インフレおばけ(10-14-7-1)
2014年04月21日付 The Voice 紙

会計年度の始まる4月は、国民にとってよい知らせと悪い知らせの両方がある。よい知らせは、公務員の給料が上がること。悪い知らせは、電気料金の値上げである。
 税法を改正し、所得税、関税などの税金も正確に徴収していくようである。これらによって政府の財政は潤うこととなろう。
 月給があがることにより物価も高騰するだろうとみな心配しているが、電気料金の値上げによっても工場の製造費用が高騰して物価が上がるであろうと、中小企業主が話している。
 月給増額に公務員は満足しているが、電気料金の値上げにヤンゴン、マンダレーを含む多くの町や地方でデモが発生している。
 
<インフレーション>
 改革については様々な見解があるけれども、大多数が懸念しているのがインフレーションとともに物価が高騰することである。生活必需品が値上がりし、購買力が弱くなる状況をインフレーションと言う。
 「人々は心配しすぎている。商品の値上がりは、需要と供給に関係している。例えば、米は日本や中国に需要が出てくると価格も上昇してくる。それを物価上昇ということはできない。ほかの商品が本当に値上がりしているか否かを見なくてはならない」と経済大学で修士号を取得したウー・ナインウーが話した。
 インフレーションになるとどうなるのかという疑問が浮かんでくる。インフレーションになると、購買力が落ちる(例えば、以前1千チャットで米1緬升を買えたのが、インフレになると1万チャットで米4袋しか買えないという状況になることを意味する)。購買力がさらに弱くなると商品を増産できずに生産を縮小しなければならないというような状況になりやすい。こうなると労働者の月給、収入などにも影響が及ぶ。
 現在のミャンマーのインフレ率は、国家計画・経済発展省の中央統計局が生活必需品150種類以上をもとにして算出したものである。
 同省副大臣・ドー・スースーフラインの発言によると、ミャンマー国のインフレ率は2012-13会計年度では2.9%であり、2013-14会計年度では6.5%まで上昇してきているという。

<電気料金の配分>
 電気料金の徴収においては、以前から費用の半分を国の財源から補填していたが、電力を使用できるのは都市に住む階級の人々のみで、ミャンマーの人口の70%は電力を使用できない状況にある。
 「費用を政府が補填していながら、国の70%の人々が電力を使用することができない。果たしてこれは公平なのだろうか」とミャンマー発展資源研究所のティンマウンタン博士が話した。
 このような赤字経営は政府の都市偏重政策であり、中産階級の人々にとってしか利益がないため、皆にとって公平にするには、料金を正確に徴収し、現在電力を使用できていない国民のために使用するべきであると同氏が話した。
 しかし、電気料金の値上げに対し、中小企業主らは不平を述べており、多くの町や地方でデモも起こっている。
 
<行き着く先>
 国民が物価上昇を懸念している一方、経済学者もインフレ率が極端に上昇し国家経済全体に悪影響が出ることを懸念している向きがある。
 しかし、現在進行中の改革によってインフレ率が上昇すると言い切れる訳ではない。
 アジア開発銀行(ADB)の4月の発表によると、2014年のミャンマーのインフレ率は6.6%であり、2015年には6.9%まで上昇する可能性があると推定されている。
 2014年初には、国際通貨基金(IMF)がミャンマーのインフレ率は上昇する可能性があるため、抑制する必要がある旨を発表している。政府予算の支出状況をよくし、また、インフレ率を常に観察し抑制するよう、ミャンマー中央銀行および財務省などに助言し議論した旨も、IMFのミャンマー関連責任者が話した。
 ミャンマーの現在の状態を踏まえれば、電気料金の値上げにより一部の事業主らに影響が出る可能性もある。生産費用が高騰すれば、彼らは値上げして売らざるをえず、物価も高騰し、消費者が負担しなくてはならなくなるかもしれない。それは、種々の物価を上昇(インフレーション)させる可能性のある原因の一つである。
 また、中央銀行が公式に発表した2014年10月29日付け統計によると、ミャンマーの外貨保有量は81億3000万ドル強であり、金保有量は7.1533トンである。
 4月現在の外貨準備高および金保有量が増えているか減っているかという点、国家財政が赤字を出しているという点、また、対外債務が95億ドル強、国内未返済債務が10兆チャット強で、国内外債務の対GDP比は37%と推計されており、極めて物価が上昇しやすい状況にあることなどについて、経済学者のアウンコーコー博士が見解を述べた。
 
<どのように対処するか>
 公務員の月給を増額したことによって貨幣需要が高まっていく可能性があり、その場合に、政府としては紙幣の増刷をしないことが必要であると関係諸機関が勧告している。そうでないと、インフレーションの進行は免れない。政府が歳入増加を必要とすれば、税金の徴収が最良の方法である。
 「インフレは直接的な問題ではない。各国にインフレは存在する。インフレーションも、物価も、給料も、生産も関係している。一つが上昇するともう一つがつられて上昇する。インフレーションが進行すれば物価が上昇する。物価高騰を抑える為には給料や生産、輸出などを増やす必要があるだろう」と公務員でもあるウー・ナインウーが話した。
 国内のインフレーションが必要以上に進行していくか否かはまだ確実ではないが、国家として解決に向けて取り組んでゆくために前もって準備しておくべきである。
 「諸外国においては、国家経済が非常に緩慢な状態であっても、活発になるよう紙幣を増刷したり、労働者の給料をあげたり、計画を実施したり、そのようなことを行って故意にインフレーションを進行させることがある。国内でも、インフレ政策を実行するよう一部の人が助言しているが、うまくいくかどうか論争もある。IMFが発表した7%というのは高過ぎはしない」とティンマウンタン博士が話した。
 しかし、しかるべきインフレ率を算出し、長期的に管理することのできる能力も中央銀行には必要である。インフレーションを抑制するためには、統計データと実行能力の二つが求められる。
 「この国では、インフレーションを抑制するためには、必要なことを先に補わなければならないだろう。この国には足りないものが多くある。それはデータや、学者らだ」とウー・ナインウーが話した。
 ミャンマー国内では、正確な定量的データやその処理システムが未だ十分でないため、インフレーションを抑制するのに困難がある。
 「インフレーションを抑制するためには、収入、支出を見なくてはならない。何が多いのかということだ。貿易収支も見なくてはならない。次に、外国投資も見なくてはならない。最も重要なのは、学者が必要だということだ」とティンマウンタン博士も述べた。
 インフレーションを算定する際にとても重要な財政統計、外貨準備高や金保有量などのデータに学者らが簡単にアクセスできるようにしていくべきである。専門性と経験を備えた多くの学者たちが議論できるようにし、彼らの知見を政策に活かせるようにすることも必要である。
 間違った政策による不安定な物価とインフレ、ミャンマーは今、長年苦しめられてきたこのお化けを克服する好機を迎えているのだろうか。
 大統領の経済顧問団においてさえも、真の経済学者は少なく、他分野の学者が多いとティンマウンタン博士は言う。
 「国家のマクロ経済を測定できる学者が必要だ。研究者は非常に少ない。正しい政策決定をするために、データとキャパシティーを充実させる必要がある。思ったままに政策を決定せずに、(きちんと考えて)行わなくてはならない」と同氏が話した。
 会計年度の始まる4月には、国民にとってよい知らせと悪い知らせが対になっている。これから、インフレお化けに憑かれないようにしたい。
(グリーン / イエーズンアウン / カインチェーリートゥン)

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( 翻訳者:酒徳 結 )
( 記事ID:648 )