ベトナム:まだ豊かになっていないのに高齢化と多大の債務を抱える状態に陥る危険性
2017年10月18日付 VietnamPlus 紙
通常、国がまだ「若い」時は、債務は少なく、その後、次第に増えていくものであるが、ベトナムの場合は逆の傾向にある。つまり、「我々はまだ若いのに道楽をし、多額の債務を抱えている」。
10月18日にハノイで開催された「ベトナムの公的債務の管理-現状と政策への提言」と題する会議で、財政学院のヴー・シー・クオン博士は、「それはベトナムの公的債務に関する数多くのリスクの一つにすぎない」と指摘した。
公的債務は経済成長の3倍の速さで増加している
より詳細に分析すると、クオン博士は、各管理機関の過去の統計に言及し、2016年のベトナムの公的債務はGDPの約64.7%に達し、これは国会が設定したGDPの65%という上限に近づきつつあると指摘した。
クオン博士は、「ベトナムの公的債務の対GDP比率は、他の発展途上国や東南アジア各国の平均と比べてかなり高い」とし、各国の公的債務の対GDP比率の一例として、インドネシア24.4%、タイ45.9%、フィリピン50.2%、ラオス46.3%などを挙げた。
さらに、クオン博士を不安にさせているのは、ベトナムの公的債務が急速に増加していることであり、過去5年の平均増加率は18.4%で、これは経済成長の3倍の速度にあたるという。
クオン博士の計算によると、2015年末時点の政府の対外債務残高は2001年と比べて6.5倍に増加した。そのほとんどは、世界銀行、アジア開発銀行および日本の3主要支援機関・国に集中している。また、2001年と2015年の各支援機関・国ごとの負債残高比較からも、債務が急速に増加していることがわかる。
例えば、2001年にベトナムが世界銀行から借り入れた額は約23兆9000億ドンだったが、2015年には274兆ドン以上になり、約11.5倍に増加した。同様に、アジア開発銀行についても、ベトナム政府の債務は2001年から2015年の間に20倍以上にも膨れ上がった(7兆5000億ドンから151兆ドンに増加)。
以上から、クオン博士は、ベトナムの公的債務の圧力に関するリスクを指摘している。博士によれば、ベトナムのような現在、発展途上にある国の多くは通常、借り入れはまだそれほど多くはない。それは、「当初は、そうした借り入れは控え、十分に発展し、需要が増えた段階で初めて借り入れる」からである。一方、ベトナムは、まだ低位中所得国であり、人口は急速に高齢化し、平均労働効率もまだ低いままであるという現在の条件下において、公的債務はすでに高い水準にあるという。
一方、人口の高齢化はさらに進み、各種基金への負担はさらに重くのしかかり、新たな収入を創出する可能性が減っていく中で、ベトナムの債務は必ずやさらに増えていくという。
「他の国々は通常、若い頃には借り入れは少なく、その後、徐々に借り入れを増やしていく。一方、我々はまだ豊かになっていないのに、早くも高齢化が進み、既に多額の負債を抱えている」とクオン博士は指摘する。
借金をしても……金庫に放置
クオン博士は、公的債務に関する多くのリスクについて指摘するものの、ベトナムの公的債務の安全性に関する質問に対し、明確な考え方を示していない。
クオン博士によると、現在、公的債務のリスクを評価する指標はなく、あるいは、ベトナムに関して、対GDP比65%が上限という指摘がいかなる根拠に基づくものなのか明確ではないという。
しかし、クオン博士は、ベトナムの公的債務はGDP比ではまだ高くはないが、歳入比では既に十分に高いと付け加えた。博士は、世界銀行のランキングを引用し、2015年のベトナムの公的債務の価値は国家予算歳入の206%にまで上っていると指摘した。世界銀行の勧告に従うと、ベトナムはこれまでの「良好な政策」をとる国のグループから、「平均的な政策」をとる国のグループに属するようになる。
クオン博士が警告する別の問題は、国家予算の赤字の問題で、開発投資支出よりも大きいということである。これは、博士によれば、「我々は支出のための借金を恒常的に行っている」ということを意味する。これは、博士が極めて危機的であると強調する問題であり、その比率はまだ高くはないかもしれないが、国家予算の収支バランス規則に反するものだと繰り返し強調した。
さらに、クオン博士は、関係機関が借り入れをしたとしても、その配分がタイムリーに行われないという別の問題にも言及した。博士によれば、これは、金を借りて金庫に放置しておくのと何ら変わらないことだという。
「この問題は、管理の問題として、より明らかにする必要がある。もしそれを怠れば、公的債務は何もせずに増えていくことになる。我々が借金をし、それを使うことができなければ、新たな財産の創造が1日遅れることになり、その分、公的債務が増えるだけである」とクオン博士は強調した。
一方、国際協力団体オックスファムのシニア・マネージャーであるグエン・トゥー・フオン女史は、公的債務の管理業務には透明性と説明責任の強化が必要であると提案した。
女史によると、国際通貨基金は、各債権者、債券、金銭債務、返済期限ごとの報告、情報に関する制度について非常に具体的なガイドラインを持っているという。よって、ベトナムにおいても、関係機関は、報告や情報公開の制度において、そうした具体的な規定を導入する必要があるという。
また、情報公開について、経済専門家のグエン・チョン・ギア氏は、公的債務に対する監査実施の頻度に関する規定を設ける必要があると提案した。さらに、規定は、監査機関による報告や監査後の事後処理について具体的に言及する必要があるという。これは、「監査をしたら、しっ放し、というわけにはいかない」という理由から、ギア氏が極めて重要と指摘した問題である。
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( 翻訳者:岩切南 )
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