イスラエルが初めて「アブー・ジハード」氏の暗殺への関与を認める
2012年11月02日付 al-Hayat 紙
■イスラエルが初めて「アブー・ジハード」氏の暗殺関与を認める。動機不明の措置、イスラエルを法的に追及するための道を開く可能性
2012年11月2日『アル=ハヤート』
【ナザレ:アスアド・タルハミー、 ラーマッラー:本紙】
たくさんの疑問符が付く措置の中で、イスラエル軍検閲局は(イスラエルの)「イディオット=アハロノット」新聞社に対し次の報道を公開することを許可した。その内容というのは「イスラエル軍が1987年4月15日に、当時のPLOナンバーツーであったカリール・アッ=ワズィール(通称アブー・ジハード)をチュニスの自宅にて暗殺したことに関与していた」と確認する内容であった。殉教者(すなわちアブー・ジハード)の妻であるインティサール・アル=ワズィール(通称ウンム・ジハード)が、(襲撃の際に)覆面をつけた兵士がヘブライ語を話していたと複数回にわたり証言していたにも関わらず、イスラエル政府は長年に渡って、(アブー・ジハード)の暗殺への関与を明らかにすることを拒否してきた。なお、彼女は襲撃の一部始終を目撃している。
パレスチナ自治政府は初回の対応として、以下のようにみなした。イスラエル政府が「アブー・ジハード」の暗殺を初めて公式的に認めたということは、過去の(PLO)首脳陣の暗殺にも関与していたという動かぬ証拠になるだろう。その中には故ヤースィル・アラファート議長も含まれている。また同様に、パレスチナ自治政府はイスラエルが暗殺を認めたことは、国際的な場でイスラエルを告発する際の重要な証拠になると表現した。また、ファタハの中央委員会のアッバース・ザキー委員は本紙に対し、「指導部はこの『暗殺という犯罪』に対して、次回の委員会会合内で法的・政治的諸措置を求め議論する予定だ」と述べた。また「パレスチナ自治政府が国連総会のオブザーバー国家としての地位を得た後、国際刑事裁判所の加入権を得るために尽力したい。これはイスラエルが我が人民に対し行ってきた全ての犯罪について告発を行うためだ」と明らかにした。
イスラエルの新聞社(冒頭で既出のイディオット=アハラノット社)で諜報機関を担当の記者、ローニン・バーグマン氏は、軍の精鋭部隊「シールート・マトカール」の一員で退役将校のナーフーム・リーフ氏に彼が2000年に交通事故で亡くなる前に行ったインタビューを公開した。なおこの精鋭部隊というのはアブー・ジハード氏の暗殺を行った部隊である。バーグマン氏は「リーフ氏は「アブー・ジハード」に2番目に発砲した人物である。その銃撃は他の兵士が(アブー・ジハードが)すでに死亡していることを確認するために発砲をし、それに加わる前に行われた」と明らかにしたと伝えた。加えて、バーグマン氏は、検閲本部がこのインタビューの公開を許すまで、長期間に渡って法廷闘争を続けていた、と述べた。
この報道は、イスラエルの事情通の間で非難を巻き起こし、彼らはこの報道がなされた動機を明らかにしようと試みた。多くの事情通はベンヤミン・ネタニヤフ首相による政治的決定があることに否定的であると考えている。というのは、同首相はイスラエルが暗殺を認めるということはつまり、イスラエルが法的追及にあうかもしれないと理解していていたため、(ネタニヤフ首相がそのような政治的決定の背後にいることに)否定的である。事情通の中の一人は「この報道はもしもまだリーフ氏が存命であれば、陽の目をみることはなかっただろう」と表明した。また加えて、「当時の首相と国防相、イツハク・シャミル氏とイツハク・ラビン氏も同様に存命ではなく、二人を責任に問うことも不可能である」と付け加えた。別の事情通は、この報道の背後関係をバーグマン氏と群検閲当局との間の法廷闘争の枠内に限定すると共に、暗殺作戦に関わっていた他の幹部にとって、リーフ氏の発言を虚偽だとすることや、バーグマン記者が記事をでっちあげたと非難することは簡単である、と述べた。
リーフ氏は(アブー・ジハードの)暗殺実行時、「シールート・マトカール」の副隊長であり、現在閣僚であるモシェ・ヤアロン氏が彼を暗殺計画のリーダーに選んだ。また、暗殺の状況について、(バーグマン)記者はリーフ氏の発言を以下のように引用した。「第一団部隊がチュニジアの海岸に到着したとき、コマンド部隊が戦闘員を輸送し、海岸に連れてきた。この暗殺部隊はカイサリー部隊に合流した。このカイサリー部隊はモサドに直属しており、彼らはチュニジアの首都に2日前に到着していた」。実行部隊は26人から構成され、リーフ氏は家に侵入するという重要な任務を持った8人からなる最初の一団を率いた。暗殺部隊を乗せた車はアブー・ジハードの自宅から500メートル付近に乗りつけたしたのち、そこからは徒歩で家へ向かった。リーフ氏と別の戦闘員は8人に先行して歩いた。この時夜歩きを装うためにリーフ氏は女装していた。リーフ氏は大きなお菓子の箱をつかみ、もう一方の手はサイレンサー付きの銃を持ちつつその箱の中に入れていた。リーフ氏は車内で眠たそうにしている一人目のガードマンに近づき、頭に向けて発砲してガードマンを殺害した。
また、情報通はリーフ氏の話について、以下のように述べた。「戦闘員達は最初のガードマンを倒したとの合図を受けると、第二の集団が前進した。彼らは邸内に突入するための装備を持っていた。そのとき部隊は覆面をつけて家に突入した。ある一団は地上階(1階)に向かい、その地上階には2人目のガードマンがいたが、彼は彼の銃を取り出すとすぐに殺害された。一方で庭師も銃撃によって死亡した。なお彼はこの日地上階で睡眠をとっていた。庭師を殺すことに躊躇があったが、この作戦において邪魔が入ってはならないので殺した」。
リーフは、以下の通り付け加えた。「自分は戦闘員の一人を階段を上る役に選び、その後を進んだ。この戦闘員が、最初にアブー・ジハードを撃った者である。自分はアブー・ジハードが手に拳銃を持っていたと思った。その後、自分はアブー・ジハードを何発も撃った。自分は、アブー・ジハードの妻を傷つけないよう警戒した。アブー・ジハードの妻は現場に到着していた。アブー・ジハードは既に死んでいた。他の戦闘員については、同人の殺害を確認するため、同人を撃った」。
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( 翻訳者:小島明 )
( 記事ID:28113 )