2006年09月28日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面
【AP】
テロへの地域的な不安が拡大する徴候をみせるなか、サウジアラビアはテロリストの国内への侵入を阻止するため、およそ900kmにわたるイラクとの国境沿いに防壁を建設する計画に着手した。
サウジアラビア政府に治安対策の提言を行なう特別機関である「サウジアラビア国家治安改善プロジェクト」のナウワーフ・ウバイド委員長は、完成までに5年から6年を要するとされるこの防壁は、豊富な石油資源を有する王国領を国外の脅威から保護するための基地や監視所、高度の警報設備などの建設を含む予算120億ドルの総計画の一部であることを明らかにした。
この意欲的な計画は地域におけるテロ行為への不安の増加に対してだけでなく、スンナ派とシーア派の間の暴力行為が全面的な内戦に発展することを阻止するためのアメリカ軍の努力が続くイラクの情勢への不安の拡大にも対応するものである。
サウジアラビアを含むイラク近隣諸国は、暴力が自国に波及して国家の安全が脅かされることを恐れている。サウジアラビアにとっては、現在イラクでアメリカ軍と戦っているサウジアラビア人の過激派がアメリカ合州国と同盟関係にあるサウジ政府に対してジハードを続けるべく王国に帰国することを望んでいる点、シーア派の過激派がサウジアラビア国内のシーア派マイノリティーに王家への暴動を起こすよう煽動を企てるかも知れないという点で二重の恐れがある。
サウジアラビア政府は2004年以来、イラクとの国境における治安対策の強化に18億ドル以上を費やしてきたことが知られている。
またアメリカとイラクの高官は、アメリカ軍が率いる同盟軍に対する戦闘に参加するためにサウジアラビア人過激派が、殆どの場合はシリア国境から、イラクへ侵入していることに何度も不満を述べている。
ウバイド委員長はサウジアラビアがイラク国境沿いでとってきた対策は、北の隣国への侵入行為を大いに阻止してきたが、王国が現在心配しているのはそれとは逆のイラクからサウジアラビア国内への侵入であると説明した。そして「最も重要なのはイラクとの国境に防壁を築くことである。特にアメリカによる攻撃以来、イラクの治安当局は実質的に機能していない」と述べ、テロの危険の他にもサウジアラビアは麻薬の密輸商人や武器商人や非合法移民がイラク領を利用してサウジアラビア国内に侵入するのを防ぎたいと考えていることに言及した。
(後略)
URL: http://www.tufs.ac.jp/common/prmeis/data/nahar/060928nahar_ay.mht
(翻訳者:吉永晶子)
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