地雷の危険の中を生きるミャンマー市民
2025年01月12日付 その他 - RFA Burmese 紙
■ミャンマーでは2024年1月から9月までの間に、地雷および戦争残存物の爆発537件で130人が死亡し、759人が負傷したことがユニセフが12月21日に発表した報告書で明らかになった。
ユニセフの発表によると2023年には188人が死亡し、1052人が負傷した。2024年最後の3ヶ月に関する報告書の発表はないが、去年と同様に死傷者数が増えていると有識者が述べた。
今年9ヶ月間のシャン州での死者は22人、負傷者199人と過去最多で、ザガイン管区では死者が27人で、ラカイン州での死者は22人にのぼる。
しかし、2024年中は、軍評議会にも革命勢力側にも地雷の使用削減に向けた努力は見られなかった。
■地雷、戦争残存物と国民
2024年の状況を見ると、武力紛争の激しいミャンマーの三分の二の地域において国民は地雷と戦争残存物の危険にさらされていると人道支援活動を行う地元住民が本紙に述べた。
チン州では、軍がクーデターを起こすまでは地雷や戦争残存物の危険は全くなかったが、現在では、公道や田畑、住宅までもが地雷の危険に晒されていると地元住民が話した。
戦闘によって避難を余儀なくされているミンダッのとある住民は本誌の取材に対し、停戦状態になり家に戻る許可が出たとしても、地雷の危険があるため怖くて戻ることができないと語った。
「若者たち<訳注:抵抗勢力の意>が占領することができるのはせいぜいミンダッだけだろう。全て片付けが終わったから戻ってくるよう言われても、地雷が全て一掃されてからでなければ安心して戻ることはできない。地域に住む人間としてとても心配している」
2024年、この住民の姉と甥はミンダッ市から家に帰る際に家の入り口に仕掛けられていた地雷を踏み、亡くなったため、この出来事に彼は常に脅かされているという。
同様に、去年の年頭に田畑に行く途中で、地雷を踏み体の一部を失ったザガイン管区イェーウ郡のマ・ウェーマーウー(仮名)も2024年は彼女の人生において最大の喪失に見舞われた年だったと本紙に語った。
「心底怯えている。地雷という言葉を聞くと体が震えてくる。上ビルマでの戦闘で、足のない状態で逃げ回ったり、隠れたりしなければならない。」
軍評議会が至るところに地雷を仕掛けているため、畑にさえ安心して行くことができないと話した。地雷を踏んだ人は命を落とさなかったとしても、身体の一部を失うため、身体に障害を負った状態で生き続けなければならない。
■ 地雷の主な設置者は誰か
ミャンマーでは軍評議会も武装勢力も地雷を使用している。軍評議会側は工場で製造された様々なタイプの地雷を使用し、革命勢力側は手製の地雷を最も多く使用していると有識者は言う。
その中には、軍評議会側が使用する地雷が国民にとって最も危険だとカレン民族同盟(KNU)の報道官パドー・ソートーニーは述べる。
「私たちは自己防衛のために使用することはある。しかし、使用する場所については無秩序なことは行わない。例えば、使用するとなればどこで使用するかを、危険を回避できるように知らせている。
人々にも地雷の危険を10年どころではなく、20年近くにわたり伝えている。地雷の種類も工場で製造されたものではないため、寿命が短く自然に壊れてしまう。軍評議会の使用する地雷は手製ではなく、工場で製造されたものである。そのため危険度が高い。壊れてしまうようなことはない」。
軍が政権を掌握して以来、軍事評議会の部隊は地雷を秩序正しく計画的に設置しておらず、基地に加え、地元住民の畑付近に埋めるようになったという。
KNUが掌握している地域においては2024年に埋め込まれた地雷による死傷者の数は40人近くにのぼるとパドー・ソートーニーは述べた。
有識者によれば、軍評議会の軍側が使用する地雷の種類は少なくとも3種類であり、その中には殺人地雷と呼ばれ、爆発力の強いM14とM2という種類の地雷を最も多く使用しているという。
