アンタキヤ・ゼウグマ遺跡の「ミューズの家」、保護屋根完成

2025年10月19日付 Cumhuriyet 紙

ガズィアンテプ県ニズィプ地区のゼウグマ古代都市遺跡で、ミューズ(ムーサ)9人が描かれた「ミューズの家」を保護するための屋根構造が完成した。トルコ・イシュ銀行の支援により建設されたこの保護屋根により、ゼウグマ遺跡の最重要ローマ遺構エリアが、保護された状態で訪問者に公開されることになる。

ゼウグマ古代都市遺跡はガズィアンテプ県ニズィプ郡ベルクス村、ユーフラテス川沿いに位置する。この古代都市は古の物語の舞台であり、今なお歴史が息づく。歴史を保全し続けるためのさまざまな取り組みがおこなわれている。

「ミューズの家」は、古典ギリシャを学ぶ際に欠かせない要素である叙情詩、歴史、音楽、天文学、哲学といった各分野の女神、通称「ミューズ」九人が描かれたモザイク画にちなんでそう呼ばれている。ミューズの家は遺跡のなかでも最重要エリアとして位置づけられており、この度、ガズィアンテプ県庁がトルコ・イシュ銀行の支援を得て建設していた保護屋根が完成した。

■「最も重要なローマ邸宅」

この保護屋根のお披露目式には、ガズィアンテプ広域市ファトマ・シャーヒン市長、トルコ・イシュ銀行スアト・ソゼン副総裁、産業芸術局ズハル・ウレテン局長が列席。また、発掘調査責任者であるアンカラ大学言語歴史地理学部古典考古学学科のクタルムシュ・ギョルカイ教授が、ミューズの家で進行中の調査に関する情報を補足した。

同地の気候条件に合わせて設計された保護屋根は、モザイクを外的影響から守り、訪問者が快適に見学できるようにすることが目的である。発掘調査責任者であるギョルカイ教授はお披露目式でのスピーチで、多様な文明が交わる場所に位置し、東西文化が混ざり合い、新たな融合が生み出されてきた都市ゼウグマで、文明の痕跡や遺物はもちろん、最重要課題として(古代ギリシャの)真実の物語を考古学的研究を通じて理解しようとしていると強調した。

ギョルカイ教授は、過去の一連の発掘調査のなかでも、ミューズの家での発見がモザイクの歴史を変えたと述べ、ミューズの家の西暦1世紀末~2世紀初頭の設計と推測されると述べた。また、豊かな建築装飾、保存状態のよいモザイク画・フレスコ画もミューズの家がゼウグマ遺跡の最重要ローマ邸宅の例の一つに位置づけられる理由だとした。

■「責任を感じた」

イシュ銀行のスアト副総裁は、考古学的発掘調査が、数千年におよぶ歴史・文化の記憶を明らかにしたこと、そして発掘が過去だけでなく現在・未来にも光を当てていることを強調した。あわせて、多様な文化が交わり、さまざまな文明が折り重なった証左でもある考古学的遺産を今日の世代に伝え、保護し、未来に受け継ぐことが非常に重要だとした。同氏は、「ミューズの家の発掘調査後、このエリアを保護する責任を感じ、保護屋根の建設を支援した。保護屋根のおかげでミューズの家が外的影響から守られるのみならず、訪問者も落ち着いて見学でき、国内外のより多くの観光客が訪問ルートに加えるようになるはずだ」と述べた。

ミューズのモザイク画では、縄編み模様で縁取られたメダリオンの中に九人のミューズが配置されている。中央の大きなメダリオンに、ミューズの長であり叙事詩の女神であるカリオペーが描かれ、その周囲をギリシャ文字で名前が記された八人のミューズらのメダリオンが取り囲む。9人姉妹のうち、クレイオーは歴史の女神、エウテルペーは抒情詩の女神、メルポメネーは悲劇、ポリュムニアーは賛歌の女神、テルプシコラーは舞踏、タレイアは喜劇、ウーラニアーは天文学の女神である。


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翻訳者:原田星来
記事ID:61032