(社説)民間日刊紙の本音(Daily Vol-6/No-235, 1月10日)

2019年01月10日付 The Voice 紙
 スマートフォンとタブレットを通じ、ソーシャルネットワークメディアを容易に使える昨今、印刷メディアの分野において最も大きな挑戦に直面せざるを得ないだけでなく、今後も生き残れるかとすら問わねばならない状況に世界規模で至っているに違いない。印刷された文字・言葉よりも、デジタルの文字・言葉の方が多くの人に馴染みがある状態となってきていること、多くの人がニュースと他の様々な事柄をデジタルの言葉のみならず動画ファイル、生放送するライブストリームを通じて視聴できることにより、印刷メディアの先行きが不透明になって来ている。ソーシャルメディア時代により明確になっているのは、情報(ニュース)というものは全ての人が無料で読んだり知ったりする権利のあるものとなってしまったということだ。

 そのことについて、ニュースメディア、特に新聞は役割を終えたのか、言い換えれば「新聞は最終章に至ったのか」ということが問題になってくる。いきなりだが少し考えてみるとすれば、読者(国民)はメディアとの接触がないというようなことになるが、本当は、多くの人にとってメディアと以前より接触する機会が得られるようになったので、ニュースメディアの分野が重要でないというような意味になってしまっただけだ。しかし、この時代の問題というのは、一方でソーシャルネットワーク上で誰もが記者やニュースカメラマンのようになり、ニュースの流れや広がりが非常に勢いのある状況であるが、他方ではニュースの真偽を区別するのが難しくなっていることである。

 ここで言いたいのは、ソーシャルネットワークというのはニュースを拡散させるために非常に効果的だが、ニュースの真偽を区別するためにも、出来事を客観的に調査・批判し指摘する場合でも、十分責任を負える、以前からの信頼あるメディアの分野は重要な状況の中で引き続き存在し続けているのである。その通りだ。新聞の存続が困難なのは否定できない問題だ。アメリカに拠点を置くニューヨークタイムズは、1ヶ月約5ドルでオンライン購読権を販売している。一部の有力紙は購読権を無料で提供し、メディア職員(ジャーナリスト)が暮らしていけるよう寄付金のような形で気持ちだけでも払ってほしいとお願いしているのを目にすることができる。フランスでは、政府が自身を客観的に、最も効果的に批評できる新聞に補助金を与えるよう計画していると明らかになった。スマートフォンやインターネット、コンピューターをはじめとするテクノロジーの時代に、ほとんどすべてのニュースメディアが困難に直面している。

 ミャンマーではというと、ずいぶん多くの民間紙の存続が困難になっている。2013年に民間紙の発行許可が出た際初めて発行した、我々The Voice Dailyもその一つだ。どれほどの規模で苦しいかというと、本紙の宅配制度をも一時中止する状況に至っているように、悲しくも一部の職員を削減しなければならなかった。我々新聞社の大物編集者たちは、ニュースについて・記事についてのみならず、新聞社が今後生き延びられる方法、言い換えるとニュースペーパー・ビジネスをも絶えず考慮し、仕事を2倍やらなければならない。ニュース編集者と記者を含め新聞社の重要な職員皆の団結と根気によってのみ、我々新聞社が崩壊してしまう危機からやっとのことで抜け出すのである。

 チェーモン・ウー・タウン先生(注)らの時代の偉大な新聞記者たちはどのような困難に直面したか詳細はわからないが、この今の時代を彼らに見せたいものだ。それがどうであれ、我々新聞社が困窮している時代に、自分の側からできるだけ助けるよう、知力・体力でもって努力してくれたすべての人々を、本紙としては特に認め感謝するとともに、困難な時代からすっかり抜け出せるよう精一杯努力していくことをここで述べるものである。

編集者 (2019年1月9日)

訳者注:チェーモン・ウー・タウン(1926-2008)はミャンマーの著名な作家、ジャーナリスト。1957年に民間日刊紙「チェーモン(英語でThe Mirror)」を創刊したが、国営化政策により、ほかの新聞社とともに1964年に国営化された。政府批判で投獄されたあと、アメリカに渡り、エッセイや本を通じて軍政批判を続けた。


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翻訳者:笹森 奎穂
記事ID:4697