メコンデルタ、現状の砂採掘スピードでは2035年より前に砂が枯渇
2023年09月30日付 VietnamPlus 紙
【写真①】ティエン河のドンタップ省ホング県付近での砂採掘(ベトナム通信社)
【写真①】ティエン河のドンタップ省ホング県付近での砂採掘(ベトナム通信社)

メコンデルタ、現状の砂採掘スピードでは2035年より前に砂が枯渇
ĐBSCL sẽ hết cát trước năm 2035 với tốc độ khai cát như hiện nay


研究結果によると、メコンデルタでの砂の採掘スピードが現在のような年間3500万~5500万立方メートルで推移すれば、メコンデルタの砂の埋蔵量は2035年以前に完全に枯渇するだろう。



9月29日、カントーで、堤防管理自然災害対策局(農業農村開発省)は、世界自然保護基金ベトナム事務所(WWFベトナム)とともに、メコンデルタのための「砂バンク」の研究結果を公表した。

会見で、WWFベトナムのメコンデルタにおける持続可能な砂管理計画国家マネージャーのハー・フイ・アイン氏は、これは全デルタ規模で実現される世界で初めての「砂バンク」であり、2030~2040年までを視野に、メコンデルタにある現在の砂の埋蔵量を概算するため、メコン河本流の二つの分流、つまりティエン河(ティエンザン河、前江)とハウ河(ハウザン河、後江)での実地調査やデータ収集などを初め、2022年3月から始動していると述べた。

「砂バンク」は、メコンデルタに流れ込む砂の量、海に流れ出る砂の量、デルタ内で採掘される砂の量、そして、川底にある現在の砂の埋蔵量の4要素に基づいて形成される。

WWFベトナムのメコンデルタにおける持続可能な砂管理計画マネージャーのハー・フイ・アイン氏によると、砂の埋蔵量を概算するために、研究チームはティエン河とハウ河に沿っておよそ550キロメートルを表層地震計測技術で計測し、概算の信頼性を監査するため各地方が提供した川底の表面の堆積サンプル、川底の地形データ、地質ボーリング調査データを収集した。

研究結果により、ハウ河とコーチエン河の上流部は最も多くの砂の埋蔵量があり、次いでハウ河であると明らかになった。砂の埋蔵量はメコン河とハムルオン河の下流部で少なかった。

砂の総埋蔵量はおよそ3億6700万~5億5000万立方メートルと概算されたが、これは何百年も前から蓄積された砂の量で、デルタの安定性にとって重要な役割を担っている。

ハー・フイ・アイン氏はまた、メコンデルタの砂の量の概算データは流動性のある砂の層に基づいて見積もっており、各採掘場の砂の埋蔵量を調べたのではないと述べた。

2022年の結果も、デルタに流れ込む砂の量は年間200万~400万立方メートルに減少し、砂の大部分はメコン河上流部にある水力発電ダムにより滞留してしまっていることを示した。

研究結果によると、メコンデルタでの砂の採掘スピードが現在のような年間3500万~5500万立方メートルで推移すれば、メコンデルタの砂の埋蔵量は2035年以前に完全に枯渇するだろう。

よって、開発需要を満たし、かつ、気候変動の影響によるメコンデルタの生態系を守るためにも、建設事業用の代替資材を見つけることを研究する必要がある。 

WWFベトナムは、この「砂バンク」の重要な価値は、代替資材の開発研究のために、いくつかの信頼できるデータを提供できることだとしている。特に優先度が高いのは、生態環境を守るために、海外のグリーンな資本やクレジットにアクセスでき、また、より持続可能な方法で代替資材の生産技術にアクセスできるよう、各企業と協力できる、代替資材の開発者を見つけることである。

研究チームは、建築に使われる砂に代わる18の代替資材があることを発見した。そして、その中にはメコンデルタで潜在力があり利用可能な砕砂、スラグ(鉱滓)、バガス灰などを含む8種の資材がある。

公表の会見では、参加した専門家、科学者、域内各地の代表者らもメコンデルタの砂資源や公表されたデータの確実性などに関していくつか問題を指摘した。

WWFベトナムの研究チームによると、主要な河床に沿った地質ボーリング調査実施のためのリソースの制限により、このプロジェクトにおける砂の埋蔵量の概算量は、ティエン河とハウ河の本流の全河床の流動性のある砂の層の埋蔵量が中心となっている。

これは、何百年もかけて上流から運ばれてきた川底の表面にある砂のすべてで、この砂の量のすべてが採掘されるという意味ではない。なぜならば、流動性のある砂の層の厚さが5メートル(採掘可能)にまで達するエリアもあれば、10~20センチメートルだけ(採掘不可)のエリアもあるからである。

以前、資源環境省はメコンデルタの砂の埋蔵量は1億2000万立方メートルと公表しており、域内で展開されている重点計画のための需要に十分応える量であるとしていた。

公表された砂の埋蔵量のデータの差異の原因の解釈について、WWFベトナムの研究チームは、砂の埋蔵量の計算の目的と規模が異なることによると考えている。

「我々は、より正確なデータを提供することを目指し、デルタ全域での砂の流動のモニタリングを強化するために、政府や関連する各方面と協力することを望んでおり、これは現在そして未来の管理、開発、回復に関する決定を下すことにおいてとても重要である」とWWFベトナム代表は会見で提起した。

WWFアジア太平洋の淡水プログラム・マネージャーのマーク・ゴワショ氏は、砂の価値は、採掘と輸送のコストにのみあるのではなく、河川から砂を採取するのと引き換えに生じるコストも考慮に入れなければならず、その最大のコストは、もし早急に行動を起こさなければ、今世紀末にメコンデルタが完全に消滅してしまうことだろうと認めた。

「我々はまた、現在の急を要する開発要求下で、すぐさま砂の採掘を中止することは不可能だと理解しているが、砂は無尽蔵ではなく、目先の経済的利益のために採掘しつくすことはその何倍も大きな悪影響をもたらすということが砂バンクにより分かった。これらの結果を受け、我々は安定し持続可能なデルタの維持を目指し、残っている砂のほとんどの量を保全するために、効果的な戦略を持つべきだ」とマーク・ゴワショ氏は述べた。

また、WWFベトナムの調査結果によると、2022年末までに、メコンデルタの全域で、596地点で川岸の浸食による流出があり、その長さは約582キロに及んでいる。また、48地点の海岸でも浸食による流出があり、その長さは221キロメートル以上に達した。さらに、99地点が浸食による流出の特に危険な地点とされている。

土地の浸食による流出状況は、地域の住民の経済生活、社会生活に影響を与え続け、生態系や自然環境を直接脅かしている。


【写真①】ティエン河のドンタップ省ホング県付近での砂採掘(ベトナム通信社)
【写真②】メコン河上流部にある水力発電ダムによる滞留でデルタに流れ込む砂の量は年間200万から400万立方メートルに減少(ベトナム通信社)
【写真③】ドンタップ省、ティエン河での砂採掘の手段(ベトナム通信社)

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( 翻訳者:大平琢己 )
( 記事ID:6804 )