Abdulkadir Selviコラム「ライースィー大統領の死の疑問」

2024年05月22日付 Hurriyet 紙
イランは追悼の中にいる。イランはライースィー大統領を始めとした、疑問が残るヘリコプター事故において命を落とした人々の葬儀を行った。

今日、テヘランにおいて宗教的最高指導者のアリー・ハーメネイー師によってお別れの祈りが行われる。

イランでは、しばらくの間、不審な暗殺事件が発生している。イランに対してしばらくの間、イスラエルとアメリカによる作戦が実施されている。

①原子核物理学者の殺害

2010年11月27日にテヘランにおいて原子核科学者のムフシン・ファフリザーデ氏が殺害された。ファフリザーデ氏の殺害は序章に過ぎなかった。直近の10年においてイランでは5人の原子核物理学者が殺害されている。

ヘリコプター事故で命を落としたホセイン・アミール・アブドッラーヒヤーン外務大臣は、暗殺事件はイスラエルによるものと非難した。しかし興味深いことはこれらの暗殺がイランの首都、テヘランで実行されたことだ。

それではイスラエルはテヘランでいかに暗殺を実行することができたのであろう?

②核実験施設へのドローン攻撃

2021年4月19日にイスファハーンとタブリーズにある核実験施設が攻撃された。イランのアブドッラーヒヤーン外相は攻撃についてイスラエルを非難した。

核実験施設を攻撃したドローンはイラン国内から操作されたことが判明した。

③ガーセム・ソレイマーニー司令官の暗殺

中東地域におけるイランの分派として見られていたイスラム革命防衛隊のガーセム・ソレイマーニー司令官は、2020年1月3日にバグダード空港に到着した時にアメリカによって実行された攻撃において殺害された。ソレイマーニー司令官の暗殺は分岐点であった。なぜなら当時のトランプ大統領の指令によって行われた作戦の後、イランの中東地域における分派が失われたと言えるからだ。

ソレイマーニー司令官に関する情報はイラン国内からもたらされたものであるという憶測が継続している。

④ソレイマーニー司令官を讃える

2024年1月3日にソレイマーニー司令官を追悼するためケルマーンで行われた式典で爆弾による攻撃が行われた。イスラム国が実行したと主張し、イスラエル名義の攻撃では103名の命が失われた。

⑤ライースィー大統領のヘリコプターの墜落

2024年5月14日にはヘリコプターが墜落した結果、エブラーヒーム・ライースィー大統領を始めとしたイランの主要人物が死亡した。

これら全てを並べ、ライースィー大統領のヘリコプター墜落事故をイスラエルに関連付けるような主張をするのではない。

⑥イスラエルはイランでアクションを起こすことができる

しかし、イスラエルは、ここの所、イラン国内でイランの地を利用しながら、イラン人の殺し屋を通じてイラン国内からドローンを発信させ、作戦を実行できる力を持っているという点を主張したい。

ライースィー大統領の殺害について、このことはイスラエルにとって利益なのか。答えはその通りである。イランを混乱させるあらゆる事件はイスラエルにとって利益である。この件の背後にはイスラエルの手があるのであろうか。答えはあるかもしれないである。しかし、この事件の責任をイスラエルに着せ、事件が隠蔽されるとは考えていない。ライースィー大統領のヘリコプター墜落事故には不明点がある。これらが明らかにされることが必要だ。

◾️イランにおける権力闘争

この事件はイラン国内における権力闘争の結果ではないか。それとも最も怪しいとされるイスラエルがこの件に関与しているのか。

私には、おかしな問題や明らかにしなければならない不明点があると感じる。だからこそ、イランの内部に目を向けることが必要なのだと思う。

◾️不明点

①確かに、イランに対して1979年のイラン・イスラム革命以降、禁輸措置が取られている。しかしイランは大統領を輸送するヘリコプターに信号の送信を担保する航空機用救命無線機をも装備させられなかったのであろうか。国内でたった一つのELT装置があれば、まず大統領の移動のために使用されるヘリコプターに装備するべきではないのか。アメリカのバイデン大統領はイランの1979年に凍結させられた100億ユーロを2023年7月3日に解放した。

◾️2機のヘリコプターはいかに飛行したのか

②3機のヘリコプターが離陸した。そのうちの2機は着陸を予定した空港への着陸を成功させた。大統領を輸送するヘリコプターはなぜ墜落したのか。

③他の2機のヘリコプターが霧の濃い地域に到達した時、飛行経路を変更したことが証言されている。では、大統領の乗ったヘリコプターのパイロットは経路をなぜ変更させなかったのか。

④飛行経路の変更について他の2機のヘリコプター・パイロットと互いに情報の交換をおこなったのか。

◾️霧の空の中、なぜ飛行したのか

⑤大統領を危険のない経路で、そして国で最も安全なヘリコプターで輸送する。その地域は山がちであり、天候が霧と雨であることが知られているのにも関わらず、100%危険がある経路をなぜ飛行していたのか。パイロットはヘリコプターをなぜ飛行させたのか。

◾️航空機用救命無線機があったのなら

⑥ライースィー大統領は大統領府に所属するヘリコプターではなく、イラン赤新月社に所属するヘリコプターに搭乗したことが明らかになった。ライースィー大統領が乗るヘリコプターにELT装置が搭載されていたのなら、墜落した瞬間から30日間、信号が送信されたはずだ。そうであれば、ライースィー大統領の捜索はより簡単になったはずである。ではライースィー大統領の死亡が確実なものとなるまで、発見したくなかったのだろうか。

◾️ヘリコプターのブレードの着氷が起こったのか?

⑦ヘリコプターが墜落した地域では濃霧が発生していた。霧の中を通過しなければならないヘリコプターのブレードの表面では着氷が発生する危険性がとても高くなることが言及されている。このことがヘリコプターのパイロットの間ではとてもよく知られているのは明らかである。ではヘリコプターの墜落ではブレードの表面の着氷が原因となったのであろうか。

◾️コックピットでの火災

⑧墜落するヘリコプターでパイロットがいるコックピットで火災が発生していたことが確認された。パイロットと二人の乗務員は燃えながら死亡したことが明らかになった。大統領が搭乗したメインキャビンがコックピットから切り離されたことが明らかになった。

⑨コックピットでの火災は暗殺の兆候だったのか。コックピットに爆発物や空気中に可燃性の物質が置かれた可能性はどうなのか。

◾️宗教的指導者の争いなのか

⑩ではイラン国内での権力闘争について考えたい。イランはまずディープステートがあり、ついで国家がある国だ。国で実権を握っている宗教的な指導者のアリー・ハーメネイー師は85歳であるため、ハーメネイー師が世を去ったあとに彼の代わりに誰が後継者となるのかがイランで最も重要な問題となっている。ライースィー大統領は師の後継者と見られている二人の有力者の内の一人である。もう一人はハーメネイー師の息子であるモジュタバ・ハメネイ氏だ。ではイランのディープステートの中ではモジュタバ・ハーメネイー氏を求める構造がライースィー大統領を排除したのであろうか。

◾️大統領になるつもりだったのか

⑪ライースィー大統領が宗教指導者になれば、その後任にホセイン・アミール・アブドッラーヒヤーン外務大臣がつくことが予測されていた。ではこれは一石二鳥だったのか?イランのディープステートはこれらを一掃したのか。

疑問がつきることはない。


この記事の原文はこちら

同じジャンルの記事を見る


翻訳者:伊藤颯汰
記事ID:57957