急騰する地価に対し管理統制はあり得るか(9-34-1-1、9-34-8[15]-1)
2013年09月03日付 The Voice 紙
ダラ地区へ橋を架けることはないと言いつつ、ウー・ソーテイン大統領府相がまたもや、地価を下げるよう施策すると述べた。
アジア太平洋、東南アジア、中東諸国の経済の焦点であり、陸路海路の通商の出入り口ともいえる地政学上の位置を占めるミャンマーの地価は時とともに急騰している。これは、域内諸国と比べても、地価の相場を過度に超え出たものであると、国内外の経済学者たちが警告を発している。
ミャンマーの経済的好機到来とともに、世界中の大企業・多国籍企業のみならず中小企業までもが一つまた一つとミャンマーへ入ってきて、投資の機会を得るために関係当局や事業者たちと協議している。
外国投資法制定後、外国からの投資が大規模になされると期待されたが、ミャンマーのインフラの不備不足のために期待ほどにはなされなかった。
加えて、高騰する不動産価格のために困難が生じるであろう今後の4-5年間で、価格が下がってゆく気配はなく、むしろさらに上がってゆきそうな状況にすらあると、社会経済発展に関する大統領諮問委員会のアウントゥンテッ教授(博士)は述べる。
<管理統制への一歩か>
政府の地価統制策の一環として、14の地域・州で場所に応じて単位面積当たりの地価を査定して税を徴収することで地価高騰と税収低減を防止すると財務副大臣のマウンマウンテイン博士が発言した。
場所に応じて単位面積当たりの地価を査定するとは、基準値として定めるということであり、実際の売買価格を査定価格とつき合わせて税を徴収することになると国税局の幹部は述べる。
現在のところ、不動産の売買を行う場合、収入の獲得手段を明示できない人は印紙税7%を含む37%を納付しなければならないことになっている。
そのように税率が高いので、納税する者よりも脱税する者の方が多くなってきており、かつての税率が低かった頃より脱税者がいっそう増えていると不動産市場に詳しい事業者が語った。
場所に応じた地価査定と徴税が、実際のところ、効果的かどうか調査する必要があり、従来どおりに考えるだけでは不十分であると経済学者のアウンコーコー博士は述べる。
「このように地価を査定するだけでは、地価が下がることはない。なぜなら、紙の上のことと、実際に起きていることとが違っている場合がたくさんあるからだ」と同氏は言う。
<需要に供給が追いつかない>
供給と需要で形成される市場価格を統制すれば、要らぬ問題が生じて、ただでさえ不安定な不動産市場が崩壊しかねないと見る人たちもいる。
需要が過度に高まっているために不動産価格が高騰しているのだが、マネーロンダリングや土地の投機によって、本来あるべき価格よりもさらに高くなっているということもあるとアウンコーコー博士は述べる。
市場が正常に機能するように政府が介入し統制せねばならないというのは正しいが、市場の要請を満たして初めて市場が正常に機能しうるのだと不動産市場に詳しい事業主は指摘した。
「政府の計画や税率によって売買の多寡が生じるのは正常な市場ではない」と同氏は述べる。
供給の規模が需要を大きく下回っており、国外から到来する諸企業のための事務所や住宅が早急に必要になっている。
<ミャンマーの土地事情>
価格が本来あるべき価格よりも高くなるのは、その商品の有用性、希少性、収益性に基づいており、ミャンマーの地価はその3点全てに当てはまっているだけでなく、戦略上重要な地理的な位置にあるため、域内諸国よりも地価が高くなっているのだと経済学者のアウンコーコー博士は述べる。
「地理的にミャンマーが要の位置にあるため、タイやカンボジアの地価よりも高くなっているのだろう」と同氏は語る。
アセアンの地域内でミャンマーは一続きの陸地としては最大の国家であり、世界でも領土の広い国々の中に含まれる。
