ヨルダン:スワイダー情勢を警戒 国境防衛と密輸対策を強化

2026年07月27日付 al-Mudun 紙

■密輸という国境を超える害悪:スワイダーはどのようにヨルダンの安全を脅かしているのか

【本紙】

シリアとヨルダンの国境は全長362キロメートルに及び、そのうち東側の約100キロメートルがシリア南部スワイダー県に接している。この区間は、カプタゴンをアラブ湾岸諸国へ密輸するための通り道となるには十分な距離であり、隣国ヨルダンの安全保障を脅かす治安上の脆弱性ともなってきた。こうした状況を受け、ヨルダンは防衛戦略の一環として、アサド政権末期にはスワイダー県内の麻薬商売組織の拠点や保管施設を標的とした予防的な先制攻撃を実施した。アサド政権はこの密売の最大の後ろ盾だったが、政権崩壊後も、スワイダー県が新しいシリア政府の支配下に入っていないことから、同様の対応を続けている。

〈治安上の懸念〉

ヨルダン上院議員で退役少将のアマール・クダ―氏は『ムドゥン』に対し、「ヨルダンはシリア南部、とりわけスワイダーの情勢を、兄弟国である隣国の安定を願う姿勢と、自国国境を守るための高度な警戒態勢という二つの観点から注視している」と述べた。

同氏はさらに、「スワイダーはヨルダン北部国境にとって、直接的な社会的・地理的な後背地を形成している。そこに不安定化や治安上の空白が生じれば、国境周辺の環境に直ちに影響が及ぶ」と述べた。その上で、「スワイダーの混乱に対するヨルダンの懸念は、単なる政治的な懸念ではなく、現地の状況に基づく正当な安全保障上の懸念である。犯罪組織や組織化された密輸ネットワークは、治安・政治的不安定を利用して、安全な避難場所や、ヨルダン王国に対する作戦の出発拠点を築こうとする傾向がある」と指摘した。

一方、シリア人研究者のムハンマド・ザクワーン・クーカ氏は『ムドゥン』に対し、「スワイダーを孤立した地域問題として扱うことはできない。なぜなら、シリア南部はヨルダン国境および占領下のゴラン高原と直接結びついた一体の安全保障・地理空間を形成しており、スワイダーの混乱が続けば、その影響は同県の行政区画を越えて広がるからだ」と述べた。

クーカ氏はさらに、「その最初の影響は、複数の勢力が並立し、統一的な権威が欠如するという治安状況が固定化されることだ。このような環境では、国家機関が治安や経済、行政サービスを管理する能力が低下する一方、武装集団や誘拐、恐喝、密輸ネットワークの活動範囲が拡大する」と指摘した。

同氏はさらに、「スワイダーの一部で統治・治安上の空白が続けば、その影響はダルアーや砂漠地帯、さらには国境地帯にも直接及ぶ可能性がある。密輸ネットワークは県の行政区域に従って活動しているわけではなく、砂漠地帯を起点に、スワイダー東部および南部郊外を経てヨルダン国境へ至る複数のルートを利用している。治安上の空白が長引けば長引くほど、こうしたネットワークは密輸ルートを変更し、小規模な武装集団を警護や輸送のために利用する能力を高めていく」と述べた。

同氏は、「シリア政府は、危険なのは混乱が続くことだけではなく、それが恒常化し、その中で並行する地方権力や、国外と結びつきを持つ武装勢力が生まれることだと考えている。しかし、この危険への対応は治安対策だけにとどまるべきではなく、地域社会との合意を図りながら、参加や説明責任、権利保護が保証される枠組みの下で、国家の統治機能を回復することが求められる」と指摘した。

〈ヨルダンの抑止力:正当な連携攻撃〉

ヨルダンの密輸対策は、2023年半ばから新たな段階に入った。同国は「先制防衛」戦略を採用し、密輸の摘発や密輸業者の阻止にとどまらず、密輸を組織・主導する大物密売人らの拠点を標的とした複数回の空爆を実施した。2023年5月8日には、ヨルダン軍がスワイダー最大級の密売人の一人、マルイ―・ラムサーンの自宅を空爆し、同人を殺害した。また同年にはサルハド地域でも別の作戦を実施し、密輸ネットワークの指導者の一人を無力化した。

アサド政権崩壊後もヨルダンの空爆は続いた。スワイダー県に接する東部国境地帯がシリア政府の支配を離れ、それに伴って密輸活動が拡大したため、ヨルダンは攻撃を強化した。また、「ヨルダンの抑止」作戦を開始し、密輸ネットワークがヨルダン国境に到達して国家安全保障を脅かす前に、その兵站基盤を解体することを目指した。

