米国戦略国際問題研究所(CSIS)におけるファム・ミン・チン首相の発表
2022年05月12日付 VietnamPlus 紙
ファム・ミン・チン首相が米国戦略国際問題研究所(CSIS)においてベトナムの政策について発表した。(写真:ズオン・ザン/国営ベトナム通信社)
ファム・ミン・チン首相が米国戦略国際問題研究所(CSIS)においてベトナムの政策について発表した。(写真:ズオン・ザン/国営ベトナム通信社)

米国戦略国際問題研究所(CSIS)におけるファム・ミン・チン首相の発表


首相は、ワシントンにある米国戦略国際問題研究所(CSIS)において、「より良い世界を作るため誠実で、信頼され、責任を持つこと」と題しスピーチを行った。



米国への実務訪問の枠組みで、5月11日(現地時間)、ファム・ミン・チン首相は、ワシントンにある米国戦略国際問題研究所(CSIS)において、「より良い世界を作るため誠実で、信頼され、責任を持つこと」と題しスピーチを行った。
国営ベトナム通信社は、ファム・ミン・チン政府首相の発表内容全文を謹んで紹介する。



米国戦略国際問題研究所(CSIS)所長兼CEOのジョン・ヘイムリ博士、
お集まりの皆様、
外交戦略、対外政策、国際問題に関する米国におけるトップレベルのシンクタンクの一つであるCSISについて初めてお聞きしたわけではありませんが、本日、こうしてCSISを初めて訪問したことを大変うれしく思います。
77年前、民族の英雄であり世界文化人たるホーチミン主席は、「すべての人は皆、生まれながらにして平等な権利を有している」との不滅の真理を、ベトナム民主共和国で誕生した独立宣言の序文に記しました。ホー主席は何人も侵すことのできない権利を挙げました。その中には、生存権、自由権、幸福追求権があります。
1776年の米国独立宣言に書かれた精神でもあるこの真理は、越米両国のみならず全人類にとって、一般基準となる共通価値を共有していることを示しています。
越米関係が、関係正常化以降およそ30年を経て飛躍的に発展したことを目の当たりにし、大変うれしく思います。この関係は、両国が国民の願望に寄り添いたい、応えたいとの目標を達成するために、双方が誠実で、信頼され、責任を持つこと、また互いに許容し合い、分かち合い、尊重し合うことに努めたことによって、「花を咲かせ果実となり」ました。
双方は、相違点を乗り越え、2015年のグエン・フー・チョン党書記長による米国公式訪問における越米の共通ビジョンに関する宣言の中で確認されたように、両国関係の基盤となる諸原則に達しました。上記宣言では、「相互の政治体制、独立・主権、領土保全」を尊重することが強調されています。
この考えに立って、チョン党書記長が2021年にジョー・バイデン大統領に送った書簡では、「相互尊重、独立、主権、領土保全を根本に、我々が共々に築いてきた、また現在築いている、生命力溢れる、力強く、包括的なパートナーシップ」と強調されています。
ベトナムは、強固で、独立し、繁栄したベトナムを支持してきた米国を高く評価します。国交正常化以降27年の間に、米国大統領は間断なくベトナムを訪問され、両国国民の心に素晴らしい印象を残されました。
バイデン大統領の同職就任一年目から、2021年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による非常に困難な時期に、カマラ・ハリス副大統領やロイド・オースティン国防長官をはじめとする米国の多くの高官がベトナムを訪れました。2021年11月には、わたくしとバイデン大統領は、英国で開かれたCOP 26会合でお会いしました。
これらの往来は、ベトナム社会主義共和国首相としてのわたくしの初の米国訪問のための確信と奮起を生むための基礎となりました。最近の極めて特別な状況にあって、また皆様からのご関心を得て、ここでお話しするためわたくしを招いてくださったCSIS所長閣下に謹んで感謝申し上げます。
本日の機会は米ASEAN特別首脳会議の直前に行われることで、その意義が一層増しています。同会議は、2017年に初めて行われた直接対話の機会であり、ASEANと米国の各首脳が地域と世界の平和、安定、繁栄のため協力を強化するとの決意を示すものです。
国際情勢はかつてないほどに深甚、急速、予測不可能に激変しています。政府も学者も皆すべての者が、共々により良い世界を築くため、一層協力し、話し合い、各種の構想を分かち合う必要があります。
本日のスピーチでは、より良い世界を作るため誠実で、信頼され、責任を持つこととの点を強調するため、わたくしは以下について皆様に共有させていただきます。
1.今日の世界に関するベトナムの見方
2.今日、激変する世界において誠実で、信頼され、責任を持つことの役割
3.より良い世界を作るため誠実で、信頼され、責任を持つことを示すために、われわれは何をすべきか。

