気候変動は新農村建設の成果を相殺してしまうのか
2019年11月06日付 VietnamPlus 紙
国会議員の質問に回答する、グエン・スアン・フック農業・農村発展相
11月6日午前、第14期国会第8会期のアジェンダを引き継いで、3日間の質疑応答セッションが始まった。
最初の質疑応答者として、農業・農村開発省のグエン・スアン・クオン大臣が、国家目標である新農村建設に関連する内容について、国会議員からの多くの質問に回答した。
大多数の国会議員は、新しい農村を建設する国家プログラムについて、近代的な社会経済インフラとの結節、農業と工業・サービス業・計画に沿った都市の急速な発展とが結びついた合理的な経済構造と生産モデル、民族の特色が豊かで安定した農村社会、知的水準の向上などの形成に向け突破口を開いたとして評価した。
環境保護と気候変動への対応のためリソースを集中する
新農村建設における大きな成果について、特に当初の計画よりもおよそ2年も早く目標を達成した点を考えても、否定的な要素はない。しかし、ファン・バン・トゥアン議員(ベトナム北部のタイビン省選出)は、これまでの間、地方は、社会経済インフラ建設にばかり注力し、実際のところ生産効率の向上に対しては変化を生み出せておらず、環境保護対策に限界があり、地方住民の雇用創出、収入増加といった課題は解決していないとした。
トゥアン議員は、クオン大臣に対し、プログラムの次の段階では、生産活動の促進や、環境問題の解決、また地方の住民と労働者に対する雇用創出、収入の増加への取り組みを行うよう求めた。
クオン大臣は、この10年間、新農村建設の国家プログラムは、多くの包括的で新境地を切り開く成果を上げてきたと強調し、先に開催された10年間の総括式典において、グエン・スアン・フック首相から「これは歴史的快挙である」との評価を得るに至ったことを紹介した。
クオン大臣によれば、9年間で、インフラは2兆400億VND(1億ドル相当)の価値分を投じられたとされる。「一国においてこのような短期間で100%の行政村と99.1%の自然村に電気を通したことは、偉業であり、我々の努力の賜物である」と実証を示した。
しかし、前向きな成果の一方で、クオン大臣は、「別の側面もあることは事実だ」として問題点があることを認めた。それによれば、農村の人々の生活は、目標値の2.5倍を上回り3.5倍に向上したとはいえ、実生活における人々の期待値と比べると依然として低い。また、別の重要な指標であって未だに納得できる成果を得られていないのは、環境に関する指標である。「現在、ゴミの回収を行っている、および開始したのは63.7%の行政村に過ぎず、完全に徹底的なゴミ処理は行われていない」と述べる。
加えて、生産活動に関わる環境の問題、自然環境の問題にも、より包括的な対応が求められる。
一方、農村地域における大量生産や複合的な生産システムが形成されたものの、多くの地域に普及していない。タイビン省での最近の状況が証明するように、農民は土地に興味がない。大臣は、これは大いに疑問とするところであり、今後、農業、IT投資、合作社(農業協同組合)間の連携等の再構築を通して、ボトルネックを取り除くことに注力する必要があるとした。
クオン大臣は、首相は、2021~2025年の段階に、新農村建設において、社会・文化の保障、環境問題の解決、大規模生産の推進にあたり弊害となっているボトルネックと未だ存在している問題を解決するため、大目標を明確に定め、リソースやタスクフォースをそこに集中していくべく、農業分野とその関連分野に対し助言・補佐・諮問を行うよう委ねたと述べた。
環境問題にも配慮する必要があるとして、クアンビン省のグエン・ゴック・フオン議員は、堤防、ダム、及び貯水湖の地滑りの危険があるとして、ベトナムでの異常気象の状況について問題を提起した。フオン議員は、クオン大臣に対し、実際の年間投資は要求を満たしていないとして、この問題の今後の解決策を質すとともに、人々が地滑りの危険について恐怖を感じないよう説明を求めた。
フオン議員の質問に対して、クオン大臣は「我々が新農村を建設する中で、近年、地滑りの状況は改善しているとはいえ、根本的な解決策が見つけられないのであれば、気候変動の影響を受ける前に、新農村建設における数々の成果が無に帰すことがあることも事実である」と説明した。
ベトナムは、昨今の激しい気候変動の影響を受けている国のうち、最も被害を被っている5か国のうちの一つとされる。クオン大臣は、実際にこの3年間の頻度は、気候の異常を一層示しており、その状況は日に日に悪化し、頻度は増して、全ての地域、特にベトナム中部が苦しめられていると述べた。
