映画「アクト・オブ・キリング」はインドネシアのイメージを損なう可能性あり
2014年01月04日付 Kompas 紙

1月24日(金)、インドネシア政府は、アカデミー長編ドキュメンタリー賞候補となった「アクト・オブ・キリング」(The Act of Killing)に関する認識を公表した。

1960年代にインドネシアで起きた大虐殺を暴くこの映画は、国際社会にインドネシアの悪いイメージを与える結果になるのではと政府は見ている。

「インドネシアは残酷な無法国家のように描かれている。この映画は1960年代のインドネシアをきわめて遅れた国のように描いている。これは事実と相反している」とインドネシア大統領広報官のトゥク・ファイザシャ氏は語った。

「インドネシアはすでに民主改革を経ていることを忘れてはならない。多くのことが変化した。1本の映画だけで人々の見方が影響されるようなことがあってはならない」とファイザシャ広報官は付言した。

世界の多くの国々が、歴史上、暗い時代を経験しているのだから、安易に一国を裁くようなことはしてはならない、とファイサジャ広報官は述べた。

「アメリカでは奴隷制度の歴史、オーストラリアではアボリジニへの差別があったし、アメリカがベトナム空爆を行ったことも忘れてはならない。これらの出来事にはどれも人道に対する暴力的要素があった」とファイザシャ広報官は語った。

「インドネシアにおける出来事には、冷戦と共産主義に対する戦いという文脈があったことを忘れてはならない」とファイザシャ広報官は主張した。

インドネシアの国家人権委員会(KOMNASHAM)の報告は、この1960年代の大量殺戮について、人権に対する深刻な侵害であり、人道に対する犯罪であると述べている。

しかしながら、この1965年のクーデター未遂事件後に起こった、共産主義支持者を主たる標的として広範囲になされた残虐行為について、責任を取るよう求められた組織は一つとしてない。

ジョシュア・オッペンハイマー監督の映画作品「アクト・オブ・キリング」は、この出来事に関わった何人かの人たちに対して、残虐な犯罪行為を再現してもらうよう説得することに成功した。

「アクト・オブ・キリング」がアカデミー賞候補に選ばれたことで「熱く」なったのはインドネシアだけではない。中国でも怒りの声があがった。なぜなら、この映画の中で描かれたように、1960年代の虐殺の犠牲になったのは中国系インドネシア人だったからだ。

【訳注】「1960年のクーデター未遂事件」とは9.30事件のこと。インドネシア政府は「クーデター未遂事件」とするが、真相は十分に解明されていない。事件のあと数年にわたって共産主義支持者とみなされた人々の大量虐殺がインドネシア各地で行われた。その中には多くの中国系インドネシア人が含まれていた。「アクト・オブ・キリング」は2013年第86回アカデミー長編ドキュメンタリー賞候補となったが、惜しくも受賞は逃した。

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( 翻訳者:青山 亨 )
( 記事ID:619 )