英の日曜紙オブザーバーは、ノーベル文学賞を決定するスウェーデン王立科学アカデミーが今年度の受賞者発表を一週間延期したことについて、審査員がオルハン・パムックに賞を与えるかどうかで意見が二分されていることが原因であると報じた。
同紙によると、審査委員会内の意見分裂によって文学賞が医学、物理学、化学、平和賞と同じ週のうちに発表されないのは10年振りであるという。
それぞれ一千万スウェーデン・クローナ(約175万2千新トルコリラ)の価値を受ける賞の受賞者は先週発表され、文学賞の新たな受賞者の発表が木曜日の発表が見込まれたが、この問題で発表が今週木曜に延期された。
■政治化のおそれ
しかしオブーザーバー紙は、「厳重な秘密主義で進められる」同アカデミーのノーベル文学賞受賞者発表の延期の原因がオルハン・パムックについての議論であると認めることを控えていると報じた。
同紙は、オルハン・パムックが講演で、トルコ政府が20世紀にアルメニア人とクルド人の虐殺に対し責任があることを述べたことが原因で起訴されていることや、12月16日に公判が始まることを指摘した。同紙情報筋によると、アカデミーのメンバーは、オルハン・パムックに関する最近の議論によってノーベル文学賞が政治の影響を受けることを懸念しているということである。 Norstedts出版のSvante Weyler氏は「もし本当にパムックについての議論があるのなら、アカデミーの考えるリスクとは、政治的になることや議論になることへの懸念ではなく、文学が政治的影響下に置かれてはならないという考えからくるものである」と述べた。
ウォッチャーの間では、アカデミーの意見分裂の原因は「今話題の」作家には授賞を避ける原則によるものだとの意見もある。オブザーバー紙は、「パムックは広く好まれる作家であるが、まだ53歳という年齢から、若すぎると見られている」と表した。詩人であり文学評論家のエバ・ストロームも「ノーベル文学賞は、その時代の本に与えられてはならない。この賞は生涯におよぶ功績を称えるためにある」と述べた。
■ライバルは「アドニス」氏
スウェーデン王立科学アカデミーはもう一人の受賞者候補が「アドニス」として知られるシリア人の詩人アリ・アフメド・サイードであることを報じた。16人の審査員により、パムックとサイードの間で投票が行われ、多く票を集めた者が受賞にふさわしいとみなされることが明らかにされた。
■ギュル外相:パムックに対する訴訟は負ける
外務大臣アブデュッラー・ギュルは「三万人のクルド人と百万人のアルメニア人を我々は虐殺した。私のほかに誰もこのことについて言及する勇気はなかった」と述べた作家オルハン・パムックに対して起こされた「トルコ性への名誉毀損」訴訟について重要な会見を行った。フランスのテレビ局「カナル+」のインタビューでギュル外相は、オルハン・パムックに対する裁判は必ず敗訴するだろうと語った。「類似した罪に対する過去の訴訟でも、判決は起訴を取り下げ、皆に言論の自由があることを決めていた。パムックについての法廷も同じようになることを確信している」と述べた。パムックに対し3年の懲役を求刑した検察官は「私はトルコ人であり、この任務に誇りを感じている」と述べている。
URL: http://www.milliyet.com.tr/2005/10/10/dunya/adun.html
(翻訳者:堀ノ内 夏子)
編集 ニュース一覧ヘ