ビナサンがグラブを起訴した公判での激しい論争
2018年11月22日付 VietnamPlus 紙
公判でのビナサン社代表者
公判でのビナサン社代表者

 11月22日に、ホーチミン市人民裁判所は原告がベトナムアンズオン株式会社(ビナサン[Vinasun])で、被告がグラブ[Grab]有限責任会社の「契約外の活動を行ったことによる損害賠償を求める紛争」をめぐる訴訟の初審の公判審理を再開した。証拠の補充・収集や研究のために何回も中断していた。

   損害の鑑定書の説明

 クーロン審査・鑑定株式会社(略称クーロン社)の鑑定の結論によると、2016年1月1日から2017年6月まででビナサンの損害は総額1586億ドン以上[およそ7億6000万円相当]になるという。
 各損害は次のようなものである。「車は駐車場に置かれ、稼働していなかったためコスト(減価償却費、駐車代、支払利息、配賦・管理費)が発生し、[その金額は]およそ90億ドン[およそ4300万円相当]となり、この会社の時価総額は1496億ドンあまり下がった。その中でグラブがビナサンに与えた損害は、算出された損害総額の54.2%以上にあたり、これは860億ドン近くに相当する」。
 公判での審理で、裁判長は上記のような、クーロン社による損害鑑定の結論について説明する文書を発表した。クーロン社は、証券市場からビナサンの株式データを自ら入手したのではなく、証券会社3社の報告書を根拠にしていることを認めた。
 具体的には、2015年12月31日、ビナサンの株価は30/400ドンだった。2017年6月30日までに、ビナサンの市場での株価は2万1、900ドン[およそ106円相当]にまで下落し、2015年に比べて28%減少した。
 クーロン社は、2016年10月3日発行のバーン・ヴィエット証券会社の分析報告書が以下のように示したものを根拠にしているという。「2016年上半期のビナサンの売上は、2015年の同時期より増加したが、グラブやウーバーに転職しないようにドライバーを引き留めるために、[乗車料収入のうちのドライバーの]取り分を増やしたり、優遇したりしたためである」。
 バーン・ヴィエット社は、ビナサンの株への長期投資には慎重になるよう、顧客に勧告もしていた。ライバルであるグラブやウーバーとの安値競争戦略からの潜在的なリスクがあるためである。
 ゾン・ヴィエット社の2016年11月8日付の分析報告によると、ビナサンの利益は業界で最低レベルだった。2年~3年の間にウーバーとグラブが上陸したためである。2017年8月28日付のMB証券会社の分析報告も、グラブやウーバーなどとの激しい競争により経営成績が急速に悪化していると評価しており、推奨株の価格は1株あたり14,600ドンだった。
 クーロン社の鑑定結果を説明する文書も、「ホーチミン市において、2016年1月〜2017年6月の段階でタクシー業界の成長は速く、この成長率に正比例してビナサンの経営業績も上がるはずである。しかしながら、グラブの売上高とタクシー利用量が増える傍ら、ビナサンの売上高と利益は減少していた。このビナサンの[業績]急落は、グラブの市場侵入が要因であるとみられている。ビナサンに対するグラブの悪い影響が、結果的にビナサンの株価を急落させた」と指摘している。

   激しい論争

 裁判長がクーロン社の説明文書を発表した後、ビナサンの代理人は賛同の意を示し、「まさに不健全な競争、グラブの違法行為がビナサンの売上高と利益に損害を与えた。そのため、ビナサン社は提訴し、損害賠償を求めたのだ」と再度確認した。
 クーロン社の鑑定結果によると、ビナサンの損害は860億ドンであるが、ビナサンは、会計監査結果を根拠にしてグラブに賠償金412億ドンあまりを支払うよう求めて提訴した。
 ビナサンによると、2015年と比べると、2016年と2017年の第1四半期、第2四半期のビナサンの利益は、412億ドンあまり失われたという。
 ビナサンによると、「グラブは、運輸経営会社のためにソフトを提供する会社として試験的に登録したが、実際は、ドライバーの採用を含めたビナサンと同様の運輸経営を直接行うために試験的事業を利用した。車の運営やお客を迎える運転手の指定も直接行い、乗車料金やその値上げ・値下げ調整も決定し、ドライバーの乗車料金の取り分やその比率の増減も決定した」という。
 ビナサンは、「グラブはクレジットカードを通してお客から直接料金を集金した。セールを実施した。ドライバーのグラブ事業参加登録書類を直接受け取った。迎車しないドライバーまで含めたドライバーに対する賞与・処罰に関する規定を発行した。車の価値の90%までのドライバーの借金や、旅客とドライバーの、事故に関する任意の保険加入を補助するために銀行と連結した。このほかグラブは、法律に違反するか、もしくは逸脱したセールや値下げをも行った」との見方を示した。
 反対に、グラブは引き続き、クーロン社の鑑定結果の説明内容に同意せず、この提訴の解決の中止を審理するよう裁判合議体[裁判官による合議体]に提案した。
 グラブの代理人によると、クーロン社は証券会社3社の報告を根拠にしているが、この報告書の情報やデータは正確ではないという。パートナーや証券[関連の]顧客のために書かれた報告書だという。
 次の公判は11月23日に開かれる。

https://www.vietnamplus.vn/vien-kiem-sat-nhan-dan-ung-ho-don-khoi-kien-grab-cua-vinasun/531398.vnp
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( 翻訳者:福原百那、山田奈保 )
( 記事ID:4648 )