春の革命と情報メディアの状況
2022年10月30日付 その他-ミャンマーナウ紙 紙
60人以上が亡くなったパーカン市アナンパー村の空爆の後の、チンドゥィン河西岸でのデモ隊は、10月26日に「悲しみを革命の力として加速せよ」という看板、カチンの旗を持ち路上に出た
60人以上が亡くなったパーカン市アナンパー村の空爆の後の、チンドゥィン河西岸でのデモ隊は、10月26日に「悲しみを革命の力として加速せよ」という看板、カチンの旗を持ち路上に出た

地方メディア、そのメディアの力を部分的に使う在来の報道機関たちは独裁制度に対し、伝統に従い継続して挑んでいる

ビルマモニター
2022年10月30日

 ミャンマーの各種出版物の歴史の始まりとも言うべきイギリス植民地時代の記者たちをもう一度見てみると、それらの人物は彼らの時代の歴史が与えた責任である反植民地の出版物を出すという責任を、忠実に全うしてきたということが明らかに分かる。
 ミャンマーの出版業界の人々は、その時代の後連続して遭遇した反ファシスト、民主主義、平和主義などの降りかかった責任も、愚痴をもらすことなく担ってきた。
 1962年から現在に至るまで、ミャンマー人たちを悩ませていた軍事独裁制度への反対運動でも、ミャンマーの出版業界の人々は熱心に仕事にあたってきたのだ。時代や技術は変化したので媒介となるメディアは変わってしまったが、民主主義、平和主義を深く愛するミャンマーの報道関係者の気持ちは変化しないのである。
 この記事では軍事独裁に反対する春の革命と共に出現したミャンマーの出版物、ニュースメディアを(手の届く範囲で)調査し、提示していく。今のところ春の革命の期間で新しく出現した定期刊行物が40以上、地域ニュースメディアは150以上が観測される。実際は新しく出現した(メディア)数はこれよりも多いかもしれない。引き続き調査が必要である。

定期刊行物

 春の革命の期間には、革命、宣伝や動員を目的とした各組織が刊行した定期刊行物が41種類出されてきた。これらの定期刊行物は関連の各社会階層組織の見解を出版し広めるだけではなく、多くの国民がニュースを知る権利と受け取る権利があり、それに対する責任を兼務していたといえる。組織の中で学生連盟は宣伝と組織化に尽力した。発表された定期刊行物41種類のうち17種類を学生連盟が発行したという点は明確な証拠を示している。しかし情報普及事業の本来の難しさと学生連盟のメンバーの安全に関する問題のため7種類の定期刊行物が継続して発行できなくなり中止した。

(1)新世代シリーズ ダウェー郡基礎教育学生連盟と遠方の基礎教育学生連盟(ダウェー)
(2)春のガイドシリーズ 基礎教育学生組織である基礎教育学生青年会と基礎教育学生関連組織
(3)フクロウシリーズ (基礎教育学生関連組織)
(4)ペニシリン (春の革命の時の医学部と医療系学生連盟)
(5)闘うクジャク、我らの地シリーズ 基礎教育学生連盟(上ビルマ)
(6)クジャク世代シリーズ  (マライン)
(7)羽ばたきの音シリーズ  (モーラミャイン学生連盟文学文化関連委員会)

