疑問うずまく所得税(10-11-1-2,3-2,4-1)

2014年03月24日付 The Voice 紙
 生活のやりくりにも不安を抱える国民にとって、これまで馴染みの薄かった所得税の規定が、突如として実効性をもつようになった今、では「それにより何が還元されるのか」という共通した疑問が、納税者国民の間に沸々と湧き上がっている。

 連邦議会が承認したことにより、年収200万〜500万チャットの収入を得ている人々は所得税5%、500万〜1000万チャットの人々は10%、3000万チャット以上の収入の人々は25%を、所得税として納めなければならなくなった。それゆえ、日収5500チャット以上、月収16万チャット以上の収入を得ている国民はすべて、義務として所得税を納めなければならないことになる。
 改正承認された所得税徴収規定によると、既婚者は、1ヶ月につきおよそ1200チャットを納税しなければならず、未婚の独身者の場合は、およそ2000チャットを納税しなければならないことが、国内税務局からの情報で分かった。
 「これくらいならば、納付額は多くはない。納められる。しかし、私たち国民の立場としては、このように納税することで、どんな恩恵が得られるのかは知りたい」と、疑問を投げかけたのは、エレベーター販売会社Kone(コネ)マネージャーのウー・チョーピョーウェーである。
 所得税の徴収において、所得隠しができないように、どの公務員であれ、公務員住宅、家具、残業代、賞与も含め、現在得ている月収にさらに12%を加算し、月収16万チャット以上の収入であると、所得税5%を義務として納めなければいけない。
 年収200万〜500万チャットの人々に対する所得税規定5%と、3000万チャット以上の人々に対して規定された所得税25%の間にある収入規模の格差の大きさは、納税者国民にとって指摘すべき点のひとつである。
 所得税に関し、公務員の月収額に応じて、税金を徴収するという規定は、1974年に税法を制定したときから組み込まれていた。その公務員に対する税の徴収が、軍事政権下において、命令告示の発令により禁止されたことが、財務省の布告で明らかにされている。
 現在、所得税は公務員が最も多く納付しており、個人事業、私企業の就業者の大半はいまだ納付していないことが、国内税務局からの情報で分かる。
 1974年の法律によれば、月収12万チャット以上の収入のある人は、所得税を納付しなければならず、基礎控除20%の規定を受けることもできたところを、現在は、16万チャット以上の収入のある人とし、所得税徴収規定を変更した。
 「この税率は公平である。以前より比率も低くなった。以前は、管理職クラスから、納税をしなければいけなかった。今は、軍管区副司令官クラスくらいから、納税しなければならない。会社や他の経済事業でも、役職が上の人たちが納税しなければいけない」と国内税務局副局長が比較も交え指摘した。
 40年近くに及び一方的な形をとった政府の税徴収規定は、国民と乖離し不相応なものとなっていたと、経済事業主たちは考える。
 「連邦政府が、税徴収についての、命令告示を発表する都度、私たち国民は右往左往するばかりだった」と2010年以前の時期の税徴収規定について、民族議会議員ミャッニャンソー博士は指摘した。
 1974年の法律によると、12万チャット(年収146万チャット)以上の収入がある既婚の公務員には、一ヶ月につき基礎控除20%のほか、子供ひとりにつき30万チャット、妻に対し50万チャットを差し引いて、所得税を徴収していたことが、国内税務局への取材で分かった。
 新しい所得税制においては、基礎控除20%の規定は同様であるが、子供ひとりにつき50万チャット、妻に対し100万チャットが減免される決まりであることが分かる。
 「この徴収制度では、独身者は全額納入しなればいけない。独身者には、基礎控除しか認められない。残りの控除は適用されない。既婚者はというと、子供がいれば、納付が減額される。新しい税率は、まず様子を見てみることが必要だろう。議会が決議し終えたというならば、納付しないわけにはいかない。現在の税率は公平だ」と国内税務局上級官吏が語った。
 既婚納税者に関して、子供、妻の扶養控除などもあるが、独身者たちの徴税はというと、基礎控除以外には、一部税額控除などはあてはまらず不利となり、規定されている税金を全額納めなければいけない。
