翻訳文学の花が咲く?(10-14-28-1、29-1)
2014年04月21日付 The Voice 紙
翻訳文学協会が戻ってくる。翻訳文学の花が咲く?
ミャンマーの人口6千万人に対して、新聞や情報誌を読む人が少ないと非難する人がいるように、文学作品を書く人も読む人も減ってきたと指摘する人がいる。これらの文学に対する心配よりもさらに心配すべきものが、翻訳文学が消滅寸前であるという問題だ。このように衰退している翻訳業を再び繁栄させるため翻訳文学協会を再び設立するということを情報省副大臣ウー•イェトゥッが言った。
翻訳文学協会を再び設立したら、ミャンマーの読者のために利益がある世界の文学を翻訳するだけでなく、ビルマ語、少数民族言語で書かれた民族発展や文化についての本を英語に翻訳すると同氏は言う。
サーペーベイマン(訳者注:文学の殿堂、ミャンマー情報省傘下の部局の一つ。国民に対する知識普及と外国文学翻訳による海外の情報普及などを目的としており、国民文学賞選出やコンテストなども行っている)の事業計画に関連のある2011 / 12年から2015 / 16年までの5ヵ年計画で上記の通り書いてあるということが情報省の発表でわかった。それゆえに、世界の文学をビルマ語に翻訳することと、ビルマ語や少数民族言語で書かれた本を英語に翻訳することにはどれほどの苦難があるのだろうか。どれほどの準備をするべきだろうか、質問したいことが見えてくる。
1.翻訳マシン
翻訳業が即座に直面するであろう問題は世界の文学をビルマ語に翻訳する能力に長けた人物が少ないという問題であると、自身で翻訳本を出版するピードゥキッ編集長ウー•ペーミンが指摘した。
日本とタイにおいては、外国の出版社文学館が出版する英語で書かれた本と同時に母国語に翻訳された本を出版することができるということと、翻訳の約80%をソフトウェアで翻訳するということ、副大臣ウー•イェトゥッとその息子であるタントーカウン博士が日本に行った際に見てきたこと、などを大学中央図書館の元館長ウー•トーカウンが述べた。
「原稿の段階から、外国の出版社と繋がっている。日本語で出版するために、著作権を買ってある。出版前に翻訳する。それほど時間を空けずに日本語版を出版できる。タイでもこのような感じだ」とウー•トーカウンが言った。
ミャンマーでも日本やタイのやり方と同様にソフトウェアなどで翻訳できるように、ウー•キンニュンが首相だった時に一部のエンジニアに資金援助して技術開発させていたとわかったこと、彼らの証言によると50%くらいまで機械で翻訳できると言っていたこと、を同氏が明らかにした。
「主に難しい点は、英語からビルマ語に翻訳するのがより難しいそうだ。ビルマ語から英語に翻訳するのはそれほど難しくない。なぜかというとビルマ語は語彙が豊富だからだという。先生たちの言葉遣いは場面によって変えねばならない。例えば、僧侶などに関しては別の言葉遣いをしなければならない。畏怖の感情を表したい時、言葉遣いは違う。このように選択することがコンピュータにできない」と、ウー•トーカウンが技術的な弱点を述べた。
しかし英語では、一つの英語の単語に該当するビルマ語を選び、言語に長けた編集者が相応しい言葉に修正できること、日本のように機械で70、80%くらいまで翻訳できたら非常に速く翻訳できるということなど、ウー•トーカウンは技術的な弱点を編集者が修正可能な方法を指摘した。
様々な分野の書籍を翻訳してきたミャタンティン先生も、各専門分野に関する本は機械で翻訳できる可能性があるが、小説、詩のような文学は機械で翻訳することが難しい、と歴史学者のタントゥン博士らと共に文学談義の中で言ったことがあると明らかになった。
これまでに考えてきたことは、英語の本をビルマ語に、ビルマ語の本を英語に翻訳することだけだった。英語、ビルマ語で書かれた本を各少数民族言語に翻訳することと、各少数民族言語で書かれた本を英語に翻訳することはより難しいのではないかと疑問があった。
2.少数民族地域での翻訳文学