 学生連盟以外に、他の革命勢力が出版する刊行物は21誌あり、現在は12誌のみ出版し続けていることがわかっている。その中で著名な市民社会団体は2つあり、SYNERGYが出版する「私たちの未来、私たちの国家」シリーズ、Women Aliance Burmaが出版する「女性連合勢力」シリーズが含まれている。政治政党の中では、新社会民主党が出版する「新社会」シリーズの1つのみが出ている。
 2021年2月のクーデターが終わった翌月に初めて登場してきた有名なある冊子は「モロトフ」であった。ゼネラルストライキ委員会(GSC)の中に含まれるある団体が出版し、インターネット上と印刷物の2種類で配布している。特にヤンゴン管区内にある多くのタウンシップとザガイン管区内のインマービン、モンユワ、カレーなどの市で主に配布が見られる。2021年4月12日に軍評議会がモロトフは違法であると宣言し、これを援助した場合、既存の法律に従って処罰すると述べた。
 一方、軍の独裁者に反対するゼネラルストライキ連合体(マンダレー)は「国民の右腕」シリーズを出版してきた。インターネット・現物で配布している。2022年3月28日に一時的に休刊し、4月7日にシリーズの再出版のため原稿送付を呼び掛けた。2022年10月1日に第3巻9号まで出版された。
 マグウェ管区を基盤とするストライキ委員会が準備した「ミックウェ国民革命」シリーズは2021年12月1日に公開された。月に2回出版され、現在まで発行されている。デモクラシームーブメントストライキ委員会ダウェーが出版してきた「The Revolution」は2021年4月にタニンダーリー管区で出版され、7月に財政難のため休刊した。エーヤーワディー管区では定期刊行物を他とは別に出版することはなく、エーヤーワディー管区革命情報局として定期的にFacebook pageを通して革命に関係ある情報を提供している。現在そのページは、5万3千いいね、6万フォロワーを獲得し、一日平均して6つのニュースを発表している。
 州で活動する革命勢力も、プロパガンダと組織活動が勢いを増しているとの調査結果がある。Kachin State Civilian Movement – KSCM勢力ストライキ委員会が準備し出版した「シャッジャム」シリーズは2021年5月に出版された。カチン州にあるインターネットが切断された地域を中心に配布した。カチン州の人々の間で軍事独裁への反発を強め、正しい情報を人々のもとへ届けることを目指していると彼らのSNSに述べられている。「カチン州国民活動」シリーズもある。モーニン革命勢力も「新暁光」シリーズを出版してきたが、2021年4月に刊行され8月に休刊した。
 モン州では、新ラーマニャ・フェデラル勢力が「ラグンエイン」シリーズを2021年4月から出版しており、その第3巻第3号を2022年9月に出版した。なお、ラグンエインはモン語・ミャンマー語の二言語で出版されている。
 カヤー州では、活動家たちによる「松明革命」シリーズが、2021年8月15日より出版され、主にインターネット経由で配信されている。しかし同年12月に、カヤー州内での戦闘に伴い一時休刊となり、現在に至るまで再開することができていない。
 歴史的によく知られている全ビルマ学生連盟とヤンゴン大学学生連盟などが出版する「オーウェー」シリーズは、英領時代以来出版された雑誌「オーウェー」の良き伝統を継承している(訳註: 当該二誌は同名の異なる出版物)。前者の「オーウェー」は、2021年8月8日に創刊され、現在に至るまで出版され続けており、インターネット上、及び印刷物で提供されているのを見かけることができる。そして「オーウェー」は大衆層に最もよく読まれているものの一つであるとされる。
 大学学生連盟(ヤンゴン)と、その元学生勢力が雑誌「スィード(訳註:英語名称Towards)」を2021年3月に創刊した。当誌はインターネット及び印刷物で提供され、現在に至るまで出版され続けている。
青年による政治団体の一つである民主青年評議会の調査・政策関連委員会が制作する「研究」シリーズは2021年8月に創刊され、今年に至るまで出版され続けている。もう一つは、社会民主統一戦線が制作する「社会民主主義」シリーズである。春の革命の発生から1周年記念として、2022年2月に創刊され、毎月一回出版されている。

