社説:イラクの忘れられた革命
2011年03月03日付 al-Quds al-Arabi 紙
■社説:イラクの忘れられた革命
2011年03月03日付『クドゥス・アラビー』
イラク政府は本日早朝から次の通達までの間、サラーフッディーン県全域に、あらゆる乗り物の通行禁止令を発動した。これは公共サービスの改善と行政の腐敗撲滅および失業・住宅危機の解決を求める民衆デモの再発を防ごうという、あまり効果が期待できない試みである。
クルド治安部隊は民衆デモを解散させるためにあらゆる種類の武力を行使した。中でも最大級だったのは、汚職とコネの横行や、少数の人間がクルド民衆の命運を握っていることに抗議して、スレイマニヤで起きたデモだった。
イラクで起きたこれらのデモでは、非武装の参加者たちが治安部隊の発砲によって数多く死傷したにもかかわらず、アラブ諸国のメディアも海外メディアも関心を払わなかった。
腐敗した独裁体制を打倒する激しい革命が起きているいくつかのアラブ諸国よりも、イラクの生活状況ははるかに劣悪である上に、政権は宗派主義的で、基本的な公共サービスはほぼ皆無であり、治安も無いに等しい。
「新生イラク」は他のあらゆるアラブ諸国と異なっている。それはイラクが占領下に置かれ、5万人以上の米兵がイラク領内の要塞化した基地内に存在しているという、単純かつ基本的な理由による。だが、汚職と失業を筆頭に、多くの共通分母も存在するのである。
国の透明度を調査する団体のリストによれば、イラクはソマリアに次いで世界で2番目に汚職が蔓延している国であり、複数の独立した国際機関の推計では、政権に近い者たちによって横領された金額は、500億ドルを超える。BBCが放映した「パノラマ」という番組は、イラク政府の要職を占めた閣僚や高官らによって盗まれたイラク国民の資産は260億ドルだとの証拠を示した。イラク人が汚職や失業に抗議し、基本的な公共サービスの改善を要求するのは正当な行為だ。失業率は30パーセント以上、電気の供給は1日4時間以下にまで減っており、保健衛生は最悪で、教育についても同じ状況が指摘されている。
イラクは豊かな国だ。原油輸出により、年間800億ドル以上の歳入がある。それにもかかわらず国民の大半がいまだに貧困ライン以下の生活を送っている一方で、政治エリートや有力者たち、なかでも米国による占領と共にやってきた連中が、ポストと特権をめぐって争い合っている。イラクの議員の月給はスウェーデンよりも高い上に、手当として入ってくる収入もばかにならない。
民主主義や自由と人権の尊重をうたっている新生イラク政府がこれらのデモや抗議行動を禁じ、犠牲者を出してでも、あらゆる武力を使ってそれを弾圧するとは異常なことだ。アラブメディアと国際メディアはどちらも、これらの抗議行動と正当なイラク人の要求の側に立つべきだ。イラク人が求めているのは、職やパン、汚職撲滅だけでなく、米国による占領によって産み落とされ、直接・間接に少なくとも100万人のイラク人の殺害に関与し、国とその地理的・社会的統一性を引き裂いた政権の打倒なのだ。
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:山本薫 )
( 記事ID:21705 )