メコンデルタにおける地下水の過剰採取:水資源の減少が深刻化
2021年04月29日付 VietnamPlus 紙
水が枯渇し、交通が困難となった運河
メコンデルタにおける地下水の過剰採取:水資源の減少が深刻化
メコンデルタでは、ほとんどの帯水層の地下水が乾季になると深化や塩害に直面する。
ベトナムはこれまでも、そして現在も、水資源安全保障と気候変動に関する課題に直面し、既存の様々な水に関する問題を拡大させている。水資源の管理に関する法的規範文書は制定されているものの、効果的なガイドラインはいまだ不足している。
水資源の総合的な管理を実現し、新たな課題に対応したり、気候変動や各種水害への対処能力を強化するため、様々なツールがアップデートされている。
そのため、メコンデルタにおける地下水の管理問題は、とりわけ気候変動との関連において、日増しに緊急性を増し、効果的な管理・監視対策が必要とされ、長期的な戦略の様相を呈している。
国家水資源計画調査センターの報告書によると、工業用水として利用される地下水の割合は比較的高く、現在ホーチミン市の企業の57%が地下水を利用している。
全国の多くの地域で地下水が減少傾向にある一方で、工業用水として利用される地下水は2006年と比較して約2倍となっている。
広範囲にわたる旱魃と塩害のリスク
資源環境省所管の国家水資源計画調査センター科学技術国際協力委員会のタン・ヴァン・ドン委員長によると、全国の地下水の総量は年間約910億立方メートル(1日あたり約2億5,070万立方メートル)で、このうち淡水は年間約690億立方メートル(1日あたり1億8,930万立方メートル)と推定される。
採取が許可されている淡水の水量は年間36億立方メートル(1日あたり990万立方メートル)で、うち都市用水として供給される地下水は現在、総供給量の40%を占めている。
地下水を利用する多くの都市の採取能力は低く、1日に5,000~1万5,000立方メートルから同2万~4万立方メートルにとどまる。
現在、各地域で採取が許可されている地下水の量は、採取可能な埋蔵量と比較し僅かである。しかし、地下水の分布特性上、地下水位は季節(雨季・乾季)によって大きく変動する。
地域ごとの具体的な採取レベルは大きく異なるため、水位の低下や帯水層の枯渇というリスクを招き、汚染、帯水層の塩水化、地盤沈下や地形の変化を拡大している。
具体的には、中南部地方のクアンガイ、ビンディン、フーエン、カインホア、ニントゥアン、ビントゥアン各省で、地下水位の低下と海水の侵入により、乾季に淡水不足に直面することが予想されている。
注目すべきは、メコンデルタのほとんどの帯水層の地下水が、乾季に深刻な水位の低下と海水の侵入に直面することである。
ホーチミン市、カントー市、ロンアン、ティエンザン、ソクチャン、チャービン、ヴィンロン、カマウ各省など多くの地域で、年間0.3から0.5mほどの急速な地下水位の低下が確認されている。
さらに、タンチュ県タンチュ町(ロンアン省)など一部地域では年間0.55mも低下しており、ライヴン県ライヴン町(ドンタップ省)では年間0.92mにまで達している。
ロンアン、チャービン、ハウザン、カマウなど一部の地域では、面積・濃度ともに海水の侵入による被害が増加傾向にある。特に、メコンデルタ地域では、2020年初数か月間、広範囲で旱魃と塩害の危機に直面した。
水位の低下、地下水汚染、地下水の塩水化のリスクだけでなく、現在、一部の地域では、地盤沈下や地表面の沈下のリスクにも直面している。
中でもその傾向が最も顕著なのがメコンデルタで、年間平均20~40㎜の速さで沈下している。沈下速度の最も速い地域はカマウ半島、ホーチミン市、カントー市である。
国家水資源観測ネットワークの整備
水不足や海水の侵入に悩む地域の水源を確保するため、国家水資源計画調査センターは、「山岳地帯および水不足の地域での生活用水供給のための地下水源の調査・探査」プロジェクトで実施された調査および探査の結果に基づき、山岳地帯と水不足の地域での生活用水供給システムの建設と引き渡しを早急に調整した。
それに加え、同センターは、「大都市における地下水保全」計画の第一段階の実施結果に基づき、大都市と重点経済地域の地下水資源を保全するための施策を実施した。
同センターは今後、センターが管理、観測を行っている井戸からベンチェー、バックリエウ、カマウ各省の人々に無料で水を供給するためのポンプ給水地3地点を整備するよう南部水資源計画調査連合を指導する。
これは、旱魃や塩害の時期にメコンデルタの人々を「渇水」から救うための有効な対策となる。
資源環境省水資源管理局のグエン・ミン・クエン副局長によると、同局は今後、過度に水位が低下した施設の監視および発見や迅速な処理対応が行えるよう、(2017年の第47/2017/TT-BTNMT号通達の規定に基づき)水の採取・使用のオンライン自動監視システムのレベル向上を継続するなど、重点任務を実行し続けるよう省に助言する予定だという。
同局は、引き続き国家水資源観測ネットワークのレベル向上と完成を目指し、地下水に関する警告と予測を強化する。すなわち、地下水に関するデータベースシステムのレベル向上と完成を目指す。
同時に、同局はメコンデルタの水不足、旱魃、水がもたらす被害の解決を同時進行的に行うため、資源環境省を通じて政府に2022年メコンデルタ水資源総合計画を提出し承認を得る予定だ。
さらに、水資源管理局は「ハノイ市、ホーチミン市およびメコンデルタにおける水の採取、利用、地盤沈下への影響に関する調査・評価、地下水源の持続可能な採取・利用の管理に関する方針の策定」プログラムの完成に集中する。
同局は、地下水採取の制限を規定した2018年の第167/2018/NĐ-CP号決定に基づき、採取制限エリアに関する規定を定めるよう、引き続き各地方に要請する。
地下水採取の制限を規定した2018年の第167/2018/NĐ-CP号決定の公布以降、現在に至るまでの国家観測ネットワークの初期データによると、多くの場所で地下水位が回復しており、同政策の有用性が確認されている。
この記事の原文はこちら
( 翻訳者:桑原美卯 )
( 記事ID:6015 )