皆さま。
1.21世紀の30年間が過ぎ、依然として世界の人々は平和、協力、発展を熱望しています。しかし、目下、冷戦以降最も難しい状況に直面していると言えるでしょう。
グローバル化、国際経済・世界経済の連携は、第4次産業革命の成果をはじめ、新たな発展のチャンスを迎えようとしています。しかし、COVID-19のパンデミックと地政学・経済学の変化、および大国間の戦略的競争は、予測困難な、各国の安全な環境と発展に多方面から影響を及ぼし、有利・チャンスと困難・試練が入り混じった多くのファクターを引き起こすことで世界が混乱する中、ターニングポイントを生んでいます。
数年前までは、COVID-19のパンデミックのために600万人以上の人命が失われると疑った人たちはごく僅かでしたし、ヨーロッパの間で紛争が起き、グローバルな安全、政治、経済、社会の状況に大きな災禍を引き起こすと想像した人たちもほとんどいませんでした。
世界は、総体的には平和であるが局地では戦争がまだ起こり、総体的には緊張緩和であるが局地では依然として緊張状態にあり、総体的には安定しているが局地では紛争が生じている、と言えましょう。
従って、戦争の危険や不安定さは増し、世界経済は多くの危機に直面しています。競争が進む中、対決することで政治、安全、経済のすべての側面で分断が引き起こされています。
さらに、気候変動、自然災害、資源の枯渇、エネルギーの安全保障、水資源の安全保障、食糧の安全保障、人間の安全保障、サイバーセキュリティなど、伝統的安全保障と非伝統的安全保障による挑戦は引き続き複雑に変化し、各国と、国連の2030年までに達成すべき持続可能な開発目標の実現に向けた努力に重大な影響を及ぼしています。
われわれは、力強く変化している一つの世界における平和、協力、発展にとっての有利・チャンスと試練・困難のすべてを十分に認識する必要があります。この中で、試練と困難はより顕在化しており、われわれはこれを効果的に処理するために努めて協力することが求められています。
世界と地域の情勢と、直近では2020年のASEAN議長国、2020年-2021年任期の国連安保理非常任国としての役割など、これまでの外交活動における実践に鑑み、わたくしは以下の諸点を共有させていただきます。
第一に、平和、安全、発展は、有機的に結びつけられた関係を有しています。一つの国の平和、安全、発展は、隣国、地域、世界にインパクトを与えます。
第二に、各々の国の利益は、国際法と国連憲章に基づき、他の国の正当でかつ合法的な民族国家の利益を調和し、尊重する必要があります。
第三に、国際協力は、平和を維持し、発展を推し進め、各国間の友好を促進するための必要不可欠な趨勢です。大国であれ富裕な国であれ、一つの国家がグローバルな課題をはじめあらゆる問題を単独で解決することはできず、他国、国際社会、国民と協力することが必要です。
グローバルな課題の解決にあたっては、全地球的・団結・国際協力のアプローチで取り組まねばなりません。また、COVID-19対策、気候変動対策、環境汚染対策、資源の枯渇の対策などにおいて多国間主義を掲げるべきです。
第4に、すべての国と民族は、人々の平和と幸福な生活のため、より良い世界を望んでいます。そのため、人間が中心である、人間が主体である、さらに人間は国際統合におけるあらゆる協力関係を発展させるための目標であり原動力であるとみなすなど、人間のファクターを特に重視する必要があります。すべての人々に関わる課題の解決にあたっては、すべての人々にアプローチしなければなりません。すなわち、あらゆる政策は人々のほうに向いていなければならず、すべての人々が創造性を発揮するよう奨励するとともに、彼らに協力を呼びかけなければなりません。
第5に、国際統合は客観的な潮流です。しかし国際統合に際しすべての国家は、重要で、必要で、恒常的に、突破口となるべき要素である外部の力を活用し、これとつながりを持ちながら、国の内部の力を基本とし、長期的な戦略とし、決定的な要素に据えなければなりません。言い換えれば、民族の力を時代の力と結びつけて、これを適切かつ効果的に活用しなければなりません。

