タイ国政治懸念錯綜(10-2-1-2, 3-2, 4-1)

2014年01月20日付 The Voice 紙
<ミャンマーにとってピンチか、チャンスか>
 二陣営の争いで混迷するタイ政治では、黄シャツ隊(反タクシン派の市民団体―訳者註)が再び最悪の状況になることを後押ししている。経済と行政の中心であるバンコクの首都機能を停止させるデモで、キーポイントとされる市内の道路を4日前から封鎖した。
 経済的、政治的だけでなく、社会的にもミャンマーと最も関係が深いといえるタイにおける最近の政治情勢は、ミャンマーにどのような影響を及ぼすのだろうか。
 不安定な政治に加えて洪水などの自然災害もあったために、タイに投資していた人々が域内にある一部の他の国々に投資先を変えようと意識していた時期である。
 タイのピンチはミャンマーのチャンスか。それともタイのピンチからミャンマーのピンチへと向かうのか。
 「タイは大きな心配の種になっている」と経済社会問題担当の大統領顧問ゾーウー博士が言った。

<貿易>
 タイはミャンマーにとって(輸出も輸入も)重要な貿易相手国であって、旅行産業でも関わっている。在タイのミャンマー人移住労働者の問題もある。タイからはミャンマーのダウェー深海港やその他事業への投資もたくさんある。
 ミャンマーにとってチャンスになりうるのではないかという見方もあるが、ミャンマーはタイと比べてインフラ、政治の伝統、生活水準などがかけ離れている状態にある。
 そのため、タイがピンチの時をチャンスとは考えずに、域内のカンボジア、ベトナム、バングラデシュと競争できるようにし、長期的成長のための努力をするべきであるとゾーウー氏が言った。
 現在のタイは、民主主義が成熟しており、軍が権力を奪取するという状況ではない、デモを起こす人々も政府機関を停止させることだけを意図していて、経済に大きな影響がでるところまでする可能性はないと経済学者のアウンコーコー博士は見ている。
 「デモを起こす人たち自身は、経済の破綻まではいかないように抑えるだろう。彼らには、以前、経済に悪影響が及んでしまった経験がある」と同氏は見解を述べた。
 デモはバンコク市内だけであって、全国的な騒動ではないので、タイとミャンマーが行っている国境貿易には被害はないという意見もある。
 「デモは起きてはいるが、国境貿易は正常だ。デモはデモ、貿易は貿易だ」とタイ国境ミャワディ市からモン州タンビュザヤにかけて貿易をしている商人が言った。
 ミャンマー連邦商工会議所連盟会長秘書室役員のウー・アウンミンも「今は、通常の取引ができている。タイの商人の方が、輸出入を公式に停止するというなら、ミャンマーに入る建材、生活用品、電気製品、食料品は値上がりするだろう」と言った。
 現在、タイとミャンマーで貿易をする際、輸出が弱く、タイからの輸入が多くなっている。ミャンマーの米、豆、トウモロコシ、天然ガスなどをタイに輸出していて、タイからはセメント、食料品、飲料、建材、化粧品、などを主に輸入している。

<旅行>
 タイで政治の乱れが引き続き起きるようなら、外国人観光客がミャンマーにより訪れるようになると観光業者が推測して言った。
 一方で、ミャンマーへの入り口がタイであるため実際にタイへの旅行者が減ると、ミャンマーへの旅行者も減るだろう状況にある。目下のところ、バンコクへの旅行者の一部がミャンマーに流入しているだけと思われる。
 「例年、この時期は、いつも100人以上の往来があったのだ。今は、平均して4、50人前後しかいない。半分くらい減っている」とミャンマー国際航空のマーケティング部門責任者ドー・エーマヤターが言った。
 ミャンマーからタイへ治療のために行く人、遊びに行く人の旅程の一部のとりやめや、延期もある。
 長期的な利益のために、ミャンマーの美しい自然で惹きつけ、ミャンマーに直接来られるような乗り継ぎ空港を準備しておくべきであるという意見もある。タイでなければ、シンガポールを経由してミャンマーに来られるように、シンガポール空港との接続も予め準備しておくべきだとゾーウー氏が提案した。
 「以前に一度、タイで問題が起きてから、ネーピードー空港を乗り継ぎ空港にするように旅行会社がこぞって要求した。その時以来、政府は国際線を増やしてゆくと言ってきたが、今回は自分たちにとっての利益を見出すようになった」とフェア&スクエア旅行会社のディレクター、ウー・ゾーリンが言った。
 しかし、ネーピードー空港を管理しているアジアワールドがその事業を政府に返還すると仄めかすように、試みに飛ばしていたネーピードー-バンコク線の一部から先月撤退した。
 ホテル・観光省が発表した公式の統計によると、2013年は200万人以上の旅行者がミャンマーを訪れ、今年は300万人に届くだろうと推測している。タイには毎年2000万人の旅行者が訪れている。

<移住労働者>
 タイ政治の乱れが引き続き起こるようなら、タイで働くミャンマー人の賃金に被害があり、国への仕送りが減ると、それを頼りに生活している国内の家族にも苦境が訪れる。
 しかし、デモによる封鎖は主にバンコク市内で起きており、多くが郊外や地方都市で生活し働いているミャンマー人労働者に直接の被害はまだ少ない。
 とはいえ、タイバーツの下落が在タイのミャンマー人労働者の本国向け送金額に大きな影響をもたらしている。
 タイバーツは1ドル33バーツまで下落し、それは2010年後半の最悪のバーツ下落以来であると国際報道で発表された。
 「タイバーツの価値が下がっている。以前の30バーツから34バーツにまでなった」とゾーウー氏が価値下落を指摘した。
 4年間の就労ビザの期限が切れたミャンマー人労働者たちのビザ期限延長を認めるかたちで国籍証明手続きを行うと、政治紛争のさなか、タイ政府当局が発表した。

<投資>
 2013年の投資分野においても、タイは4億ドル以上で、ミャンマーに3番目に多く投資した国である。タイにとり重要な利益を生むといわれるダウェー深海港計画もタイ政府とミャンマー政府が共同で実行している。
 タイの政情不安によって、ダウェー経済特別区計画の実現が遅れるということを対外経済関係局副局長のタントゥッ博士が本誌に語った。
 「タイの騒乱が長引くと、投資にも被害がでるおそれがある」と同氏は言う。
 両国関係の主たる諸分野を検討してみると、タイ政治に対する懸念が渦巻いているときは、ミャンマーにとってピンチにもチャンスにもなりえそうだ。
 ただし、準備不足のために、困難の方が多く見えるということが学者や研究者の調査によりわかる。
 最近、ミャンマーとタイ両国間のビザ免除についての署名が延期された。
 ミャンマーの経済環境が整ってゆくには、電気、道路、通信、熟練労働者、堅固な法規、法の支配を始めとする多くの点を補足することがまだまだ必要である。
 投資がタイから他国へ移るとしても、ベトナムのように賃金が少なく、電気や通信などのインフラが整った国へ流れてしまうのが優勢であり、ミャンマーにはチャンスが少ないとタイに基盤を置くバフ開発研究所のウー・アウントゥーニェインは考える。
 さらに、タイの政治状況が現ASEAN議長の課題となるだろうことを同氏は次のように言った。
 「自国の利益を考えるように、タイの問題にも介入して解決してゆくべきときだ」と。


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翻訳者:田崎巧
記事ID:525