失敗したのか(5)
2023年04月03日付 Iran 紙
(続き)
◆米国は何を恐れているのか?
諸々の指標や解釈は、国際システムに対する米国支配の時代が終焉に近付いており、現在、我々は国際秩序の移行期を迎えていることを示している。
ロシア・中国の両国は、21世紀の初め頃から米国の優位に挑もうとし、いわゆる「ソフトバランス」戦略の導入を図っており、現在に至るまでこの戦略を一般的に、上海協力機構、BRICS、ユーラシア経済連合、および一帯一路プロジェクトなどの地域的および世界的な機構を通じて実行してきた。
一方、公式・非公式を問わず米国のあらゆる専門家らは中国がライバル勢力として台頭していることを認めており、この6年間で、インド太平洋における米国の存在感と影響力はQUAD(オーストラリア、インド、日本、米国間の戦略的安全保障対話)やAUKUS(オーストラリア、英国、米国間の三国間安全保障条約)のような枠組みにより高まったと彼らが確信する程度にまで到っている。
2022年2月24日におけるウクライナ危機の始まりに伴い、米国は同時にロシア孤立化計画を推進し、ロシアに対する厳しく効果的な制裁の実施を模索してきた。しかし米国の戦略によれば、これらの措置は、米国のすべての同盟国がこの制裁に加わり、ロシア側につく国々に圧力をかけ、それらの国々をロシアから引き離した際に効果を発揮することになる。
ランド研究所が2019年に発表したレポートは、ロシアと中国を米国にとってのそれぞれ異なる課題として提示している。この観点から言えば、「ロシアは優れた軍事力を持つ国であり、国際秩序を崩そうとしながらもそれを支配する見込みはないが、中国は、国際秩序を形成し、支配しようとする米国の対等な競争相手である。」
「ロシアは軍事的な手段や強硬路線を取るが、中国は貿易、投資や開発援助のような積極的な措置に基づいて自らの影響力を拡大している。」
このレポートでは、米国はパートナー国や同盟国の協力のもとでこのプロセスを続けることができる、と以下の中で2度言及している。
−ロシアに対する効果的な制裁について
−中国との経済競争について
著者の論調はどちらかといえば勧告的だが、実際のところ米国は同盟国の最大限の支援なしにはこのプロセスを進めることはできない。一方で、このレポートは二つの大国と同時に対立するのは大きな間違いであることを暗に指摘している。
西暦の去年の半ばに、ジョー・バイデン米国大統領は「中国によるロシア支援に関する具体的な行動や約束はまだ見られない」と述べた。
その後、ディプロマット誌はある中国の専門家のレポートを掲載してバイデンのこの発言に言及し、「これらの事例は、ロシアが中国により依存し、米国が中国をより恐れていることを示している!」と記している。
米国が最も恐れているのは、「枢軸孤立化」戦略と呼びうるロシアと中国に対する自らの戦略の失敗である。なぜなら、ロシアと中国という2つの大国に同時に対処することは不可能だからであり、特に中国はその柔軟なアプローチと経済交流で世界のさまざまな国で看過できないほどの影響力を手にいれることができているからである。
ウクライナ危機に関連した事例に注目すれば、米国の枢軸孤立化戦略は6つのステップから構成されていると言える。
1、 ロシアのような柔軟性のない地政学的アプローチを取る国を挑発し、巻き込む。
2、 ロシアに圧力をかけ、制限するよう、イギリス、日本、ドイツなどの同盟国や友好国を説得する。
3、 金融や人権のツールおよび全面的な中傷戦術で国際的な圧力を生み出す
4、 非同盟国や競合国に対し、中国などの対象国との関係を縮小するよう圧力をかける
5、 対象国を孤立させ完全に弱体化させる
6、 最終的に、地経学的アプローチで競合国・中国への対抗や対処を始める
米国の同盟国を「枢軸」と名付けたのは、これらの国の多くが[ウクライナ]危機の初期でも米国の政策に従っておらず、インドのような一部の国はロシアからの石油購入を何倍にも拡大しているからである。したがって、それらのすべての国に対して、いついかなる時でも「連合」という用語を使用できるわけではない。
例えば、フランスとドイツは交渉と和平の土台づくりに賛同しているが、ホワイト・ハウスからの圧力が両国にそれを許していない、と言うことができる。
要するに、習近平のロシア訪問の際の発言は、米国の枢軸孤立化戦略がまったく機能しておらず、中露関係を縮小することができていないことを示していると言わねばならない。これこそが国際秩序の移行期における米国の恐怖の理由であり、対等なライバル国・中国への対処がより困難になっている理由である。
−(了)−
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翻訳者:LJ
記事ID:56251