ベトナムとアメリカは戦争の痛みを乗り越え、発展関係を築く
2016年04月29日付 VietnamPlus 紙
アメリカ・テキサス州の州都オースティン市にあるテキサス大学リンドン・B・ジョンソン大統領図書館の招待を受けて、ファム・クアン・ヴィン駐米ベトナム大使は、4月26日から28日に開催された「ベトナム・サミット」という名称のベトナム戦争に関するシンポジウムに出席した。
このシンポジウムは、戦争での大きな出来事を回顧し、現在と未来にとっての教訓を引き出すために開催され、退役軍人、研究者、歴史家や多くの反戦団体・反戦運動の代表などを含む約5000人が出席した。ジョン・ケリー米国務長官や多数のアメリカの政治家・元政治家もシンポジウムに出席した。
4月28日(ハノイ時間の4月29日朝)のシンポジウムで、ファム・クアン・ヴィン大使は、「21世紀におけるベトナムとアメリカ:新たな始まり」というテーマで講演した。同大使は、両国が良好な関係を構築する機会をかつて何度か逸してしまったことを振り返った。230年前近く、アメリカ独立宣言の起草者の一人であったトーマス・ジェファーソン大統領[訳注:1743-1826年]は、ベトナムの稲の種を招来しヴァージニア州で栽培しようと努力したことがあった。ホー・チ・ミン主席は1945-1946年の段階でハリー・トルーマン大統領に両国の「全面的協力」を提案する書簡を何通か送っていた。しかしその代わりに、両国は多くの凄惨な後遺症を残した傷ましい戦争を経ることになってしまった。
ベトナム側の被害は、死者300万人、負傷障害者400万人、枯葉剤被爆者480万人、行方不明者数十万人である。この戦争は、ビル・クリントン元米大統領が「傷ましく、とりつかれている」と描写し、ジョン・ケリー国務長官が「外交力と政治的眼識に関する最大の失敗」と見なす戦争であった。
しかしながら、2015年7月の歴史的な訪米でグエン・フー・チョン書記長が「ベトナムとアメリカが戦争の痛みを乗り越え、現在のような強力に、積極的に発展する関係を築くことができたとは、おそらく殆ど誰も思い描くことができなかったであろう」と言った言葉のように、歴史は新しいページをめくった。
政治的には、両国は互いの「政治体制と独立主権」を尊重し、パートナーシップを引き続き促進し、より深化させるための基盤を醸成するという原則に関し、首脳レベルで確認している。
経済・貿易的には、20年余りで、二国間の貿易取引は1994年の5億ドルから2015年の450億ドルへと90倍に増加している。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を各国が批准し終えれば、この展望はさらに明るいものとなる。
安全保障協力では多くの進展があり、両国は「2015年共通認識宣言」に署名し、航海の安全、捜索救難、自然災害への対処、平和維持などの各分野における2011年の「了解覚書(MOU)」を進めてきた。
特に、まだ残っている地雷の除去、枯葉剤の除染や枯葉剤被害者の医療的手当てのような戦争の後遺症を解決する協力は、両国関係の優先事項となっている。
文化・教育交流、訪問、経験の交換は日増しに活発になっている。
ファム・クアン・ヴィン大使は、「2015年共通認識宣言」がそれぞれの国及び両国関係に対する在米ベトナム人コミュニティの多面的な貢献と成功を公認するものであると言及した。在米のベトナム人留学生が1万9000人おり、ベトナムはアセアン諸国の中で最も多くの留学生をアメリカに送り出している国となった。
2015年、50万人以上のアメリカ人旅行客がベトナムを訪問した。両国は、地域での平和・安定の維持を含む東アジア協力やアセアンの枠組みの中で、世界健康安全保障アジェンダGHSA(医療)やメコン河下流域開発LMI(環境、水源、気候変動)のような多くの実際的なアイデアをもって、地域規模での意見交換を拡大している。
講演の中でヴィン大使は、アメリカ側が早急にベトナムを「市場経済国」と認定し、ベトナムに対する武器輸出禁止令を完全に棚上げするように求めた。これらがなされれば、バラク・オバマ米大統領の来たる訪越にとって有利な環境がつくられるだろう、と同大使は断言した。
この機会に、ヴィン大使はジョンソン大統領図書館の館長マーク・アップデグローブ氏と意見交換し、図書館を見学し、ベトナム関連の所蔵本状況を確認し、テキサス大学指導部と会った。オースティン市貿易室も訪れた。また、ジョンソン元大統領の2人の娘さん、ルーシー・ベインズ・ジョンソンさんとリンダ・ジョンソン・ロブさんに会い、両国関係を正常化し発展させたアメリカ側の多くの人物、ボブ・ケリー元上院議員、チャック・ロブ上院議員、退役軍人のトム・ヴァレリー氏などと会い、意見を交換した。さらに、ニック・ウット氏(ピューリッツァー賞を受賞した写真「ナパーム弾から逃げる少女」の撮影者)やデイビッド・ケンナリー氏(ピューリッツァー賞受賞者)などの戦争に関するニュースを配信した有名な記者、トム・ジョンソン元CNN社長やベン・バーンズ元テキサス州副知事のようなジョンソン大統領時代にアメリカの安全保障顧問だった人たちと会った。
ヴィン大使はまた、多くの企業、在米ベトナム人代表、アメリカのパートナーと面会した。ここで同大使は、ベトナムが引き続き改革・刷新し、広くは両国間の、狭くはベトナムとテキサス州との間の通商協力のためにさらに条件づくりをするという一貫した方針を明らかにした。
1年当たり40%以上も伸びている貿易関係や教育・科学技術・エネルギーの強みを持ち、テキサス州はベトナムとの協力で大きな潜在力を有し、両者の関係はさらに明るいものになるだろう、と同大使は信じている。
この記事の原文はこちら
( 翻訳者:今井昭夫 )
( 記事ID:2481 )