■ 地雷を除去する責任は誰にあるのか
ミャンマー軍は、クーデター以前は少数民族武装組織が活動する地域でのみ地雷を使用していたが、使用頻度は少なかったと有識者は話す。
軍事クーデター後には、自己防衛を口実に至るところで爆発力の強い軍事攻撃用の地雷が多く使用されるようになったという。
革命勢力によれば、チン州ミンダッ郡では、軍事クーデター以降の4年間に200発を超える軍事攻撃用の地雷が使用されており、住居や寺院の近くにも地雷が仕掛けられているという。
地雷を除去する責任は使用者にあると、チン人権機構(CHRO)の計画担当のサライ・マーン・ハイェーリャンは指摘する。
「地雷を使用している軍評議会に責任がある。そして、どこに残してきたのか、どこに埋めたのかを公開する必要がある。
一般の人々にはっきりと示す必要がある。そのような説明があってこそ我々の安全性は向上する。地雷を使用する軍評議会。彼らの地雷が埋められている場所を一般の人々に明確に示す必要がある。」
クーデター以降、チン州では地雷によって36名が死亡し、66名が負傷したことをチン人権機構(CHRO)のデータが明らかにしている。
またチン州では戦争残存物による死傷者の増加は憂慮すべき状況にあるとも地元住民らは語った。
◾️地雷や戦争残存物の危険性の啓発は依然、必要
地雷や戦争残存物による被害を抑えるために一般市民への啓発活動を少数民族軍が行っているとの報道もあるが、軍事評議会からの公式な発表は出されていない。
地雷の危険にさらされた時に基本的なところから解決して行けるよう、すべきこととそうでないことを教えていると国民統一政府(NUG)大統領府のチョーゾー報道官が話した。
「革命期の間も革命期の後も我々は、国民を啓発する活動も地雷の危険を回避するために行う。冊子を配ることもあればセミナーを行うこともある。」
地雷の危険に関する啓発を上ビルマと中部ビルマのほかにも複数の場所で行っているが、国民すべてをカバーすることはまだできていないと有識者らは指摘する。
■地雷の使用停止への道のりは遠く
ミャンマーを含むラオス、ベトナム、カンボジアなどの国々は、地雷の使用禁止に関する条約(Mine Ban Treaty)を批准していない。そのため、軍評議会は見境なしに使用し続けるだろうと、ビルマ人権ネットワーク(BHRN)の局長ウーチョーウィンは考察する。
「軍は私たちが知る限り国民を見境なく殺害している。地雷だけではない。空爆を行っている。彼らが対人地雷を使用するのはまったく不思議なことではない。彼らはどんなことだってやる可能性があると私たちは見ている。」
かつて世界的な戦争が行われたカンボジアとベトナムでは海外からの支援により戦争残存物と地雷の探知と除去が行われているのに対し、ミャンマーでは地雷の使用が増加し、死者数が増加している。
地雷禁止国際キャンペーン (ICBL)が11月20日に発表した報告書では、世界中で2023年に地雷や爆発物による死傷者の数は約6000人 (5757人)で、そのうちの1003人がミャンマー人であることが明らかにされている。
ミャンマー、ロシアなど一部の国が地雷を使用し続けており、地雷使用を禁止する国際協定を守ることが早急に求められているとICBLの報告書に記載されている。コロンビア、ミャンマー、インド、パキスタンおよびパレスチナの非政府武装勢力が2023年から2024年にかけて地雷の使用を続けていたとも報告している。
ミャンマーでの地雷使用について詳しく尋ねるため軍評議会の報道官ゾーミントゥン少将にRFAが何度か電話取材を試みたが、応答はなかった。
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( 翻訳者:N.T、T.O、W.S、H.T、A.I、R.H、F.K )
( 記事ID:7095 )