■ 仲介者なくして外部干渉は不可能
2010年03月15日付アル・ハヤート紙(イギリス)HPコラム面
【ジハード・アル=ハージン】
イラク議会選挙が行われた日、唯一保証されている顛末は、敗者が勝者に投票結果改ざんの嫌疑をかけることだと書いた。そしてその通りになった。「アル=イラーキーヤ」リストのイヤード・アル=アッラーウィーとその同盟者たちは次のように主張している。自分たちを支持した投票用紙が無視されたか廃棄された。外へ放り出された投票箱が見つかった。25万の兵が投票を妨げた。そして、国民連合のほうもまた改ざんが行われたと苦情を言っている。
改ざん疑惑の予測は容易であった。それは第三世界全体の特徴なのだ。イラクやその他のアラブ諸国だけではない。選挙で選出された政府がつくられると予測することの方が非常に難しい。競合する派閥間で結果に大差はなく、新政府は現状同様連立体制となるだろう。バザール的メンタリティによる値引き交渉は良く知られているが、それと似たようなことである。
第一の結果としては、マーリキー首相の「法治国家リスト」が伸びている。イスラム最高評議会とサドル派、イブラーヒーム・アル=ジャアファリーの改革潮流を含む「イラク国民連合」がそれに続く。それから、イラク・クルディスタンを分割しているクルド諸政党、彼らは国会では単一ブロックとして投票する。
今のところ驚くべきことは起きていない。シーア派はイラクのマジョリティである。80%が開票された時点で、票はシーア派の二大リストの間で割れている。サドル派は、バグダードで彼らとしては最多の票を得た。特にその牙城とされる貧しいサドル・シティで。実態としてはバグダードが選挙における最重要県である。全ての宗派、民族が存在し、人口は600万を数える。最終結果としてはマーリキー派が首都では最多を得、「連合」はシーア派の南部県でより良い結果を得ることが予測される。
このままいけばいずれ面倒なことになるだろう。マーリキーは、何処と連立しようとも首相の座に固執する。理論的にはシーア派二大派閥とクルド諸政党との連立が可能である。しかし、首相には支持者と同じくらい敵がいる。多くのアラブ諸国は彼を望んでいない。サドル派も、マーリキーは彼らを失望させた、もしくは欺いた、裏切ったとさえみなしている。4年前、政権に着くのを助けてやったのに、その後はサドル派を見捨て戦争をしかけたとの認識である。最高評議会は、おそらく首相には新たな顔を望んでいる。ダアワ党ナンバー2、アリー・アル=アディーブの名が既にあがっている。しかし彼は弱く、その名が取りざたされるのは、むしろマーリキーを焦らせるためと思われる。
そしてマーリキーは、クルドに対し問題を抱えている。彼の中央集権的方針により多くの案件でクルドを失望させることとなった。石油産業、その収入配分、彼らが要請するキルクーク等。キルクークについてはトルクメンも彼らの都市だと主張しており、トルコがこれを支持している。
新首相としては、依然としてマーリキーが最強のプレイヤーで第一候補であるものの、彼の敵対者たちが手を組み、アッラーウィーと結ぶ、もしくは「アル=イラーキーヤ」の指導者が推薦する首相を受け入れる可能性は否定できない。
現時点で組閣については何も予測できない。イラク政治家たちの見解の相違が根深いものであるだけに、弱い政府となることが見込まれる。たとえ二つないし三つの派閥がそれらの相違を克服し組閣に持ち込んだとしても、それは政府を通じ利益を分け合うためであり、折に触れて不和は表面化するだろう。
ここで危険なのは、表面上隠れている相違、不和がテロとして発現することである。選挙キャンペーン中はそれは限られていた。しかしテロリストたちは機をうかがっている。米軍撤退のカウントダウンが始まると、彼らはそれを好機ととらえるかもしれない。政治家たちが国の利益を個人の利益に優先させることができないとあれば、外部の干渉は特定政党ならびに個人を通じて続くだろう。
外部の国々を疑い、イラクの民主主義への歩みを破壊することにより利益を得ると考えるのは簡単である。しかし、外部の介入は内部に支援者や仲介者が居ない限り不可能である。他者を疑うイラク人は、まず自分自身を見て、本当に自分の国のためになることを欲しているのかと問うべきだ。
個人的には、私はマーリキーもアッラーウィーも選ばないだろう。前者は法の権威をいきわたらせることに尽力したが、内外に敵が多く、政権に就いた者に人口の半数が敵対することになる。世俗主義同盟を率いるアッラーウィーは、アメリカが非難する宗派別分配システムからイラクを脱却させなければならない。しかし彼はシーア派がマジョリティの街でスンニー票を得た。そのうえで、多数派のための政治をすることを課せられる。
イラクの政治家たちが正しく導かれ、もう十分すぎるほど苦しんだイラクの人々に神が慈悲をたれたもうことを祈るのみである。
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:18697 )