クーデター以前から軍は瓦解していると軍離脱者語る

2021年04月11日付 その他 - ミャンマーナウ 紙

軍事独裁制反対の「春の革命」で、民間人を残酷に虐殺したクーデター軍や警察への批判の一つは、「軍は瓦解している」であった。武力を頼りに、市民に対して上から押さえつけているが、軍隊は、その組織のありよう、さらにその精神性も含めて、かなり前から瓦解していると語るのは、西側メディアから「ミャンマーのウェストポイント(米国陸軍士官学校)」と呼ばれるメイミョー陸軍士官学校を卒業した将校である。

トゥンミャッアウン大尉(30歳)は陸軍士官学校52期卒業生である。有名な第77軽歩兵旅団(*1)の小隊長を務める大尉は、ヤンゴンの平和的なデモ参加者への発砲に際して、その小隊を率いた人間である。ターケータ区にあるデモ基地を暴力的に切り崩す際に実弾を用いていたのを見て、トゥンミャッアウン大尉はこれまで愛してやまなかった軍隊を去った。3月の初旬に国家公務員が職務を放棄する市民的不服従運動(CDM)に加わった。

デモ参加者たちの「軍隊は瓦解している」というシュピレヒコールに対して、将校や兵士たちは怒りの矛先を向けていたが、15年近く彼が勤務してきた軍隊は、実際には内部で、腐敗、上に媚び下を威圧する慣例、人身売買のような兵士採用システムが横行しているという。

「実際、軍は瓦解している。それも今に始まったことではない。もともと壊滅状態なのだ。軍は長い間独裁制度を貫いてきた。国民は5年間とにかく民主主義を味わったが、軍はそれに預かっていない」と彼は本紙に語った。

トゥンミャッアウン大尉は、軍に加わった多くの将校のほとんどは、富への欲望をもって入隊したものばかりで、昇進のためには何でもする人間ばかりだったと述べた。

「上の地位を得るためである。いわば君主制のようなものだ。上の階級に上がるためには何でもするという気持ちだ。上司を恐れているし、自ら上の立場になってこそ、満足する」と彼は述べた。

政治囚支援協会(AAPP)の発表では、2月1日の軍事クーデターから4月8日現在まで、600人以上の民間人が軍評議会の銃撃で殺害されている。
罪のない民間人に対する不当かつ残忍な殺害、不当な方法で権力を用いる軍評議会の下で任務につくことを拒否し、多くの警察官がCDMを行ったように、軍から離れた軍将校も存在する。『ニューヨークタイムズ』誌ではトゥンミャッアウン大尉とともに4名が軍を去りCDMを行ったと報告している。

クーデターを起こした軍評議会の指導者たちは、今日、それぞれの地域の駐屯部隊と会い、軍隊内の協調、団結を呼びかけていることがわかった。先日、クーデターの指導者ミンアウンフライン上級大将がメイッティーラの駐屯地を訪問したように、4月8日陸軍ナンバー・ツー、軍評議会副議長のソーウィン上級中尉がタウンジー内の各駐屯地で、将校や兵士、その家族に会った。

その会見でソーウィン上級中尉は、「軍人、将校、その家族はソーシャルメディア上で見られる誤った呼びかけに注意すること、よくよく注意して暮らすこと、軍隊内の団結を水も漏らさぬよう構築すること」と言及したとのことである。

軍評議会の傘下にある軍と警察の非人道的残虐行為は引き続き見られる。軍、警察の合同チームがデモ参加者を暴力的に弾圧したのち、金、紙幣、電話など値の張る品物などを強奪していることが、ソーシャルメディアに投稿されているビデオ映像でみることができる。

このような軍の弾圧や略奪は、この「春の革命」で市民らは初めて目撃することとなった。しかし、少数民族地域の住民は、ビルマ国軍の粗暴さ、残忍さに何十年も向き合ってきたのだ。国内でも最も開発が出遅れた山岳地帯の1つチン州で生まれ育ったトゥンアウンミャッ大尉は6年生のときに孤児になった。以前の独裁者であるタンシュエ上級将軍が設立した国境地帯少数民族開発学校(全寮制)で育った。

ここで高校卒業し、陸軍士官学校に通った。陸軍士官学校を卒業し、彼は、軍の兵営や前線ばかりを回ってきたのである。国軍の兵士たちは、市民の私財を自分たちの得るべき権利のように理解して略奪しており、それはあたかも各省庁の公務員が賄賂を取る慣習と同様、そうした略奪をある種の副業と理解していることと、彼は述べる。

毎年多数の士官候補生が卒業するが、士官の下につく兵士の部隊を作ることのほうが難しく、軍隊内の上のレベルでは見て見ぬふりをしてきたが、ある種の人身売買のようになっていたという。国軍兵士の昇進には、軍事能力、管理能力、組織力などが昇進の要となっており、小隊を作ることは、最も手っ取り早く昇進できる条件であったと軍の状況を説明した。

「こうして、少佐となる。さらに大隊長になるためには新兵を何名ほど集めねばならない。そんな状況は、時間とともに軍を堕落させる。自分自身で募集せず、金の力で、人に集めさせたりする。そんな奴隷制のような人身売買制度にまで至ったのだ」と彼は付け加えた。

ミャンマー軍は国民の防御や保護の代わりに、日々残酷に銃撃しており、国軍改革は不可欠であると、選挙で選出された国会議員で構成された連邦議会代表委員会(CRPH)の報道官ウー・イェムンこと、マウン・ティンティッは述べた。

「我々国民を、そして、フェデラル制や民主主義を守ってくれる軍隊が、私たちの国家に可能な限り早く現れることが必要である。そのためには、我々は全面的に尽力するのである」と彼は述べた。

トゥンミャットアウン大尉は、長年過ごしてきた軍隊を愛しているが、クーデターや民間人の虐殺には強く反対し、このクーデター軍に立ち向かえるフェデラル軍を樹立する必要があるとも述べた。

「不当に全権を掌握した軍隊に対して攻撃を返すという場合、非武装の国民とともに闘うことは到底不可能である。成功するとも思えないので、フェデラル(連邦)軍がどうしても必要になるだろう」と彼は付け加えた。ネーウィン将軍、タンシュエ上級大将、ミンアウンフライン上級大将など、一部の独裁者が軍隊をプライベート化し、市民を弾圧拷問殺害し、自らの利益のみを追求していることを指摘したのは、トゥンミャッアウン大尉が最初ではない。

国家が支給している給料だけで、国軍の指導者たちはどうやってもこれほど裕福になるはずはないと批判したコー・ネィミョーズィン元大尉も数多くの容疑で逮捕され投獄された。今回のクーデター指導者ミンアウンフライン上級大将の子息が、巨万の投資を行う企業を所有していることは、ミャンマーナウは2019年にコラムで取り上げた。

注1 第77軽歩兵師団は、バゴーに駐屯する師団。

Myanmar Now 2021/4/9


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翻訳者:ビルマ語メディア翻訳班(TK)
記事ID:5849