シリア中部ヒムスの市民、当局のデモ弾圧にジョークで対抗
2011年05月27日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ ヒムスで水着を着て「復古主義」デモを…
■ 戦車専門の「国際的な」洗車場兼注油場…
■ ダルアー市内の検問所でフェイスブック所持の取り調べ…
■ シリアの民衆、危機的状況の圧迫を和らげるためジョークを拠りどころに

2011年5月27日付『クドゥス・アラビー』

【ロンドン:フサームッディーン・ムハンマド(本紙)】

デモ隊に対する途方もない弾圧のためシリアが現在直面している「大災厄(ナクバ)」にも拘わらずシリアの人々、とくに陽気でジョークの種にされることで有名なヒムスの人々は、真っ暗闇の状況の中で暮らしながらも、自分たちの悲劇的な現状がもたらす矛盾に着想を得たジョークを編み出すことをやめようとしていない。シリアの抗議運動に参加する人々のフェイスブックやツイッターのページに散りばめられたジョークの語り手たちは、それらの多くは本当に起こったことだと断言する。

たとえば、治安部隊の隊員がある自動車を停めさせたところ、運転していた青年がモバイル・コンピューターとメモリー・カードを持っていたので「これは何だ?」と訊くと「ラップトップとフラッシュ・メモリーです」と答えた。隊員が「フェイスブックは持っているか?」と訊くと「いいえ」と答えたので通行を許可した、という話。

治安機関や国内メディアが吹聴するシナリオを取り上げたジョークもあり、メディアの果たす役割を暴き出している。また多くの出来事は、何の味つけを施さなくとも、さまざまな皮肉の的になっている。たとえばメディアはダルアーで発見された集団墓地の存在を否定したが、その後に事もあろうにシリア大統領が「醜悪なる犯罪」(これは同じメディア自身による表現)を非難し、数多くの身内を失ったハウラーン地方の由緒あるアバーズィード家の人々と会見を行ったのだった。

シリアのジョークには、国民や活動家が味わっている苦痛や大変な悲劇を冗談にして笑い飛ばす途方もない能力が表われている。たとえば、ある活動家が家を買いたいという友人に向かって「(ダルアーの)駅前に家を買うのはお勧めできないな。バイダー(治安機関の要員が人々を踏みつけにしている映像で有名になった村)の海沿いにするといい。あとは神様が何とかしてくれるさ」とアドバイスをした、という話。

ある活動家がデモの際に同志たちと一緒に罵詈雑言を浴びせられたことを思い起こせば、仲間がこう言う。「ちょっとお出かけ(逮捕勾留の意味)することにでもなってみな、そんな目に遭わないよう神に祈るけど、腎臓に一発お見舞いされたら電流200キロワット級だぞ」。

テレビ局のウソに関するこういう話もある。ある子供が父親に尋ねた。「パパ、ウソをついたら地獄に落ちるってホント?」すると父親は言った。「いや、ウソつきは先ず初めにドゥンヤー・チャンネル[※シリアの親政府系民営衛星テレビ局]に行くことになるんだよ」。

また、ウィリアム王子とケイト妃がシリアでハネムーンを過ごすことにした、何故なら報道機関やカメラマンが入国を禁じられているから、という話。

なかには、体制を擁護する宗教者を批判するジョークもある。そうした宗教者の筆頭がムハンマド・ラマダーン・アル=ブーティー博士だ。ブーティー氏がメッカに滞在中、サウジアラビア在住のシリア人イスラーム法学者たちに会見を求め、体制を支持して「改革のチャンス」を与えるよう説得を試み、デモを禁忌とする法裁定を下すよう呼びかけた。すると法学者の一人が「何故あなたはバッシャールとマーヒルのアサド兄弟を擁護するのか」と尋ねたので、ブーティー氏は「彼らが好きだからだ」と答えた。法学者はこう言った。「それでは神に祈るとしよう。審判の日には皆、自分の好きな人と一緒の所に行けますように」。

デモで掲げられたプラカードにもジョークが書かれている。なかでも傑作は子供たちが掲げたプラカードで、「SANA:テロ集団の撮影用にエキストラ求む」というもの。SANAというのはシリアの国営通信社のことだ。

もう一つ、ブラックな皮肉が込められたプラカードがある。「シリア軍への要望。イスラエル軍のようにゴム弾を使用していただきたい!」というものだ。

他にも、「インターネットが解放され、人々が逮捕された」というプラカードや、民衆蜂起の中で亡くなったキリスト教徒の名前を挙げて「殉教者ハーティム・ハンナーはキリスト教徒のイスラーム復古主義者だっていうのか?」というプラカードが掲げられた。

しかし最も独創的なのは、数多くの指導者や大統領を輩出しシリア人にこよなく愛されているヒムスの市民の陽気さが表れている類のジョークだ。そのようなジョークの一つは各都市に戦車が投入されたときに作られ、数十種類の一連のジョークを生み出すことになった。それは「ヒムス戦車専門国際洗車場兼注油場:シリア国内全般、特にヒムス市内で戦車が増加する中、私どもは神の御助力を賜り、世界で初めて民営の戦車メンテナンス・センターを設立することにいたしました。当センターでは洗車から注油、オイル交換まであらゆるメンテナンスを行います。皆様にサービスを御提供できることを誠に嬉しく存じます!」というものだ。この後、フェイスブック上には戦車にまつわる数十種類のジョークが掲載された。たとえばあるヒムス市民がこう訴えた。「戦車を道の真ん中に停めた奴、早く来て除けてくれ。通れないじゃないか」。また市民の一人が戦車を盗みたいと言い出して、「公用車両免許証を持っているのか?」と尋ねられ「戦車の運転に免許は要らないんだよ」と答えた、という話もある。

また、シリア大統領夫人アスマー・アル=アフラスの一族がヒムスの出身であることから、ヒムス市民の抗議デモでは参加者たちがおかしなシュプレヒコールを叫んだ。「A、B、C、D、アスマーさん、旦那を早く片付けろ!」

また、当局の報道機関が「治安部隊と軍が各都市に突入しているのは、復古主義者の僭称するイスラーム首長国を殲滅するためだ」と主張していることに対してヒムス市民は、自分たちが復古主義者でないことを証明するため、水着を着てデモに参加するというアイデアを提案している!

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( 翻訳者:森晋太郎 )
( 記事ID:22765 )