TPPへの参加はベトナムに経済的・政治的利益をもたらす
2013年12月08日付 VietnamPlus 紙

 ベトナムが世界貿易機関(WTO)に加入したことは、国際経済への参入過程において、ひとつの重要な前進であったと言える。しかしながら、その過程で、綿密な準備をしなかったために、多くの企業が、ホームグラウンドであるベトナム国内で、外国企業に“敗北”してしまった。
 よって、自由貿易協定(その中には環太平洋パートナーシップ協定(TPP)も含まれる)の締結交渉に今後も参加し続け、さらなる国際経済への参入を推進しても、はたして得られるものがあるのかどうか、との懸念もある。これに対し、ブー・フイー・ホアン商工相が答えた。

 貿易の輸出入バランスはより均衡化する

 ベトナムのWTO加盟による成果に関し、ブー・フイー・ホアン商工相は、「ベトナムは2007年1月にWTOのメンバーになり、その後これまでの6年間で、評価すべき成果も、反省すべき限界もあった」と述べた。
 経済面での最も顕著な成果は輸出である。2007年以降これまでに、ベトナムの輸出は480億ドルから、2013年には1300億ドル(推定)にまで成長した。年平均20%の成長率である。
 輸出額の拡大とともに、ベトナムは輸入超過率もかなり早いペースで縮小している。2007年には対輸出額比30%だったのが、2013年にはわずか0.48%の見込みである。
 このように、輸出入のバランスはかなり均衡化した。そうした輸出入面での成果とともに、WTOとの公約を実現していく中で、外国直接投資(FDI)の誘致もまた、大きな成果を収めた。これはまさに、ビジネスの拡大、輸出入の増加、そして投資誘致が相互に補完し合った成果と言える。
 さらに、ホアン商工相によると、ベトナムは制度面において、WTOとの公約実現を通して、経済、ビジネス、その他の関連する活動のための法的枠組みを段階的に改善してきた。
 一方、反省すべき限界について、ホアン商工相は、WTOとの公約実現の過程で、ベトナムが事前に懸念していたいくつかの問題が明らかになってきたという。それは、少なからぬ企業、あるいは、少なからぬ分野の競争力がかなり劣っているという点、国際経済参入への適応がまだ低いレベルにとどまっているという点である。したがって、もし、国のレベル、企業側のレベル、製品自体のレベルにおいて、改善策が間に合わなければ、WTOに加盟した事によるネガティブなインパクトがベトナム経済全体に深刻に波及することになるであろう。
 TPP締結交渉への参加に関し、ホアン商工相は、WTO加盟後も国際経済への参入を進めるというベトナムの党・国家の主張を一貫して実現するものだと説明した。12カ国が参加するTPPは世界のGDPの40%、貿易の30%を占めるものだが、ベトナムはTPP以外にも、様々な自由貿易協定(FTA)を漸次交渉中だという。
 「TPPは、WTOとの公約よりも、質も内容も、より高いレベルのものが求められる協定の一つと言える。しかし、ベトナムが交渉に参加し、締結できたら、まずは、経済面で、特に輸出の拡大、外資誘致の増加が推進されるであろう」(ホアン商工相)
 さらに、TPPは、ベトナムにとって、特にアジア・太平洋地域を中心とした、世界や地域の再編、地域経済の連携の流れがもたらす様々な機会をとらえる絶好の場となるものと言える。そうした機会をうまくとらえられれば、ベトナム経済の構造改革や成長モデルの刷新は速やかに推進されることになるであろう。
 また、政治面に関し、ホアン商工相は、TPPへの参加は、世界と地域の国際政治においてベトナムの地位を高めることになると述べた。
 これらが、ベトナムのTPP参加の成果であり、参加による今後のポジティブな面である。しかし、その一方で、様々な影響を及ぼすであろうTPP参加の限界も否定できない。我々は、そうした限界を事前に把握し、手遅れにならないよう対処していかなければならず、特に企業の競争力の問題への対応は重要である。

 
 農業分野には周到な準備が必要

 ベトナムがTPPに参加した際、どの分野が最も損害を受けやすいのか。この点について、ホアン商工相は、「これまでにベトナムが交渉、締結してきた協定と同じように、ポジティブな面もあれば、ベトナム経済に影響を与えるネガティブな面も必ずある。これまでの例から言えば、最も損害を受けやすい分野は農業だ。現在、ベトナムの基幹産業はなお農業であり、その農産品の多くは小規模な生産にとどまり、生産効率も低く、先進技術の導入もまだ限定的であるため、生産コストがかさみ、東南アジアの主要経済国と比べても高くなっている。よって、市場の開放、輸入の拡大は、そうした農産品に少なからず影響を及ぼしかねない」と述べた。
さらに、「そうした影響を考慮し、ベトナムは、アメリカや他のTPP参加国との協議や交渉において、TPPは利益の面で平等であり、発展の度合いの差を考慮し、全ての参加国が利益を受けられるような協定でなければならないと要求してきた。即ち、ベトナムのような発展途上国に対しては、その国に合った公約実現のスケジュールが必要だと要求している。つまり、最終的にベトナムはTPPを締結する。しかし、関税の緩和や撤廃などは、協定の発効後直ちに実行するということではなく、ある程度の時間が必要だということだ」と述べた。
 一方、そうした制度的な時間の問題に加え、企業-特に農業や農産物加工輸出業の企業は、弱点を克服し、製品の競争力を高めていくための時間が必要である。
 ホアン商工相は、「そのため、政府の交渉団、商工省をはじめとするTPPの関係省庁は、企業への説明を頻繁に行っている。既に大手企業や、縫製協会や水産物協会などの業界団体への説明を行った」と述べた。
 そして、「企業への明解な説明や広報をより丁寧に行うことで、企業はTPPを理解し、そのメリット、デメリットを把握できる。それにより、ベトナムは必ずや、TPP参加に伴う課題を事前に把握でき、解決策を打ち出すことできるであろう」と確認した。

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( 翻訳者:石井恵梨、小池優佳、広瀬美佳 )
( 記事ID:522 )