駐日ベトナム大使、ベトナムの労働者に対する日本の新在留資格政策について語る
2019年01月14日付 VietnamPlus 紙
インタビューに答えるヴー・ホン・ナム駐日ベトナム大使
労働力不足が経済成長の障害となっている実状に日本が直面しているなかで、同国国会は、2019年4月1日から発効する法律を採択した。同法律は、日本で働く外国人労働者を受け入れるために、より門戸を拡大する目的をもって、移住労働者向けの新たな2つの在留資格を導入するものである。
この問題に関し、ヴー・ホン・ナム駐日ベトナム大使は、日本への多数の人材供給国の一つと見られているベトナムに対する影響について、ベトナム通信社記者のインタビューに応じた。
─ベトナムの労働者に対する日本の新在留資格政策のメリットについて、あなたの評価をお聞かせください。
ヴー・ホン・ナム大使:わが国は若年の豊富な人材をもつ国です。現在、私たちには約40の国・地域で正式な契約に基づいて就労している約58万人の国民がいます。
それ以外にも、労働契約に基づかないで就労している10万人以上の少なからぬ人々がいます(受入れ国は、これらの人々が観光ビザで入国し、許可なく滞在・就労し、正式な労働契約もしていないので、不法な労働者と見なしています)。
現在、技能実習生として日本に来て、工場・会社・農場で働いている約15万人のベトナム人がいます。この人達の平均所得は1か月約2400万ドンです。そのほかに日本語を学んでいる生徒が約8万人います。この人達は週に28時間までアルバイト(アルバイト料は1時間当たりで約15万ドン)をすることが認められています。
新在留資格政策は、より高額の賃金、より良好で安定的な労働条件を約束しています。今後5年間で日本は14の業種で最大34万5500人を受け入れると見られています。
これは、ベトナム人労働者が高度な技術や合理的な賃金水準などを追求し、近代的工業文明に接近できる非常によい機会になると思います。(技能や日本語レベルを)頑張って磨いた人は、より高度で高額賃金の労働レベルに入る試験を受け、生活や家族団らんがより保障される機会がえられ、ひいては日本で生涯働き、家族と一緒に暮らす機会がえられるようになります。
より高度の労働レベルに上がる試験の能力がない人でも、この在留資格政策のメリットがあります。最長で5年間働くことができ、帰国時には技能や日本語のレベルが上がっているでしょうし、普通の仕事より高額の賃金でベトナムの日系企業に採用されるでしょう。
そして最後に、20万人以上の技能実習生と留学生にとってですが、これは、実習をしている皆さんが技能実習生プログラム修了後の試験を準備するために、日本滞在中に技能と日本語のレベルを向上させる機会となります。
言葉を学んでいる皆さんにとっては、もし特定技能1号[訳注:一定の技能]の優先14業種か或いは特定技能2号[訳注:熟練技能]の5業種のうちの1つに技能レベルがあれば、日本が試験を実施する計画を立てている業種に直ちに受験することができます。
─2種類の技能在留資格の新しい点は何でしょうか?
ヴー・ホン・ナム大使:皆さんもよくご存知の通り、従来、日本に働きに来ていたベトナム人は技能実習生か或いは言葉を学ぶ学生(就労は制限される)でした。新しい在留資格制度は次のように認めています。
─日本語と専門の十分なレベルがある皆さんは試験を受けることができ、もし基準に達していれば、より高次の在留資格に移行することができます。3年間の技能実習を修了したら、日本語検定N4をもっている皆さんは試験(日本の法務省が作成)が免除されます。
─特定技能1号の皆さんは特定技能2号に上がる試験を受けることができ、労働契約を終える必要はありません。そしてより高くは、もし規定に基づく条件に対応できるならば、期限を定めない永住ビザを取得し、家族を帯同することができ、(技師、高級技術員、介護士のような)外国人労働者の在留資格を受けることができます。
─現在、日本の法務省は手引き[訳注:省令のことか]を公布する準備をしています。一方、両国の間で、この2種類の在留資格の候補者を選抜する規定を導くために労働協定を締結しなければならなくなるかもしれません。
技能(14業種)と日本語(およそN4以上)の基準の方向性は比較的明確なので、皆さんは法律発効後の最初の試験に出願できるように直ちに受験準備に着手することができると思います。
─メリットについては分かりました。この2種類の在留資格の就労はベトナム人にとって何か有利なことや困難なことがあるとお考えになりますか?