皆様。
2.今日、世界が直面する課題を解決するためにとりわけ重要な役割は、誠実で、信頼され、責任を持つことです。不誠実、不信、無責任こそが、多くの地域における緊張や衝突を生じせしめる原因の一つです。不誠実、不信は、地域と世界への挑戦に対応するための二国間および多国間の協力に重大な障害となる要因であります。
したがって我々は、これまで以上に各国間の誠実、信頼を構築し強化する必要があります。同時に、各々の国は責任を持って行動することが求められます。それには先ず、自らのコミットメントを遵守すること、国際法・国連憲章を遵守すること、相互の独立・主権・領土保全を尊重すること、各々の国が選択し国民の支持を得た政治体制を尊重することを通じて示し、自己の能力に応じた国際社会の共同作業への貢献を通じて示す必要があります。我々は、相互理解をより深め、各国間の不一致や矛盾の解決に向け、対話を前面に掲げる必要があります。
対話すること、対等な協力をすること、相互尊重に基づき共に利益を有することは、国家間にある問題の解決およびより良い世界の構築のための最も有効な方法の一つです。
世界で複雑かつ予測不可能な変動が起こる中、この決定的な方法がいかなる理由によっても壊されることがないよう、我々は真摯に、責任を持って検討する必要があります。誠実で、信頼され、責任を持つことで、各国は共々に、直面する課題を実質的かつ効果的に解決することができるのです。
ASEANこそが、地域と世界の課題解決にあたり、誠実で、信頼され、責任を持つことの価値を証明する一例です。
太平洋とインド洋のはざまにあるASEANは、目下形成されつつある地域のアーキテクチャーにおける中心としての役割を強調し、2025年までのビジョンに沿ったASEAN共同体構築に向け、共に手を携えて努力しています。
誠実で、信頼され、責任を持つことを共通の基盤として、ASEANは、国際法と国連憲章に則り、世界と地域の平和、安定、協力、発展の状況を作るべく、その役割を発揮し各パートナーと共に懸命に取り組んでいます。
インド・太平洋に関するASEANのビジョンは、すべての当事者との協力と対話を根本に、オープンであることと包括的であることの要素を強調しています。ASEANは、米国を含むほとんどの重要なパートナーとの間で戦略的パートナーシップを構築し、そのネットワークを強化しています。ASEANは、各パートナーと一緒に誠実を築き、信頼を強化し、責任ある行動をして、独立、主権、領土保全、相互の政治体制の尊重、国際法の尊重に基づき協力を促進し、同時に、COVID-19や気候変動、環境保護といったグローバルな課題の解決にあたり国際協力を強化していきたいと希望しています。