このようなマイナスの変化を前にして、クオン大臣は、新農村建設の全般的指導プログラムにおいて、常に、持続可能な解決策、コミュニティの能力向上、そして4つのモットーの実践・活用ともに確認されるべきと強調した。これまでも、リソースが困難な状況であっても、各地域は特定のリソースに特化して気候変動対策への投資を行ってきた。
しかし、これほどの大きな経済規模、高い人口密度、そして傾斜の急な、甚大な被害が及ぶような山岳地域に2,000万人以上が住んでいる現状について、クオン大臣は「これは問題だ」と述べる。
過去3年間に、山岳地域の地滑り、洪水、鉄砲水による被害頻度は、常軌を逸した要素の一つとなっており、洪水や嵐をも超える重大な被害を引き起こす原因となっている。そのため、農業部門の責任者は「これは当面の、および長期の解決策を講じている各地域とともに、我々が注力している課題である」とした。
当座の解決策について、クオン大臣は、対処の過程で各解決策を推し進め、より緊密に迅速に把握し、対処に向けたモットーを積極的に活用し、全てのレベルが足並みを揃える必要があるとした。今後、SDGsのための中期投資計画においては、気候変動を解決するためのリソースは、最も優先されるべきものの一つと見なされている。
各地域間の発展格差の縮小
新農村建設が特定の地域及び国家全土にわたって文明化の向上と経済的な成果を上げてきたことを認めた上で、しかしカマウ省のチュオン・ティ・イエン・リン議員によれば、新農村建設プログラムを実施する過程で、新農村基準に達する割合や格差は未だ明白であり、貧富の差、教育の質、医療の質についての農村と都市部との差について適切に配慮されていないことなど、未だ幾つかの欠点を抱えているとされる。
この事実に対し、リン議員はクオン大臣に上記の格差の問題を解決するための抜本的な解決策の共有を求めた。
各議員の質問に答えて、クオン大臣はこれまでに52.4%の行政村(約4,665村)が新農村の基準に達しているが、「この状況は全般的な割合であって地域によってかなりの差があることが短所であるものの、次第にその差は広がってきている」とした。
山岳地域と平野部の発展の格差を縮めていくための目標が打ち出される中、クオン大臣は、「仮に政策を変更せず、決然とした指導方針がなければ、格差はますます広がっていくだろう」とした。社会インフラの使用効果が低いこともまた、その原因の一つである。
僻地遠隔地もまた教育と医療の分野において低い地域であり、「これらの地域は、医療に関して『凹んでいる』地域であり、全般的な文化社会においても『凹んでいる』地域であり、人々の暮らしはその他の地域の人々のそれと比べて低い」と大臣は認める。同時に、2021年から2025年の政策を立案するにあたって、地域の格差をなくし国土の均質な発展を目指すため方針、リソース、指導方法の面を盛り込むことが必要であるとした。
一部地域の医療サービス提供における格差の問題について、グエン・ティ・キム・ティエン保健大臣は、現在、僻地遠隔地にある多くの地域病院では、上京しなくとも済むような高度な医療技術を施すことができていると主張した。一方で、ティエン大臣は、行政村の診療所向けに家庭医モデルをトレーニングしているものの、改善が必要でありそれには時間がかかると述べた。
人材に関して、ティエン大臣は、保健省が学校を非常に良い成績で卒業し、6年間の研修とさらに2年間の専門訓練を受けた若い医者を選び、全国の61の貧しい地域に派遣する計画であると述べた。彼らは着任してすぐに業務を始め、試験的に3年間雇用され、8%の手当てを受け取ることになる。ティエン大臣はより多くの手当てを支払うことを望んでいるが、現在は困難であるとした。
ティエン大臣によれば、現在、僻地遠隔地では、「村の助産師」モデルの配置も行われており、手当ての補助を受け少数民族に対するサポートも受けている。
正確な数字としては、ODA資金と政府からの支援を得て、保健省は全国において発展の困難な行政村で約2,000カ所の診療所の建設と、26のパイロット拠点を開くとしている。
財政面について、ティエン大臣は、僻地遠隔地の貧困層の人々については国家が保険費用すべて負担するとし、病院診療の際に医療費の支払いは生じないとした。
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( 翻訳者:広瀬ないる )
( 記事ID:5084 )