ビルマ語翻訳と同じく、少数民族言語の翻訳業でも熟練した翻訳者が少ないことが問題となっているところであり、翻訳講習会をして少数民族言語の翻訳に長けた人材を生み出していかねばならないということを、ピードゥキッ編集長ウー•ペーミンが提案した。
さらに直面する可能性のある問題は、様々な少数民族が住むミャンマーでは、少数民族それぞれの言語が異なるという問題である。例えば、チン州のように州における共通言語がなく、場所によって言語が異なるということを、チン民族文学•文化委員会委員長のサラインサミュエルが指摘した。
「チン州北部ではティディム・チン語、ハカ・チン語が話されている。南部ではマトゥピ語、ミンダッ語を使用している」とサラインサミュエルは少数民族言語翻訳業が成功をおさめるために解決しなければならない困難について証拠をあげて示した。
様々な少数民族言語での翻訳を現実的に考えるなら、出版における困難にも直面する可能性がある。ビルマ語を公用語とし、ビルマ語を大多数が話すミャンマーにおいて、英語からビルマ語に翻訳された本を購読する人が減っているなか、少数民族言語に翻訳された本を読む人はとても狭い範囲に限られるだろう。それゆえに様々な少数民族言語で本や論文を出版することは、個人出版事業主にとって魅力がほとんどないということがわかるだろう。
ピードゥキッ編集長ウー•ペーミンは、様々な少数民族言語で翻訳された本や論文を出版することに対し個人出版事業主がその役割を果たせないならば、中央政府あるいは管区域・州政府が翻訳業に対して資金を提供して事業を行うべきだと提案した。
こうした困難はあるが、様々な少数民族言語で翻訳できるなら、ビルマ語•英語で出版された法律や各種の本を、少数民族として言語の制限なく学ぶことができる、とウー•イェトゥッが説明した。
シャン文学•文化委員会委員長サインサンアイ博士は、様々な少数民族言語で書かれた本を英語に翻訳して出版できたら、世界の学者らが少数民族の文学や文化を簡単に学ぶことができるだろうと、少数民族地域の翻訳業の重要さについて支持した。
これら翻訳業の困難を克服するよう準備ができているなら、実現させる際に誰が責任を担い、どのように運営していくのかという疑問が浮上してくる。
3.翻訳に関する法律
サーペーベイマンの事業に関連のある5カ年計画には、サーペーベイマンを改組し、規模を拡大して組織することと、翻訳文学出版のための最初の事業として助言組織を設置するということが書いてある。情報省副大臣ウー•イェトゥッも翻訳業をする前に、翻訳業のための法案をウー•トーカウンを含む国内外の学者と協力して作成しているところだと言った。
翻訳業とミャンマー文学の発展のため、法学者、文学者らと協議をし、翻訳事業のためのサーペーベイマン法案を作成し終えた、と同法案作成委員会トップのウー•トーカウンが述べた。
「法案作成を終え、それを議会に提出しなければならない。議会にも提出し、この法律によって事業が行われるので、よりしっかりと施されるだろう」と同氏は言う。
法案に基づき、翻訳文学協会を組織するなら、1962年以前、独立した後間もなく組織した翻訳文学協会と同様、国費を使って政府が設立してくれるということを同氏が説明した。
「外部の学者を中心に組織する。しかし、政府省庁(情報省)傘下の直属の組織ではない。省庁からの代理人なども加入することができる」と、省庁の影響をうけずに別個に独立した行政組織の形態で組織するとウー•トーカウンが言った。
ミャンマーで翻訳文学の分野はサーペーベイマン管轄下の5年の間に消滅寸前であったと、情報省の5カ年計画を振り返る中で認めた。再び活性化する翻訳文学協会としては翻訳業をどれほどの規模まで行えるか見極めねばならない。翻訳業でさえも、人間社会全体の現行の古い見識を最新の発達した考え方に代えることができるということが、ミャンマーの翻訳文学の歴史を振り返るとわかる。
( 翻訳者:田崎巧 )
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