これに関連して、クダー氏は、「麻薬や武器の密売組織の拠点を標的とした攻撃は、精度の高い情報機関の情報に基づいて実施された精密作戦であり、脅威の根源を断つことを目的としている」と述べた。さらに、「ヨルダンの国家安全保障を守るための措置は、常に取り得る正当な選択肢であり、国境に直接的な脅威をもたらすいかなる拠点からも国境を守るために講じられる」と指摘した。

一方、クーカ氏は、「国境の管理と麻薬・武器の密輸ネットワーク対策を任務とするシリア・ヨルダン合同安全保障委員会の設立が発表され、両国の最高指導者がこの分野での共同の取り組みを強化する重要性を確認していることを踏まえれば、空爆は情報面・諜報面での高度な連携に基づいて実施されており、個々の空爆について連携の程度を明らかにする必要はない」と述べている。

〈開かれた対決〉

スワイダー県で混乱が続く中、国境を越えたカプタゴンや武器の密輸が拡大することに対するヨルダンの懸念について、ヨルダンのクダー少将は、「ヨルダンは密輸問題に対して、懸念を示すのではなく、即応態勢と抑止の姿勢で臨んでいる」と述べた。その上で、「密輸ネットワークは国内の緊張や気象条件を利用して活動範囲を拡大している。そのため、ヨルダンは厳格かつ直接的な交戦規定を改めて適用した」と指摘した。

また同氏は、「ヨルダン政府とシリア政府の間では、公式ルートを通じた安全保障・政治面での協力が存在し、現在も続いている。ヨルダンは常に、シリアの主権と安全を尊重する立場から、シリア国家およびその正当な機関との関係に基づいて対応している。しかしその一方で、シリア当局が南部の一部地域に完全な統治・影響力を及ぼすうえで直面している現地の課題や複雑さの大きさも認識している」と指摘した。

〈国境に民兵の居場所はない〉

スワイダーの精神的指導者ヒクマト・ヒジュリー師は、これまで幾度となく、シリアからの分離やヨルダンとの人道的な国境通過所の開設、あるいは他国への編入を求めてきたが、ヨルダンはこれを断固として拒否してきた。クダー氏は、こうした動きについて「ヨルダンの歴史的かつ公式な、そして一貫した立場は、シリアの領土的統一性、主権、独立を全面的に支持することである」と述べた。さらに、「ヨルダンは、シリアの統一を損なういかなる行為も、中東における国民国家という概念に対する脅威であり、混乱や内紛を招くシナリオを助長するものだと考えている」と指摘した。

一方、シリア人研究者のムハンマド・クーカ氏は、「ヨルダンがシリア南部におけるいかなる分離独立構想も支持する可能性は低い。なぜなら、そのようなシナリオはヨルダンの安全保障上の利益と直接的に相反するからだ。北部国境に弱体化した、あるいは不安定な政体が成立すれば、密輸のリスクが高まり、難民問題が複雑化するほか、国外勢力や統制の取れていない武装勢力が介入する余地を生むことになる」と述べた。

また同氏は、「空白が続けば、スワイダーは単なる通過地点から、麻薬の保管・流通地域へと変化する可能性がある。その結果、麻薬取引が地元の武装集団にとって主要な資金源となり、そうなれば、国家の統治回復を自らの影響力や収入源に対する直接的な脅威とみなす経済的利害関係が生まれることになる」と指摘した。

〈スワイダーは王国の安全弁〉

ヨルダンが自国の安全を確保し、国境を管理するために取り得る選択肢について、ヨルダンの退役少将は、ヨルダンの対応を3つの柱に分けて説明している。「第一は安全保障・軍事面での柱であり、近代的な技術や決定的な交戦規定、先制作戦を通じて、北部国境全域にわたる防衛・先制態勢を強化することである」。

さらに同氏は、「第二の柱は外交・地域面での柱であり、地域・国際的な諸勢力や国連との働きかけを継続し、シリア南部の安定を定着させるとともに、同地域が民兵組織や外部勢力の思惑の影響圏となることを防ぐことである」と述べた。

同氏はさらに、「第三は直接的な調整・連携の柱であり、シリア政府が治安を回復することを支援するため、安全保障面でのシリア政府との連携を深化させることだ。また、住民の苦しみを利用するいかなる外部からの押し付けも拒否する。なぜなら、ヨルダンが常に選択するのは、第一に自国の安全を守り、第二に近隣諸国の統一を支援することだからだ」と説明した。


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翻訳者:鈴木美織
記事ID:62564