教育の刷新:教師の保守性への挑戦
2013年10月30日付 VietnamPlus 紙

 教育のカリキュラムおよび教科書の刷新・現代化に関する国際シンポジウムが10月30日、教育出版社の主催によりハノイで開催され、教育のカリキュラムや教科書の刷新における障害、特に教師の保守性という難問をいかに解決していくか、という点について、活発な議論が展開された。シンポジウムには国内外から多くの教育分野の専門家が参加した。

  本質的な惰性

 最初に報告を行ったマイク・ホースレイ博士(国際教科書・教育メディア研究協会[IARTEM]会長、オーストラリア・セントラル・クイーンズランド大学・教育学習研究センター長)は、カリキュラムや教科書の刷新を実行する際、考慮すべき重要な点の一つが教師の保守性だと指摘した。
 高校での教育に10年、師範大学の教員として10年、教科書の執筆にかかわって40年、さらに、教科書研究所を開設したり、教育教材出版社の運営に携わった経験などから、マイク 博士は、「教育というものは本質的に保守性をはらんでいる」と結論付けた。
 マイク博士は、実際のところ、教育方法はかなり刷新が難しいと指摘し、教師の専門的な教育方法の一面には、教師をカリキュラムや教科書、教材の刷新に対しより保守的にし、反対させる傾向もあると述べた。
 同博士の意見は直ちにベトナムの教育関係者に受け入れられ、また、その議論に多くの時間が割かれた。
 グエン・フイ・ドアン氏(ベトナム教育出版社、教科書『高等代数』[10~12年生版]の元編者)は、「教師がその教育方法に関し依然保守的であるという意見はまさにその通りである。私は、ベトナムにおいては、教師の保守性というのは非常に深刻であると思っている。教育内容や教育方法は新しくても、多くの教師はいまだに古いカリキュラムを続けている」と述べた
 ディン・クアン・バオ教授(2015年度以降の新カリキュラムおよび新教科書策定委員会常務委員)の懸念も同様である。バオ教授は、「何十年にも亘って教師たちに染みついた思考や教育方法の変革は難しく、ある程度のプロセスを経る必要がある。しかし、困難だとしても、実現に向けて努力をしていかなくてはならない。なぜなら、教師の変革なくして、望むような教育改革の効果は期待できないからだ」とし、さらに、「“保守性”は教師に限ったことでなく、教科書の編纂に携わる関係者などにも同様のことが言えるのであって、事実、これは大きな課題でもある」と述べた。


  考え方を変える必要性

 教師の保守性や伝統的な慣習は、教育のカリキュラムや教科書の刷新における大きな障害の一つである。では、そうした状況を克服するためにはどうしたらいいのか。出席者からの質問の多くはまさにこの点についてであった。
 そうした質問に対し、マイク博士は、本来的に存在する保守性を克服するためは、教師のための参考資料をより具体的、より多様化しなければならず、さらに重要なのは、新たな教科書の執筆者らとより多くの意見交換を行うことだとしている。
 マイク博士は、「教師は、教科書の新たな点や構成を把握しておかなければならず、そうでなければ、刷新などできるはずもない」と強調した。
 しかし、同博士は、「私の経験から、それは、ある程度のプロセスが必要であり、しかも、いつも成功するわけでない」とも語った。
 この問題について、グエン・フイ・ドアン氏は、教育のカリキュラムと教科書の刷新は、教師そのものの刷新と試験のあり方の刷新とが同時並行で行われなければならないとし、「試験については、現段階では、もっぱら知識の暗記に重きが置かれている。そのため、教師は、これまでの教育方法の刷新を行いにくい。よって、教育のカリキュラム、方法、そして評価の方法を同時並行で行わなければならない」と指摘した。
 同時並行による刷新という考えに賛同しながらも、しかし、マイク教授はこの問題について別の見方をしている。「私は、生徒たちも教師が変わらねばならないと感じているのではないかとみている。教師たちは生徒たちに試験に合格したり、自発的に思考してほしいと願っている。しかし、将来的に、生徒たちはより独立し、教師や教科書に依存しないようにならなければならない。生徒たちの希望とは何なのか、自らの未来のために学ぶことなのか、あるいは、目前の試験に合格するために勉強することなのか。今一度、再検討する必要がある」
 このマイク博士の意見に対し、賛否両論の様々な声が寄せられた。生徒も教師も教育に対する考え方を刷新していく必要があるとの意見に多くの出席者が賛同する一方で、試験に合格しなければ、将来の夢を叶える際の大きな障害になりかねないとの指摘もあった。
 「故に、考え方を変えて行くことは、教育を管理する関係機関から教員まで、すべての部署、そして、すべてのレベルで、同時並行で行われなければならない。そうしてこそ、カリキュラムや教科書の刷新から、教育の全面的根本的刷新までが成功裏に行われるだろう」出席者の一人はこう締めくくった。

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( 翻訳者:加藤俊哉、小泉里夏 )
( 記事ID:399 )