2006年07月21日付アル=ナハール紙(レバノン)HP論説面
コンドリーザ・ライス国務長官がこの地域に何をもたらしうるのか、いつ来ることに決めたのか、いかにして対レバノン戦争の停止に寄与するのか、それは分からない。しかしここで留意しておくべき事柄が一つある。ワシントンも常に繰り返している事柄だ。それは、明確さが必要、ということだ。
ライス氏自身が「状況が熟する」までは来ないと言ったことを我々は知っている。それはつまり、イスラエルがヒズブッラーに対して軍事面で万策尽きたことを確認するまでは、仲介するなり何らかの解決策を提案するなりの外交努力を開始するつもりはない、ということだ。またライス氏は、「我々は皆、暴力の停止を望んでいる。我々は皆、民間人の保護を望んでいる。しかし何であれ我々の為すことが、永続する価値をともなうものであることを確認せねばならない」と言っている。
しかし我々は、ジョージ・ブッシュ大統領が現在起こっていることの全てを、微笑みながらある種の「名言」を披露するかのごとく、次のように概括したことを知っている。「国際社会にとって事が明確になるためには、時には悲劇的状況が必要なのだ。今や誰にとっても明らかになったのは、我々の民主的な友人であり同盟者である人々に破壊をもたらさんと欲するテロ分子が存在しており、世界はそれを阻止するべく努力せねばならない、ということだ」と。その「努力」をブッシュ氏は、イスラエル軍による攻撃の続行と、ヒズブッラーの武装解除と、レバノン政府の弱体化の回避をもって成し遂げたいと考えている。
しかし、危機への対処にあたって明確であるためには、それ以上のことが必要である。
たしかにヒズブッラーはイスラエル軍兵士2人を捕虜にし、そのことによってイスラエルにかねてから計画してきた戦争を開始する口実を与えた。だがここで明確であるためには、イスラエルの刑務所に収監されているレバノン人捕虜の問題が未解決だということを認識せねばならない。
たしかにシャバア農場地帯の帰属問題は、レバノン人の間でも議論の的であった。しかし国民対話会議においてこの件は決着がつき、今や誰もが、シャバア農場はイスラエルが現在に到るまで占領するレバノンの領土だと考えている。
したがって、ヒズブッラーの解体と武装解除を主張することや、軍事作戦によって同党を殲滅ないし弱体化させて武装解除するか、あるいはイスラエル国境からミサイルを遠ざけるための緩衝地帯をレバノン南部に設置したうえでレバノン政府にヒズブッラーの武装解除を委ねるかといった可能性に賭けることだけでは不十分なのである。これらは全て欠陥のある、あるいは誤った賭けなのだ。何故ならヒズブッラーがレバノン国内の政治勢力であって、レバノン国民の一部を代表しており、言葉や軍事作戦をもって排除することなどできないという事実を無視しているからである。
レバノンとイスラエルの間で未解決の問題に対処することを考慮に入れない解決策は、どこまで行っても地雷だらけの解決策だ。それらの問題への対処こそが、レバノン当局が全土を支配し武力を独占することを可能にする唯一の道なのである。
今回のような事態が繰り返される可能性を残す単なる一時的停戦ではなく恒久的な解決をワシントンが望んでいるというのが本当ならば、ここに述べたことの他に危機を解決しうる方策があるとは思われない。国連事務総長が提案したレバノン問題に関する国際会議において、可能な解決の道が見出されることを望みたい。
URL: http://www.tufs.ac.jp/common/prmeis/data/nahar/060721nahar_smori.mht
(翻訳者:森晋太郎)
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