皆様。
3.ASEANおよび国際社会の中で責任を持った建設的な加盟国として、ベトナムは、常に対話と協力に努め、国力と地位にふさわしい、主導的かつ積極的な役割を果たす用意があります。
ベトナムに関心を寄せている方々はわたくしにこう問うでしょう。「ベトナムは地域と世界の課題に対し、いかにして責任を果たすのか」。
ご存じの通り、かつて属国であったベトナムは独立を勝ち取り、不条理な戦争により分断されたベトナムは英雄が立ち上がり独立、自由、国土の統一を勝ち取り、貧しく後進の国だったベトナムは中所得国となり、今や発展目標の完全な実現を目指しています。
発展目標は次の通りです。・2025年までに近代的な産業を持ち、低中所得の水準を超えた発展途上国となる。・2030年までに近代的な産業を持ち、中高所得の発展途上国となる。・2045年までに高所得の先進国となる。
重要なことは、発展に向けたベトナムの志向が地域と世界の平和、安定、協力、発展への希求と密接に結びついていることです。わたくしは、ベトナムが誠実にかつ効果的にその戦略ビジョンを実現するよう、米国と他の重要な各パートナーがより関心を寄せ、協力し、支援してくださることを期待します。同時にこのことは、ベトナムと米国、ベトナムと他国との協力関係をより包括的にかつ深化するための実に大きなチャンスとなるでしょう。
ここでわたくしは、各国との協力、地域と国際社会との協力において、誠実さを示すこと、信頼を深めること、責任を強化することに関するベトナムとしての考え方を共有させていただきます。
第一に、ベトナムは、独立・自主、平和、友好、協力、発展、多様化、多角化の外交路線、世界各国のよき友で信頼できるパートナーであり、国際社会の責任ある一員であるとの道を堅持します。ベトナムはこうした路線を築き展開するうえで、常に誠実であり、一貫し、明白な姿勢を示します。
第二に、独立と従属の間について、偉大なるホーチミン主席が述べた「自由と独立ほど尊いものはない」との精神に照らし、我々は常に独立を選びます。協議と対立の間について、我々は協議することを選びます。対話と紛争の間について、我々は対話することを選びます。平和と戦争の間について、我々は平和を選びます。協力と競争の間について、我々は協力することを選び、仮に競争するならば、健全で、平等で、互いの合法的かつ正当な権利と利益を尊重しなければなりません。
変動、戦略的競争、および多くの選択肢が溢れる世界にあって、ベトナムは一方を選ぶことはしません。ベトナムは国際法と国連憲章の原則に基づき、正義、公平、公正、良識を選びます。平等を選び、すべての側が共に利益を有し、すべての側が共に勝利することを選びます。
第三に、ベトナムは相違や不一致を解決するために対話し協力する用意があります。これを通じ、世界の平和、安定、協力、発展に寄与し、同時に、各パートナー、各国、国際社会から関心が寄せている利益を調和し、正当に解決されるよう取り組みます。
まさにそうしたことから、各国の国内と域外にとって重要な海域である南シナ海を含む地域と世界における紛争や衝突を解決する上で、常に我々は、平和と安定の維持、航行と航空の安全と自由の確保を重視し、1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)をはじめ国際法に基づき、対話を通じて、平和的手段によって合法的な権利と利益を保護し、不一致の点を解決することを重視し、南シナ海における行動宣言(DOC)を実効性と完全性を以て実施し、UNCLOSを含む国際法に適合し実質性と実効性ある形で、南シナ海における行動規範(COC)が策定されるよう注力します。
地域と世界の共通課題に対し責任を持って貢献するため、ベトナムは、ニーズ、キャパシティ、具体的な条件に照らして、ASEAN、国連、地域・広域・メコン小地域の協力枠組みをはじめとする多国間の枠組みに主体的に参加し、そこで自らの役割を発揮します。
ベトナムは、国連の安全保障理事会非常任理事国(2008‐2009年任期、2020‐2021年任期)として、主体的、前向き、責任を持ってその役割を果たしてきました。ベトナムは、2014年6月から現在まで国連の平和維持活動に参加しており、軍を派遣することで貢献しています。
先の4月末、ベトナムは、アフリカのアビエイに工兵隊として184名を追加派遣し、南スーダン派遣団として、第2野戦病院に10名の女性を含む63名の軍人を派遣しました。
独立、自由、国土の統一を勝ち取るため多くの戦争を経験し、極めて大きな混乱に耐えてきた国として、ベトナムは、国家間の和解プロセスに貢献する用意があります。ベトナムは、第2回米朝首脳会談の開催地でした。
ウクライナ情勢に関連し、ベトナムの一貫した立場は、国連憲章および国際法の基本原則を尊重すること、各国の独立、主権、領土保全、合法的かつ正当な利益を尊重すること、武力の使用もしくは武力の使用を脅すことをせず、平和的手段によってあらゆる紛争を解決するというものです。
ベトナムは、各当事者が対話し長期的かつ持続的な解決策を模索するための環境整備を行うべく、国際社会による取組みやイニシアティブに参加する用意があります。ベトナムは、ウクライナへの人道支援として50万米ドルを支援しました。
COVID-19のパンデミックにおける厳しい状況の中でも、ベトナムは、米国を含む51か国にマスクと医療用設備を援助しました。同時に、COVAXのプログラムに数百万ドルを寄付しました。
この機会に、我々は、米国をはじめとする国際社会がパンデミックの抑制に向け、ベトナムに多くのワクチンと医療機器を提供してくださったこと、とりわけ米国が、ハノイに東南アジア地域の疾病予防医学センター(CDC)オフィスを設立したことに深謝するとともに高く評価しています。
社会経済面で依然として多くの困難に直面している発展途上国であるも、ベトナムは、気候変動に関するパリ協定でのコミットメント、および英国で開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP 26)において打ち出された、2050年までに世界の二酸化炭素排出量をゼロにするとしたコミットメントを実現すべく、気候変動への対応にあたり責任ある、決然とした態度で臨みました。
ベトナムは、世界の殆どの国との間で経済・貿易・投資協力を力強く推進しています。その中で、ベトナムは15の自由貿易協定(FTA)について交渉し、これを締結して、二国間貿易協定を締結した米国をはじめとする世界のすべての大きなエコノミーを含む60の国やパートナーと自由貿易市場を拡大しました。このことは、平等と自由貿易の実現に向けた自らの責任を示しています。