ヴー・ホン・ナム大使:有利なことは非常に明らかです。ベトナム人は勤勉で熱心に働き、勉学好きで聡明です。そのため試験の目安が明確になれば、ベトナム人の皆さんが積極的に学習し試験に出願するための原動力となるでしょう。他面、技能実習生のプログラムに参加して10年余りになり、自ら特定技能1号と見なす基準が十分にあるベトナム人は非常に多くいます。特定技能1号で就労する人数は非常に多くなると信じています。
しかしながら困難も少なからずあります。日本の内閣が採択した方針では、日本は国外追放者の出戻り受入れ責任を十分に果たしていない国からの労働者を受け入れないとしています。
同時に日本は、日本での不法滞在者、犯罪者、労働契約破棄者が現在多い国の公民への在留資格を慎重に審査するとしています。不透明な選抜があり、不法な多数の斡旋業者がいて、書類の偽造のある国は、これらの在留資格発給を制限する国のリストに入ることになります。
─私たちの政府は、日本のベトナム人労働者受け入れに悪影響を及ぼさないよう、何をしてきましたか?
ヴー・ホン・ナム大使:日本の法務省の詳細な手引き[省令]が出された後、私たちは、ベトナム人労働者の威信を傷つけるような現象を阻止するため、より断乎たる行動をとらなければならないでしょう。
国外追放者・犯罪者等の出戻り受入れへの支援協定の早期締結のために、両国は積極的に交渉をおこなっているところです。十分な法的枠組みができれば、上記の問題に関して両国間の法の執行はより有利になります。しかしながら私たちには、日本に不法に生活・就労し、犯罪に手を染め裁判を受けている少なからぬベトナム人がいます。
これらの人達に接触して彼らの話を聞くと、斡旋業者からの不正確な情報や不法な仲介によって、日本に留学や技能実習に行けば、実際より何倍もの賃金がえられると思っていたということです。そのため彼らは契約や学校をやめて不法な就労をし、すでに投じた出費を取り戻すために、より高額の賃金を望むわけです。
ベトナムの若い皆さんは、日本の「たまげる」賃金額に関する誤った情報に細心の警戒をする必要があると思います。私が既に申しましたように、技能実習生の平均的賃金は1か月に約2400万ドンです。それより高い賃金の会社はごく僅かです。赤字のために、最低賃金や約束した賃金より支払いが少ない会社もあります。
語学校で学ぶ生徒さんは、アルバイト料の額が1時間当たり5~10米ドルの間です(1週間に28時間が上限)。しかしながら、皆さんは問題を解決するために同業組合や大使館と冷静に意見交換する必要があります。自ら同業組合を捨てて、よくない結果をもたらすべきではありません。特に皆さんは、私が先に述べたような特定技能1号や2号の労働試験に出願することができません。
留学生の皆さんは、N4に達する(熱心に勉強すれば約1年)ように学期をまっとうし、特定技能1号の試験を受ける基礎づくりに努力すべきです。
現在、各部門や地方は、日本への留学相談センターや留学生派遣会社をあわただしく整備しているところです。それは、訓練のレベルを向上させ、レベルに適合していない修了証の発給を止めさせ、業者が不法な斡旋をして事実とは異なる情報を流し、労働者に情報を誤解させるのを厳禁するためです。日本での犯罪者や不法滞在者は徐々に集められて、帰国させられるでしょう。
─現在、ベトナムの工業団地でも労働力不足であり、日本への就労奨励は国内の企業や外国投資家に何らかの影響をあたえるのではという意見がありますが。
ヴー・ホン・ナム大使:影響をあたえるとは思いません。さらにこれは高品質の労働力であり、労働者が帰国した時には日系企業が受け入れることでしょう。現在、私たちは労働者が余っていますが、主には普通の労働者です。しかしこの手の労働者は僅かしか工業団地に就労していません。
日本の政策も技能訓練の需要を喚起し、職業訓練学校、日本語学校等をつくることを奨励していますし、逆に、この職業訓練学校や日本語学校がベトナムの工業団地のための技能訓練に参加していくことになるでしょう。
期限つきで就労し帰国した人達は、より高い賃金、より高い職位でベトナムの日系企業で働く機会をえるでしょう。私はそういった人達に会ったことがあります。彼らは3年間技能実習生となり、日本語を自学し、現在はベトナムの日系企業で管理職をつとめています。
日系企業のベトナムへの投資が高まるなか、過去10年間、日本から帰国した技能実習生や生徒は日本の企業にとって貴重な労働力供給源となっています。
さらにこれはまた、私たちが外国にベトナム人を出稼ぎに送り出す市場を再編成する機会でもあります。賃金が低く、気候が厳しく、多くの差別や摩擦のある市場は縮減されて、ベトナム人は高級な市場に参入するようになり、ベトナムと日本の双方にとって利益となるでしょう。
─大使、どうもありがとうございました。
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( 翻訳者:メディア翻訳ベトナム語班 )
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