救済者のいないミャンマー人労働者70万人(10-23-7-1)

2014年06月23日付 The Voice 紙
 クーデターで政権をとったタイ軍政による、外国人不法労働者を逮捕し自国に送還するという特別プログラムのために、ミャンマー人労働者が不安と恐怖に怯えている。
 不法入国した外国人移住労働者、タイ国内で就労する証明書の無い労働者を、6月3日からタイ国軍と警察隊が合同で逮捕し始めた。
 それによりメーソット、チェンマイ、チェンライ、ラナウンなどミャンマー・タイ国境の町で、ミャンマー人労働者1万人近くが捕まったと、タイを拠点とする移住労働者人権ネットワーク(MWRN)議長ウー・アウンチョーが話した。
 「逮捕が続いているときには、不法移住労働者たちは、周囲に怯えるカラスのようにビクビクしながら身を潜めている」と同氏は状況を話した。
 ミャンマー人を含む不法外国人を逮捕し本国へ送還する特別プログラムは、70万近くにのぼるタイ在住の不法ミャンマー人労働者にとって、身の安全を直接揺るがす強硬措置だ。
 タイ政府の発表によれば、ミャンマー人労働者200万人余りいるうち、約35パーセントが不法労働者だという。
 2013年にマレーシアで暴力事件が起きたときには、ミャンマー人を含む不法外国人を逮捕する特別作戦「オペラシー」が2度行われ、ミャンマー人は恐怖に慄いた。その作戦でミャマー人2000人近くが逮捕された。
 ミャンマー人移住労働者問題は、改革に取り組んでいるミャンマー本国にとって、難題の一つである。
 タイの国軍最高司令官による6月17日の発表について、身分を証明する書類がある移住労働者を逮捕することはなく、パスポート、労働許可のない、あるいは定職なく証明書もない外国人を取り調べ、関係する国境に移送しているものであると、タイ在住のミャンマー人労働者に関わる大使館担当官、ウー・テインナインが述べた。
 「銃で発砲、威嚇するようなことは一切ない。労働者を不安がらせ、脅すようなこともしない。規則に則り、書類、文書が揃うよう、行うものだと述べている」と、タイ国軍司令官の発言を引用して、同氏が繰り返し説明した。
 発表があった翌日の6月18日、身分を証明する文書の有無に関わらず、両者に対する逮捕が止んだことが、タイ在住ミャンマー人の情報からわかった。
 国境に送られた者たちは、身分を示す正式な証明書を作成、タイへ再入国し就労しているとウー・テインナインは説明した。
 タイで人権侵害、人身売買が行われているとする国際社会からの批判、圧力を受け、それらの問題を解決するために、労働者の正確なリストを作成し、規定に則り、定められた労賃等の権利を雇用主が厳格に守るよう、不法滞在の外国人の調査にのりだしたものであると、タイ政府の発表について同氏は再度説明した。
 その発表によって、正式な証明書類を持っているミャンマー人労働者は、安堵することができるが、70万近くいる非合法のミャンマー人については、その身の安全を、早急に確保することが重要である。
 正式な証明書類がある者は、それら一式を所持している必要があり、書類の無い者もしくはそれが不十分な場合は、ミャンマー大使館に連絡して、予め整える必要があると、上述大使館担当官のウー・テインナインが述べた。
 タイ在住ミャンマー人労働者問題に取り組むウー・セインテーは、身分を証明する書類の無いミャンマー人が逮捕されないよう、両国政府が協議して早急に対処する必要があると憂慮する。
 証明書類のない人々を国境に移送する場合も、ミャンマー政府に公式に引き渡す必要があり、武装組織のもとに送られるという事態が起きないよう取計らう必要があると、タイ在住のミャンマー人らは述べた。
 以前、非合法のミャンマー人労働者が逮捕送還された時、武装組織に引き渡されたために、金銭の支払いによる身柄受け渡しを余儀なくされたという経緯もある。
 これについてはすぐにも対処できるが、70万近くいるミャンマー人労働者の身の安全、合法的ステイタスの確保については、長期的プログラムを策定し、取り組む必要があると、移住労働者問題に関わる活動家たちは述べる。
 タイに至った証明書類のないミャンマー人労働者の多くは国境地域にいるのであり、彼らの証明書類に関わる手続きを簡素化すべきであること、現在タイ政府とミャンマー政府が連携して取り組んでいる正式な証明書類入手プログラムは、ブローカー頼みとなっていることが、タイに至ったミャンマー人労働者からの情報で分かる。
 証明を入手するには、通常タイ通貨1050バーツでできるが、ブローカーを通じての場合5500から8500かかるので、国境にいるミャンマー人労働者は、正式な証明書類を作ることができないとウー・セインテーは述べた。
 新たな文民政府にとって、解決しなければならない課題が数多くある中で、移住労働者の問題は、国に収入をもたらす百万単位の国民の身の安全、権利の十全な確保、国家の尊厳にかかわる問題である。
 それでも、国外に400万余りいるミャンマー人移住労働者が不利益を被ることが無いよう、労賃報酬を得る権利等、外国に至ったミャンマー人労働者たちの為に、法律を速やかに制定する必要があると、ティンガジュン選挙区選出の国民議会代議員ウー・テインニュンが動議を提出したときに、それを支持したのは僅かに5人で議論の対象にもならなかった。
 ミャンマー人のメイドが虐待を受け、殺害され、あるいは紛争の最中にいるとき、相応しい身分が得られるよう、ウー・テインニュンが発議した結果である。
 主要2大政党である連邦団結発展党と国民民主連盟が、支持を表明しなかったというが、[その認識は]大いに問われるべきである。
 国家収入に寄与しているミャンマーの移住労働者の将来、安心できる暮らし、合法的な身分、諸外国の労働者と同等の権利を確保するため、ミャンマー政府が誠意と良心に基づき、厳正に対応する必要があるとMWRN議長のウー・アウンチョーは要求している。
 タイに至った証明書の無い70万人余りの問題に、現在アセアン議長の席に着いているミャンマー政府が、どのように取り組んでゆくのか、引き続き注視しなければならない。

アウンミントゥン


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翻訳者:原田正美
記事ID:871