皆様。
4.ベトナムは、両国国民の共通利益のため、地域と世界の平和、協力、発展のため、誠実であることを根本に、米国との協力関係を強化し、信頼を深め、双方の責任を強化したいと常に希望しています。
ベトナム単独で国の発展目標を完遂することはできません。遠くに向かいたいならば友がいなければならないのです。ベトナムが今初めて米国との協力を希望しているのではありません。民族の英雄、世界文化人である偉大なるホーチミン主席は国家樹立後まもなく、1946年に米国政府に送った書簡の中で、米国との平等かつ包括的なパートナーシップの樹立を希望すると記しました。
このうち特に、1946年2月16日にハリー・トルーマン大統領に送った書簡においてホーチミン主席は、「我々の目標は、完全な独立であり、米国との包括的な協力である」と書きました。
ベトナムと米国は、誠実な姿勢を示し相互信頼を構築するまでに、長い道の区切りを辿ってきました。まず双方は、戦争の後遺症を克服するため誠実に考えを共有し、これに集中し、決然と取り組んできました。ベトナムは、行方不明兵の捜索にあたり、米国と前向きに効果のある協力を行ってきました。
我々は、米国が、ダイオキシンの解毒処理、枯葉剤による障がい者・被害者支援、地雷撤去の各プロジェクトを通じ、ベトナムとの戦争の後遺症を克服することに注力し、戦争により犠牲となったベトナム人兵士の遺骨捜索のための協力を促進してきたことを歓迎するとともに、米国がこれら活動を継続していくことを希望します。双方は、戦争により残された痛みや苦しみを軽減し、共に将来に向かっていくために、今後、戦争の後遺症を克服するための協力をより一層襲進めていく必要があります。
1995年の国交正常化以降、両国関係は多くの面において、絶えず発展してきました。
政治面で、双方は、2013年から互いに包括的パートナーシップとなっています。両国は、両国関係における決定的な原則、中でも、相互の政治体制、独立、主権、領土保全を尊重すること、共に利益を有する協力を行うこと、国連憲章と国際法を尊重することに関して、合意しました。
経済面で、米国は、ベトナムにとって第2位の貿易相手国となりました。その一方、ベトナムは米国にとって第9位の貿易相手国です。2000年の越米貿易協定は、両国関係を新たなレベルに引き上げることに寄与する契機となりました。
2021年の二国間貿易額は、COVID-19のパンデミックにより非常に多くの困難に直面したにもかかわらず、1,120億米ドルに達し、1995年の4億米ドルと比べおよそ280倍増加しました。ベトナムは、米国にとりASEANの中で最大の貿易相手国です。
教育・養成の面で、ベトナムは、東南アジアの中で最も多くの米国への留学生を有しています。その数は2019年~2020年の段階で約2万4千人に上り、毎年、米国経済におよそ10億ドル貢献しています。ベトナムにあるフルブライト大学は多様な部門・分野における開発ニーズに適時に対応して、質の高い人材を輩出してきました。とりわけ、両国国民の間の教育文化・友好は勢いよく増しています。
国防・安全保障協力は、2015年の国防協力に関する共同ビジョン宣言の精神に基づき、具体的かつ実質的な成果を伴って、引き続き発展しています。
同時に、引き続き両国は、核不拡散、テロ対策、気候変動、海面上昇から、食糧の安全保障、水資源の安全保障、航行の安全、原子力の安全、アジア・太平洋における平和、安定の維持と協力の促進まで、地域と世界の多くの課題への対処に際し、より良く連携していきます。

