モロッコ:スペイン政府、セウタとメリリャ問題においてトランプ大統領の影響がモロッコに有利に働く可能性を否定

2025年03月07日付 al-Quds al-Arabi 紙

■スペイン政府、セウタとメリリャ問題においてトランプ大統領の影響がモロッコに有利に働く可能性を否定

【ロンドン:本紙】

スペイン政府は、米国のドナルド・トランプ大統領がモロッコ寄りの立場を取ることで、セウタとメリリャに関する問題に影響を及ぼす可能性を否定している。一方で、一部のアナリストは、パレスチナやウクライナなどの問題をめぐるスペイン政府と米国政府の関係悪化を背景に、この問題について取り上げている。

トランプ大統領は、最初の任期の終盤に西サハラに対するモロッコの主権を承認していた。スペインの首脳部は、米国政府とモロッコ政府の間でさまざまな問題に関して対話がなされており、なかでも中東に関するものはモロッコとスペインの二国間関係に影響を及ぼす可能性があると考えている。

スペインのホセ・マヌエル・アルバレス外相は今週、「トランプ大統領とモロッコの良好な関係が、セウタおよびメリリャにおけるスペイン(の主権)に影響を及ぼす」可能性を否定した。

さらに、「(そのような可能性は)まったくない」と述べたうえで、「モロッコは友好国であり、戦略的パートナーである。米国は歴史的にすべての欧州人にとって自然な同盟国であった」と強調した。加えて、自治権を持つ2つの都市(セウタとメリリャ)について、「スペインの不可分の一部であり、これは誰にとっても明白な事実である」と述べた。

アルバレス外相がセウタおよびメリリャに対するこれら情勢の影響を軽視する一方で、一部のアナリストは、米国政府の立場やモロッコとの関係の発展が、自治権を持つ両都市の安定に影響を及ぼす可能性があると指摘している。

この懸念の背景には、EUと米国の関係悪化により、スペイン政府と米国政府の対話が欠如していることを含む多くの要因がある。同時に、スペインはパレスチナ問題においてトランプ大統領の政策にもっとも強く反対する国の一つであり、ペドロ・サンチェス首相は、パレスチナ人の移住提案をめぐって同大統領を厳しく批判している。

さらに、危機発生時に米国政府がスペイン政府に対してどのような対応を取るかが懸念されている。2004年にスペインが米国の対イラク政策に反対した際には、米国政府はモロッコをNATOの戦略的パートナーと宣言するにおよんだ。この決定は、NATO加盟国であるはずのスペイン政府の反発をも招いた。

スペインはトランプ大統領の政策に強い懸念を抱いている。例えば、国境紛争に関する複雑な問題を不動産問題のように扱ったり、ガザ地区からのパレスチナ人の完全移住を提案したり、平和の名のもとに、ウクライナに対してロシアが占領する東部を放棄するよう勧めたりした。また米国政府は歴史的にスペイン政府に対し、セウタとメリリャについてモロッコとの合意を求めており、そのためNATOの保護対象から両都市を除外してきた。

さらに重要なデータのなかには、元スペイン国防相のフェデリコ・トリジョ氏が最近明らかにした内容が挙げられる。それによると、2002年夏にスペインとモロッコが戦争寸前となった「ペレヒル島危機」の際、米国務省はスペインに対し、チャファリナス諸島をモロッコに譲渡するよう提案していたのだという。

一方で、この問題が再び提起されたとしても、スペインがそれほど懸念を抱かない可能性を示すデータもある。その筆頭としては、EUが現在、トランプ大統領のあらゆる政治的提案に反対していること。第二に、スペインには、サンティアゴ・アバスカル党首がホワイトハウスと強い関係を持つ極右政党「ボックス(VOX)」が存在すること。そして第三に、モロッコ自体が、西サハラ問題の解決策としての自治案に対するスペイン政府の支持を維持することを重視しているために、この問題を現時点で取り上げたくないと考えていることがある。実際にモロッコは、セウタに正式な税関を設置することを歴史上初めて受け入れた。

セウタとメリリャはモロッコの北部に位置し、長年にわたりスペインが占領している。モロッコはこれらの領土の返還を求めているが、近年は西サハラ問題への対応を優先するため、この問題を一時的に凍結させている。


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る

同じジャンルの記事を見る


翻訳者:新藤花絵
記事ID:59792