外国との電力取引の増加は電力業界に大きな輸出収入を生み出す一方で電力供給源と需要の多様性に繋がり、国家安全保障のカテゴリーの一つであるエネルギー安全保障の向上をもたらすだろう。
現在、イランはイラク、アフガニスタンとパキスタンへ電力を輸出しており、アルメニアとアゼルバイジャンとは輸出入を行い、そしてトルクメニスタンからは電力を輸入している。それにもかかわらず、発電量と比較して輸出電力量は少ない。1401年(西暦2022年)にエネルギー省はおよそ50億k Whの電力を輸出したが、これはイランの潜在的な輸出能力に遠く及ばない。この一方で、関連する上位法や上位文書は電力輸出を増加させることと、イランを地域のエネルギー取引の拠点にすることに焦点を当てている。電力の地域市場の形成と地域拠点の創出は第6次開発計画法の目標の一つとされてきた。このアプローチは第7次開発計画にもイランを電力取引の拡大を軸とする地域のエネルギー取引拠点にするという枠組みの中で推進されている。潜在的な電力生産の能力(再生可能電力を含む)と地域でのイランの戦略的地位、近隣諸国の電力消費ピーク時との大幅な時間差の存在、および近隣諸国の異なる気象条件を考慮すれば、イランには電力輸出を増やし、地域の電力貿易・取引の拠点になる能力がある。この点において電力の総取引量を200億k Whに増やすことが電力部門における第7次推進計画の目標の一つとなっている。電力の対外貿易の拡大の主要な原動力はその経済的利点であり、このことは電力産業の輸出収入を生み出すことに加えて、発電所の能力を増強するための国内投資を補完するものとして、発電(特に消費ピーク時に電力供給することを目的とする)への投資の必要性を削減すること、さらには送電網の運用コストを削減することに効果的である。また各国の送電網を相互接続することで、国家間の共通の利益が創出され、国家安全保障の向上につながる。