三度目に生じたヤカイン州の対立(9-39-3-2,5-3)

2013年10月07日付 The Voice 紙
 一年近く平穏を保っていたヤカイン州での民族問題とされる対立が、10月初旬、タンドゥエ市において再燃した。その対立は、ウー・テインセイン大統領のタンドゥエ市訪問と時を同じくして発生した。
 対立による緊張が高まっていた10月2日に、テインセイン大統領はタンドゥエ市を訪れ、法の支配、二集団の間の信頼構築の状況、一連の復興事業などを視察した。
 対立が再発した背景には、政府の下部組織である地元当局が、村落における暴力行為を誘発するような扇動に、見て見ぬふりをしたからではなかったかという疑いが生じてくる。
 状況を検証している人々の話によれば、タンドゥエの対立は、突発的に起きたものではなく、問題を大きくさせる火種は長くくすぶっていたという。たとえば、民族的憎悪を植え付ける説教の録音を流して煽ったことによる小競り合いはしばしば起きていた。
 今回暴動が起きた3日間の間に、タンドゥエ市で5人が死傷し、2人が行方不明、4人が病院に入院していると、警察部長のチョーティン氏が公式情報として述べた。
 タンドゥエでは、異なる宗教間での騒動が頻発していたものの、死者を出すまでに至ったのは、今回が初めてであり、死亡したのは、イスラム教徒であった。
 タウンゴウッからタンドゥエにバイクタクシー3台で戻ってきた6人を、タンドゥエ郡シュエフレー村落警察署の前で、リンティー村に住むイスラム教徒たちが襲撃し、それにより2人が現在も行方不明、4人がタンドゥエ病院で治療中であると、タンドゥエ市の住民ウー・ミンモーが述べた。
 3日にわたるタンドゥエの暴動により、家屋102棟、小屋1軒、モスク2施設、商店1軒が破壊された他、44人が避難民となったということがヤカイン州政府作成の文書からわかる。
 関係する当局と地元住民の発言から、対立は、9月28日に、カマン民族の一人が、家の前に止められていた三輪バイクについていた仏旗を壊したことがきっかけで、人々が集まり乱闘が起きたとのことである。
 9月29日に、それを壊したウー・チョーサンフラを警察が保釈したため、地元住民が納得せず、治安維持部隊に投石、イスラム教徒が居住する民家に投石、放火し、家屋2棟が焼やされたため、警察が威嚇射撃をして阻止しなければならなかった。
 9月30日に、仏教徒が多く居住するタンドゥエ市アンドー地区が襲撃されるという情報が流れ、シュエジャウンピン村でも仏教徒が襲撃されるという情報があったために、商店、学校が閉められた、とタンドゥエ県国民民主連盟議長、ウー・ウィンナインが話した。
 その一連の対立について、ヤカイン民族発展党(RNDP)のタンドゥエ郡議長を含む仏教保護委員会の3名と他2名を逮捕したが、その理由について、関係当局は明らかにしていない。
 対立の一刻も早い収束をめざし、犯罪を犯した者の摘発と法に基づく処罰、焼失した家屋の建てなおしを行う予定であり、国民も対立が再燃しないよう、治安当局に協力するよう要請すると大統領府が10月2日に公式に発表している。
 在ミャンマーアメリカ大使館は、アメリカ合衆国として、テロ行為を強く非難する、攻撃を受けた地元住民を、的確な方針のもと速やかに保護し、テロリストの逮捕、被害者への支援、緊張の根本的要因を阻止するようにとの声明を出し、平和を持続させ、治安、法の支配、人道主義、和解を醸成するよう政府と地元の当局に要請するとともに、少数派イスラム教徒への意図的攻撃に反対するするよう述べている。
 ヤカイン州で、以前に発生した2度の対立により、190名余りが死亡し、10万人以上が住居を失った。
 3度目に生じたタンドェの対立では、対立を助長する宗教的扇動の他に、メディアの情報とソーシャルネットワークのフェイスブックでOIC(イスラム協力機構)がミャンマーに至ることを理由に、偏向した情報が流れ、それが拡散し、対立を大きくしたと、ミャンマー政治に詳しい識者の一人はコメントした。
 対立が起きている状況は、開放したばかりのミャンマーにとって、国際的に名声を傷つけるものであり、再度対立が起きないよう抑制すべきであると、大統領はヤカイン州視察において述べている。
 民主国家建設途上の国々においては、民主化への移行を求める一派とそれを望まない一派がいるのは常である。政治の規制が緩和され、それに伴い対立も増えるが、民主化への移行に向けて事業が加速する一方で、民主化への移行を受け入れず作り出された対立がエスカレートするとなれば、両者が出そろった挙句再び逆戻りとなる、ということが往々にしてあると言われる。
 ヤカイン州を含む他の地域において、民族問題の形をとった対立が何度も発生するようになっているのを見るとき、逆戻りしたがっている人間の差し金であることはいっそう明白ではないのかという疑念が生じてくるのである。


同じジャンルの記事を見る


翻訳者:原田正美
記事ID:307