 「独身者だの既婚者だのと、区別するのは適切ではない。しかし現代、子供ひとりにかかる費用もそうとうな額にのぼるとなると、これについても一概に言えない。独身者たちのためにも、公平な制度になるように、考慮しなければならない。私たちが納めた税金がどこに使われているのかということは知りたい」と製薬会社の社員であるウー・ミンコーが語った。
 国民すべてが、拠り所として居住している国家のために税金を納めることで、文化的で、発展した社会を形成することができると、ミャンマー中央銀行理事のウー・マウンタンが税金を納めるよう促した。
 「税金を納付する人々は、良き国民となる。文化的な国家、文化的な社会のみが、税金を納める慣習を実践している」とウー・マウンタンが考えを述べた。
 1974年に起草された税法が実施されてから、多くの国民の参加はなかったが、公務員や経済事業者の一部が税金を納めた。しかし、満足いく還元がなかったため、ミャンマーの税制度に対して、国民の間で信頼は得られなかった。
 「税の徴収方法が間違っていたのだ。正しく納めていた人々に、年々増額するように徴収していた。納税しない人たちはといえば一銭も納めなかった。このように、法律で規定したところで、私たちには何も還元がない」とはっきりと言い切るのは、ミャンマー・タマネギ、ニンニク、食用穀物栽培出荷協会、副会長ウー・キンハンである。
 現在ミャンマーで用いられている誤った税徴収制度を引き続き実施していくというならば、国民のために良い発展は望めないと、同氏は考える。
 所得税を含む税制すべては、国民の信託を得てはじめて、堅固で成功する税制度となる。
 「アメリカでも、全ての国民が税金を支払わなければいけない。しかし、彼らが60歳を迎えると、政府から医療保健のサポートなど還元がある。私たちには、このように納税によって、どのような見返りがあるのだろうか」とエレベーター販売会社コネ、マネージャーのウー・チョーピョーウェーが語った。
 国の社会基盤の不足を埋めることで、納税者たる国民に恩恵を間接的な方法で返している旨を、国内税務局上級官吏が語った。
 改革を引き続きとり行っている時期であり、税金の負担で、見返り的好機を手にしたいとは思わないが、国民が納付した税金は国家の発展のためであり、実際に国家に利益をもたらす開発事業においてのみ、利用されることが望ましいと、アジア開発銀行マネジング・ディレクターのウー・イェミンウーが語った。
 改変された新税制による所得税納付に関して、困難はないが、公平な税徴収と言うには問題があると、ヤンゴン市に拠点をおく自動車販売会社のウー・トゥーレインが語った。
 「私たちのように、底辺層の人間に税徴収するのであれば、百万長者、裕福な人々にも、厳密に課税することができるようにする必要がある」と同氏は言う。
 現在、制定された税率に不具合があれば、再度、改正するものであり、様子を見なければいけないことを、連邦議会法案合同委員会の委員の一人が語った。
 「国民が、納税してはじめて、国家のために仕事をすることができる。国家は発展する。国民が税を納付しないならば、国はどうにも立ち行かない。だから、納税によって国家を維持制御しているのだ」とミャッニャンソー博士は言う。
 政府と国民の間を取り結ぶ堅固な税制度によって、ひとりひとりがサポートし合う、文化的で、発展した国家に到達できると、同氏は語った。
 政府の人間が自らの所有財産を公表する勇気もまだない状況で、国民が協力的になるはずがないことを、アメリカ合衆国で暮らすチョートゥーゾー監督が本誌に語った。
 政府がより広く税を徴収する準備を進めているときに、チョートゥーゾー監督、ウー・チョーピョーウェーらのように「では何を還元してくれるというのか、政府の側は?」といった疑問も残ったままである。
 チョートゥーゾー監督は、以下のように考えを述べた。
 「武器で暴力的に徴収するというのでは税金ではない。盗みを働くと言う。それは上納金を巻き上げる、強奪、になる。このことを、今の政府は理解する必要がある。」


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翻訳者:松浦 宇史
記事ID:634