郡あるいは地域メディア

 軍評議会がクーデターを起こした後、情報を伝えるメディアはたくさんあり、主流情報メディアと呼ばれる伝統的な放送局のみならず、多くの地域、郡を拠点とする情報メディアと市民ジャーナリストがたくさん現われた。その情報メディアは国民に情報を伝えるだけでなく、治安関連の情報や注意事項をも提供できた。特に、国営メディアと主流メディアが急に情報を得られない地域に関する特別な情報を素早く正確に伝えることができた。いくつかの状況において、国際放送と主流メディアは情報そのものとして、情報源として、写真として、郡及び地域メディアを引用し、使用しているということがはっきりと分かる。
 春の革命の時期に現われた郡あるいは地域メディアは平均して150以上ほど存在する可能性があり、それぞれの郡あるいは地域メディアとしてある程度読者を獲得している。その中にThakayta News, Khayan Channel Ⅲ, Shwepyithar Information, Kyautada Information, Kalaw Township Media, Karenni’s Voice, Matupi Revolution News, モンユワ郡真のニュース情報局、KO News-コーカレイッ公開ニュースなどの大衆が興味関心をもって見る地域メディアもある。上記の情報メディアは地域の実際の情報、ストライキ運動の情報、軍評議会の活動の情報を多くの国民が得られるように継続的に発信しているメディアである。彼らの仕事の様子や情報の伝え方、その成果も個々に研究して明らかにするべきである。
 軍評議会はクーデター後、しばらくして全国にあるインターネット回線を切断した。インターネット速度も低下させた。完全に切断したわけではないが、フェイスブックやメッセンジャーを使うことが難しくなるようにした。その間、ニュース情報が不足・停止してしまわないように情報メディアや活動家たちはSMSからニュースを再び送ることができるよう努力した。例として「コーピュー(白鳩)」というニュース配信ページが1つ登場した。コーピューは報道機関が叙述したニュースを検証・確認し、まとめた。1日2回ニュースを配信した。インターネットが繋がりづらいところでは革命勢力、大勢の人々へSMS送信であれ、通話であれ、都合のいい方法での配信を心がけた。コーピューのページを2021年3月に開始して現在に至るまでニュースを配信し続けている。
 このような活動家たちと情報メディアはニュース情報の流れが途絶えないように、そして正しいニュース情報を多くの人が得られることを目指して、多方面から個人で、あるいは組織で遂行してきたのと同様、出版業界や情報メディアはネットワークとしても団結して戦った。2021年8月30日に自由革命メディアネットワークが革命派メディア7か所によって結成された。12月28日にさらに5か所追加した。その12グループ(訳註:冊子名、団体名で合計12)は、(1)トゥーミー革命シリーズ、(2)スィード(Towards)シリーズ、(3)反逆者ガゼット、(4)ダビェーニョー・ニュース、(5)フェニックス・シリーズ、(6)国民情報ネットワーク(CIN=citizen information network)、(7)労働者ページ、(8)クジャクの使者シリーズ、(9)Spring daily、(10)ゲリララジオ、(11)雷光シリーズ、(12)ミックウェ国民革命シリーズ、である。
 そのように様々な組織も沢山ある。組織が強力なものであればあるほど、その分人々に貢献できるようにニュースを迅速かつ正確に広め伝えることができた。ここでは情報を入手し発表することができない、残された革命派ニュースメディアも沢山あるだろう。それらのメディアも他と同じように国民の見聞を広げている。そのメディアのことをさらに調査・記録し明らかにすることがどうしても必要である。
 ミャンマーの少数民族もインターネットが遮断され電話も通じなくなっている期間に、情報を得て生命の安全に関して計画を立て行動するためにニュースメディアを頼っている。このため、彼らに対する民衆の支持も驚くほどに高まってきた証拠が沢山ある。一方で多くの国民が直面しているように、ジャーナリストたちも逮捕、投獄、拷問され殺されることが沢山あり、ニュースメディアの仕事と報道を密かに行わねばならない。
 春の革命以前から存在した報道機関と春の革命とともに誕生した新革命メディアは、軍独裁制度と宣伝戦で最も熾烈に戦っている。
 植民地時代以降存在している出版物の伝統と同じように、間もなく軍独裁制度を根絶し、勝利をする可能性があるのは確かだ。

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( 翻訳者:S.T.M、M.I、H.O、N.M.M、K.K.M、H.N、K.Y.M、MY.S )
( 記事ID:6528 )