土地所有においても、私有より国有が多く、様々な理由でいまだ利用されていない空き地や荒蕪地が豊富に残っている。
既存の市街地を拡大するため、ヤンゴン都市圏開発プログラムを定めて取り組んでおり、道路交通、電気や水などの基本的なインフラをまずもって建設することが必要とされている。
<地価高騰の影響と結果>
地価高騰の理由を挙げるならば、所得分配の不均等、経済機会の不均等、情報へのアクセスの不均等、投資の推移の不均衡、投資市場の未発達などのためである、とアウンコーコー博士は見解を述べる。
それに加えて、国家財政と計画との乖離によって効果が得られないことや、国外の企業や団体が純粋に経済的とは言えない意図を持ち合わせていることも、ミャンマーの地価が高騰する原因になっていると同氏は言う。
以前は、自動車市場、ドル市場、金市場などで投資が行われていたが、自動車に関わる新政策や管理為替制度のために、商売人や収入獲得手段を明示できない人たちが不動産市場に参入してきたので、不動産価格が跳ね上がっているのである。
電気、給水、道路交通、技術の不足によって、不動産市場に制限がかかっており、不動産市場に対する国内銀行の資金供給も少ないために、そうした不足を補うことができて初めて市場が正常に機能して価格が下がってゆくだろうと不動産市場に詳しい事業者が語った。
地価の高騰は生産費用を高めるので、国際市場においてミャンマー製品が価格で競争することが難しくなる、結果的に、生産費用を削減するための別の道である賃金の低下や雇用の削減が失業問題を引き起こすだろう、とアウンコーコー博士は述べる。
ミャンマーの産業の70%を占めるのは農業分野であるが、地価が上がったために作付けを行わずに所有する田畑を売却してしまうので、農産品が減少しているのみならず、農民から身を落として失業者になる人も増えてきている。
基本的インフラの不備不足のために外国投資が思ったほどには入ってこないときに、域内諸国よりもミャンマーの地価が高いことは、ますます国内外の投資に歯止めをかけている。
<答えを出すのが難しい課題か>
地価を査定して地価が下落するように取り組んでいくと政府が発言していても、いまだ公式発表はないので、地価を査定するか、税率を定めるかということについては、今後の取り組みを見守ってゆかねばならない。
政府の取り組みは、商売人たち、魚の群れるところに釣り糸を垂れるような移り気な計画立案者や投機家たち、適正値よりも価格を吊り上げている人たちに性急な行動を控えさせるかどうか、語るには時期尚早である。
近頃、ヤンゴン地域の地価査定が済んだと財務副大臣が述べていたが、現在までのところ、どの場所にどれくらいの地価が査定されたのか不明であるとヤンゴン地域税務局の高官が述べた。
透明性をもって適正な税率を速やかに定めて徴税すれば、国家財政が潤い、市場のために必要な基本的インフラを充填することができ、価格は下落するだろう、と不動産市場に詳しい事業者は見解を述べた。
同氏は、「地価を査定するのは良い。肝要なのは、税率を適正にすることだ。誰もが納税したくなるほど魅力的で現実的な税率になるように、税率を下げる必要がある」と言う。
雇用促進と一人当たりの収入増加に加えて、銀行が低金利の長期融資で家屋や土地の所有権を補強し、適正価格の住宅地の建設について官民が協力して短期・長期の計画とともに明示することができて初めて、急速に拡大する市場の要請を満たすことができ、ミャンマーの不動産市場もまた正常に機能するようになるのである。
国民の納税意欲と納税可能な税率なくしては、脱税が引き続き行われ、国家財政が損失を被るので、市場の要請を満たせず、不動産価格の高騰は悪循環に陥るだろう。
統制するとほのめかしながらさらに上昇を続ける地価を、またもや統制すると経典の復唱のように繰り返している。できるかどうかは時が教えてくれるだろう。
(スィッニェインドゥー)
( 翻訳者:長田紀之 )
( 記事ID:279 )