破綻国家へ向かわせるクーデター政権
2023年07月19日付 その他 - ミャンマーナウ紙 紙
クーデター後、国家運営を首尾よく行おうと努力しているミンアウンフライン上級大将は、国家経済の衰退を制止することができないため、取り乱しているもしくは孤立感を抱いているようである。
現在直面している経済の危機は国民民主連盟(NLD)政権時代の過ちによるものだと、6月30日に国家経済振興会議で批判した。
経済が衰退した原因を調査するため、4つの省に責務を与え、その4省の調査結果によると、経済衰退はNLD政府の先見性と迅速な行動の欠如によるものだそうだ。彼がどこまで言ったかというと、現在の電力不足は、NLD政府によるものだとまで批判した。
いずれにせよ、2021年2月1日将軍らの無謀なクーデターにより国の経済が崩壊し、武装闘争も、従来の少数民族武装勢力が支配する国境地帯ではなく、ビルマ族が大多数居住するアーニャ地方と呼ばれる[ミャンマー中部の]ザガイン、マンダレー、マグウェ管区にまで及んでいることを多くの人が知っている。
ミャンマー情勢のアナリストらにとって、半文民的なNLD政権下で、経済発展と社会経済の変化を正確に推測するのは難しいが、軍事政権下の社会経済の状況を推測するのは難しくない。というのは、独裁者のネーウィン将軍、タンシュエ上級大将、現在のミンアウンフライン上級大将、この3人はいずれもこの国の長期的な経済発展を破壊した張本人だからだ。
2013年、国際研究組織の1つであるMckinsey Global Institute[マッキンゼー・グローバルインスティテュート]が発表した報告書“Myanmar’s Moment: Unique Opportunities, Major Challenges[ミャンマーの今: ユニークな機会と重大な課題]”では、ミャンマーは20世紀初頭までは発展において近隣地域の国々と比較して大差はなかったが、20世紀末には大きく遅れをとったことが表で比較して示されている。したがって、20世紀はミャンマーにとって失われた世紀(Lost Century)であるといえる。21世紀末、ミャンマーがどのような状態になるかは正確には誰にもわからないが、確かなことは、現在の軍が統治する限りミャンマーは発展途上の貧しい国であり続けるということである。
現在、社会経済と個人の安全保障指数は、最低レベルに達している。
最近発表された世界銀行のミャンマー経済監視報告書では、2023年のGDP成長率は3%と推定されているが、食糧安全保障のリスク(food insecurity)が強調されている。2023年5月に実施された調査によると、回答した農家の48%が十分な食料がなくなることを懸念していると述べた。昨年は26%が懸念していると答えた。
同様に、アジア開発銀行が2023年4月に実施した調査でも、ミャンマーで3人に1人が人道支援を必要としており、今年は人口の28%が食糧不安に直面すると推定されている。ミャンマーのように農作物を輸出している国にとって、多くの人々が飢餓に直面しているのは不幸なことだ。
実際、人間の安全保障に関連する(経済、食糧、健康、自然環境、個人、集団または少数派、政治的安全保障)の状況全てが軍事クーデター以来悪化している。国連人道問題調整事務所の推測によると、ミャンマーでの軍事クーデター以来、国内避難民の数が150万人以上増加し、6万戸近くの家が焼かれた。
そのような状況に達したことは珍しいことではない。軍評議会がクーデター以来ずっと、国と国民を史上最悪の残虐行為で統治してきたからだ。軍評議会の臆面もない法の支配の蹂躙、劣悪で不敗の進んだ国家運営が、現在の人間の安全保障が欠如した状態を生み出した。
長期にわたる持続可能な発展を実現させるために重要な要素は、労働力と生産性(Labor and Productivity)である。かつてミャンマーの人口は若者の割合が多かったため、発展に寄与していた。つまり、新たに労働の場に参入する労働者の数が増加したということだ。20世紀を通じてGDPがわずかに増加したのも、働く人の数が増加したためだ。家族全員が仕事をしてようやく十分に食事をとることができたという状況のせいでもある。しかし、2013年にOECD[経済協力開発機構]が発行したMulti-dimensional Review of Myanmar[ミャンマーの多面的批評]では、国の人口に占める子供の数が減少していると指摘している。ミャンマーは人口の大部分が高齢化する前にできるだけ早く豊かになるよう努める必要があるとも警告している。
状況をさらに悪化させているのは、多くの若者が海外に移住し、働いていることだ。国内で雇用が不足していることも原因である。研究グループの報告によると、 2022年に近隣諸国が入国制限を解除してから6カ月以内に、ミャンマー人360万人が国外へ出国したことがわかった。この数字は総人口の6.5%にあたり、そのうち250万人がタイへ出国した。仕事を見つけるために国外に出たため、彼らは経済難民とみなされる可能性がある。熟練労働者や非熟練労働者、教育を受けた若者もクーデター後は一斉に海外へ流出しているため、国の長期にわたる持続可能な発展に不可欠な重要な人的資源を失いつつある。
世界銀行が2019年に発表した報告書“Myanmar-Economic Transition Amid Conflict: Systematic Country Diagnostic[ミャンマー-紛争中の経済移行:系統的な国診断]”では、当時ミャンマーで生まれた子どもたちが成人に達した時、(質の高い健康、栄養、教育サービスを利用できた場合の)の労働能力と比べてその47%しか保持しないだろう述べている。健康と教育への国の投資を減少させたと述べている。将軍たちが権力を握っている間、彼らは軍事費を増加させ、保健と教育を軽視していた。栄養失調や健康不良、教育を受けていないことにより、労働能力も低下する。現在でも軍評議会は教育と保康の支出をこの会計年度において、半減させているため、人的資源と生産性は低下するばかりだ。
したがって、ミンアウンフライン上級大将と軍評議会が統治する限り、ミャンマー経済は長期的には衰退する可能性が高い。しかし、こうした経済衰退に伴って生じる個々人の不安な状態の悪化は、地域諸国にも影響を与えるだろう。
2021年以降、犯罪組織は国境沿いで大々的に活動を拡大している。タイとミャンマー間の長さ31マイルの国境沿いに、少なくとも17の犯罪組織地帯が存在することを、アメリカの機関であるUnited States Institute of Peace[米国平和研究所](USIP)が調査し報告した。
世界的に有名なビジネス誌“Economist”も、崩壊する可能性のある中国の隣国の一つにミャンマーを挙げており、北朝鮮とともに破綻国のリストに含まれている。破綻国家では、麻薬密売から賭博組織、人身売買を含む様々な犯罪組織やテロ組織が跋扈する。したがって、ミンアウンフライン上級大将の軍事クーデターによりミャンマーが破綻国家となることは、タイの安全だけでなく、域内および世界に関わる安全を脅かすことになる。
写真:2022年6月、カヤー州パルーソー郡ドニェクー村の教会が燃やされた。
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( 翻訳者:H.N )
( 記事ID:6720 )