皆様。
5.30年以上の間、築かれてきた両国関係を基本に、2015年のチョン党書記長による訪米の際に双方が確認した通り、双方の民族のため戦争の負傷者に包帯を巻き、潜在力に相応しいかたちで両国間の協力関係が一層発展するよう育み、両国国民の願望と利益に応え、地域と世界の平和、安定、協力、発展に寄与すべく、我々は、戦争の後遺症の克服に共同で取組むにあたり、誠実、信頼、尊重、責任を発揮する必要があります。
米国と多くの国がアジア・太平洋地域に目を向け、ベトナムは発展目標の完全な実現を目指す中、我々両国は、包括的パートナーシップが安定的、長期的、実質的、効果的に発展し深化するための新たなチャンス、特に経済、貿易、投資、科学技術、デジタルトランスフォーメーション、高度人材育成、気候変動などや、地域と国際の課題解決に取組むにあたり新たなチャンスを目の前にしています。
伝統的な協力分野とともに、双方は、将来の協力分野にも向かっていく必要があります。わたくしは、今後両国間の協力可能性が大きい重要な3つの分野について、とりわけ強調したいと思います。それは、グリーン成長、技術革新、デジタルトランスメーションとサプライチェーンの多様化です。
ベトナムは、現世代のみならず将来世代が円熟と幸福を得られるよう、持続的な発展空間を建造するために、グリーン成長の推進は柱となる任務と見なしています。
2050年までに世界の二酸化炭素排出量をゼロにするとしたコミットメントを実現すべく、我々は、クリーンエネルギー、近代的なインフラ連結、持続的な水資源管理などを発展させるため、科学技術人材や建設・管理の経験を持つ人材を誘引することを特に重視しています。
技術革新やデジタルインフォーメーションは、グローバル経済の決定的な動力となるものを明確に定義づけられます。ベトナムは、発展格差を断ち切り、格差を狭めるため、デジタルフォーメーションに関する大きな潮流を迎え入れています。包括的なデジタルフォーメーションの推進は、デジタル政府、デジタル経済、デジタル社会という3つの支柱に置かれています。
同時に、ベトナムは、グローバルな生産ネットワークとバリューチェーンに積極的に参加しています。特に、サプライチェーンの多様化は今日の世界的に喫緊のニーズに対応するものです。ベトナムは、激変する世界にあって、持続的かつ安定的なサプライチェーンの多様化に向け取組む中、これまでも、また今後も、米国企業を含む各企業から信頼される一地点となるでしょう。
グリーン成長、技術革新、デジタルフォーメーションは、米国が世界トップクラスの優位性を持つ分野です。同時に、米国は、市場の規模、豊富さ、多様さの観点から世界最大のエコノミーであり、世界規模でサプライチェーンの多様化を推進することにより、盤石な基盤を作ることにも繋がります。
ベトナム経済がダイナミック、主体的、積極的に国際統合を一層深めている中、これらの重要な分野について米国の強みと結合させることは、今後、両国間の協力、両国企業間の協力ため大きなチャンスを開くことでしょう。

皆様。
6.誠実で、信頼され、責任を持つことは、世界が現在のように激変する中、各国が不一致や相違する課題を解決するためのカギです。また、誠実で、信頼され、責任を持つことは、30年以上に亘り越米関係の力強い発展を作るため重要な貢献を果たしてきました。わたくしは、この観点が、今後の越米間の包括的パートナーシップをより実質的に効果的に推し進め、新たなレベルに引き上げるための重要な要素であると確信します。
チョン党書記長は、2015年のCSISにおけるスピーチの中で、双方は、「過去を脇に置き、相違を乗り越え、相同を発揮し、将来に向かう」必要があると強調しました。この際、バラク・オバマ大統領も、「両国関係は、相互尊重を根本に、両国国民の利益のため、建設的な関係」であると強調しました。わたくしは、皆様が共に手を取り合って、両国間の信頼と責任を育み、築き、強化することに貢献し、両国国民の利益のため、世界の平和、安定、協力、発展のため、実質的に貢献されることを希望します。

皆様のご健康、ご多幸、並びにご成功を祈念いたします。
ご清聴ありがとうございました。



*写真
ファム・ミン・チン首相が米国戦略国際問題研究所(CSIS)においてベトナムの政策について発表した。(写真:ズオン・ザン/国営ベトナム通信社)
ファム・ミン・チン首相が米国戦略国際問題研究所(CSIS)においてベトナムの政策について発表した。(写真:ズオン・ザン/国営ベトナム通信社)
ファム・ミン・チン首相が米国戦略国際問題研究所(CSIS)において、専門家、研究者、大学教授らと対話を行った。(写真:ズオン・ザン/国営ベトナム通信社)
ファム・ミン・チン首相が米国戦略国際問題研究所(CSIS)において出席者と意見交換を行った。(写真:ズオン・ザン/国営ベトナム通信社)

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( 翻訳者:メディア翻訳ベトナム語班 )
( 記事ID:6427 )