(Article) 夢から現実となったティラワ

2015年09月29日付 The Voice 紙
「今この瞬間、我々の夢は現実のものになった」ティラワ経済特区Aゾーンの開所式で、ウー・ニャントゥン副大統領はこのように述べた。
 ミャンマー初の経済特区となるティラワ経済特区は、国内に今後建設されるであろう他の経済特区にとって最適な見本となるもので、日本政府と日本企業の協力により、建設開始から2年で今のように運営可能となったと副大統領は述べた。
 ミャンマーでは3つの経済特区が建設中であり、中でもティラワ経済特区はミャンマー・日本両政府と民間企業が協力して実現させたものである。それらの経済特区は、国の経済を動かす大きな3つのエンジンのようなものであると政府の担当者らはよく口にする。
 ミャンマーにおける投資、貿易、工業における原則が国際的な基準を満たすようにする必要があり、ティラワ経済特区が最適な見本となるよう取り組んでいるとした上で、ティラワ経済特区管理委員会の委員長であるウー・セッアウンは、「我々は皆、変化していかねばならない。これは国の経済のパラダイム・シフトだ」と力強く述べた。
 ヤンゴン市から25キロメートル離れた場所、タニン(タンリン)とチャウタン郡の間に位置する約2400ヘクタール以上の敷地に、前政権のときから経済特区を建設するために尽力してきたが、資金力や海外からの援助がなかったため単なる計画に過ぎなかった。
 ところが、2012年4月のテインセイン大統領の日本外遊の際、その計画を実現するため両国政府間で覚書に署名がなされ、そこから三年以上の時を経て、ティラワ経済特区は誕生した。
 ティラワ経済特区全体の広さは2400ヘクタール(約5931エーカー)であり、現在運営しているAゾーンは396ヘクタール(約979エーカー)ある。更にAゾーンは3つに分けて建設されており、211ヘクタール(521エーカー)の広さのある第I期は本年8月に建設が完了し、第II期は150ヘクタールの敷地に建設中である。
 現在ティラワ経済特区に投資している国内外の企業は13か国、48社にのぼり、その内訳は日本企業23社、ミャンマーを含むアセアン諸国の企業15社、中国・香港・スウェーデン・アメリカ・韓国・台湾・オーストラリア各国からの企業10社である。
 事業許可を得た企業の中で最多は建設資材製造業(8社)であり、縫製業(7社)、運輸業(4社)、製薬業、自動車組立業、ITサービス業、鉱物採掘業などの製造業も含まれる。
 経済特区の主な特徴は、国の中にあるにも関わらず、国と関連を持たない独立した地区として運営していく点にあり、高水準の技術を使った製造業に事業許可を与えることにより、輸出の規模を増大させる狙いがある。
 海外への輸出品の種類および量がいずれも少ないミャンマーにとって、ティラワ経済特区には非常に大きな期待が寄せられている。
 「経済特区は、投資と貿易を拡大させるだけでなく、我々が期待を寄せている以上のものをもたらしてくれるものだ」と副大統領は述べた。 
 経済特区は、普通の工業団地とは異なり対外輸出を優先する区域であり、関税の免除、貿易に関する手続きを一か所で済ませられるワンストップサービを行うことができる。
 高水準の技術を使う事業の投資により、熟練した労働者が多くなり、雇用の機会が多く創出されるだろうと、ミャンマーティラワSEZホールディング株式会社(MTSH)の会長ウー・ウィンアウンは述べた。
 現在、ティラワ経済特区Aゾーンの建設事業で2100人を超える労働者が職を得ており、今後製造業が操業を開始するときには4万人もの雇用が創出され、2018年には更に32000人以上の労働者が職を得られる旨が、MJティラワデベロップメント社(MJTD)によって分かった。
 ティラワ経済特区の建設状況や投資状況は予想していたよりも良好であるとして、住友商事代表取締役社長の中村邦晴氏は、「他のアセアン諸国にある経済特区と比べると、驚くようなスピードで建設が進んでいるのを目にした」と述べた。
 ティラワ経済特区の建設は2013年12月からはじまり、ミャンマー政府とMTSHが51
パーセント、日本政府(JICA)と日本の複数企業が49パーセント出資し建設してきた。経済特区全体の建設のために10億米ドルほどの資金が必要で、電力、上水道、アクセス道路などの必要なインフラを、200億円の円借款で整備しているところである。
 現在引き続き建設中のBゾーンは2016年半ばに完成予定で、Aゾーンについては投資向けの土地のリース率は約80パーセントにのぼっている。(訳者注:BゾーンはAゾーン内の第II期の間違いと思われる。Bゾーンは建設の覚書の段階で建設開始には至っていない。)
 中村氏は、「2016年3月に契約を決めなければならない会社が10社ほどある。現時点でリース契約を結んでいるのは220ヘクタール、80パーセント程が契約し販売済みだ」と説明した。
 経済特区では製造業分野のレベルアップや対外輸出優先のため、国内の製造業分野は発展するものの、経済特区1つだけではまだ充分でないと一部の学者は分析している。
 「1つの経済特区だけで国の経済を引っ張っていける訳ではない。ここ1か所では不充分だ。国内の他の工業団地と蜘蛛の巣のようにつなぎ合わせて事業を展開してはじめて、国内製造業分野を発展させられるだろう」と、経済政策の専門家アウンコーコー博士は述べた。
 経済特区というものが出てくる前から、工業分野の発展のために工業団地が運営されており、ミャンマー全国で18の工業団地と、規模拡大中の7か所の工業団地を建設中である。
 それらの中でフラインターヤー工業団地のみ全域で操業できており、それ以外の工業団地では電力、汚水処理設備、道路交通といったインフラが整っておらず、資金も乏しいため、十分に運営可能な状況に至っていない。
 更に考えなければならないのは、自然環境の破壊についてである。
 国内の一部の工業団地では、二酸化炭素の排出量が非常に多く、このままだと自然環境に悪影響を及ぼし、国の経済に一層の打撃を与える可能性があるとアウンコーコー博士は指摘する。
 ウー・セッアウン(ティラワ経済特区管理委員会委員長)は、ティラワ経済特区の建設、運営による環境破壊が少なくなるよう、国際的な基準に則って実行していると約束している。
 ミャンマー経済発展のための効果的な第一歩であるが、充分に注意を払わなければならない点についてアウンコーコー博士が言及した。
 「国内の一部の工業団地で、二酸化炭素の排出量が非常に多いのを目にしている。二酸化炭素の排出を抑えられなければ、それらの工業団地の長期的な成功は望めない。破壊された自然環境を再び保護しなければならない費用は一層かさむかも知れない。そのような事態にならないよう、厳しく統制することも必要だ」と、同博士が注意を促した。
 夢から現実となったティラワから毒ガスが出てこないよう監視するべきである一方で、経済発展への有効な足がかりを歓迎すべきである。

スィッニェインドゥ


同じジャンルの記事を見る


翻訳者:大橋 響
記事ID:1864