偽造紙幣と偽情報

2022年03月19日付 その他 - ミッズィマ 紙

 ソーシャルメディアのプラットフォームの一つであるフェイスブックにおいてよく言われている偽造紙幣売買の件、国民の間に偽造紙幣が広がっている件、中央銀行のコメントのほか軍評議会の主義思想を広めるチャンネルから拡散し始めた偽造紙幣に関する偽情報の件を、ミッズィマが収集しまとめた。

偽造紙幣を販売するページとの関連
 偽造紙幣を販売する、と自ら広告しているフェイスブックのページは2021年11月から広まった。その後、タイの宝くじである2桁、3桁のナンバーズ(翻訳者注:違法なものも含まれる)のページ、貸金業、個人名であるウー・タインチョー、ドー・モーモーカインなどの名前のページ、ウー・テインピョー貸金業者などの名前のページで使われ始め、2022年2月、3月になると偽造紙幣売買というようにそれぞれが名前を変えて引き続き使われているページが多くなっている。
 ページにおいては偽造紙幣売買用の連絡電話番号が記載されているページがあり、一部のページではフェイスブックのメッセンジャーから連絡するように記載されている。それらのページが使っている紙幣製造の写真、包装の写真においては一部が同じものであることがわかる。
 それらのページの電話番号の中の6つにミッズィマが連絡したところ、2つの番号だけ連絡することができ、残りの番号は連絡がつかなかった。偽造紙幣拡散のことを尋ねたところ、本物の紙幣3万チャットにつき偽造紙幣10万チャット分を入手できるとし、長距離バス・トラックターミナルから送付すること、どのルートで偽造紙幣が到着するかは答えられないと拒否した。
 この偽造紙幣売買所に連絡し購入しようとしたところ、最低3万チャットから購入でき、購入したお金の10倍儲かるという誘いが返ってくることや、本物の紙幣35000チャットで偽札30万チャットを入手できるという話もあった。しかし、彼らが送ってきた電話番号へWaveモバイル決済サービスでの送金が到着してから商品(偽造紙幣)を送るとの答えであったことが、購入を試みたある人物から知ることができた。
 そのほか、「紙幣配布売買所」というページの連絡先電話番号は「ミャセインヤウン小規模貸金業」というページに出ている電話番号と同じであることもわかった。そのページでは月利2%で20万チャットから1000万チャットまでお金を貸している。お金を借りたという個人の身分証明書と住民票も一緒に掲載している。同様の情報を利用したほかの貸金業者の名前のページ「シュエエインドゥ大規模貸金業」「オンラインミャンマー貸金サービス」「ミャンマー国家指導のミャセインヤウン貸金業」「アウンタマーディ貸金業」「ミャヤダナー貸金業」などのページもお金を貸したことが記載されている。
 しかし、先の貸金業のページにミッズィマが連絡を取ると、お金を借りるために身分証明書、名前、住所、住民票などの個人情報を要求し、100万チャット借りる場合、サービス料として5万チャットかかること、サービス料を事前に送金したのちにお金を貸すと述べている。

国民の間に広がっている偽造紙幣
 このように偽造紙幣売買が広がってきたあと、1月21日にキントゥザーというフェイスブックアカウントにはその店舗の従業員が騙されたと書かれており、5000チャット札の偽物と本物を比較し、相違点を明らかにしていた。手指消毒液を紙幣2枚にかけたあと、偽造紙幣のほうは色が落ちてきたビデオも示されていた。このことをシェアして広めた人は36000人以上おり、コピーして拡散した人も多くいた。このアカウント所有者にミッズィマが質問するために連絡をしたが返信はなかった。
 銀行口座の自分のお金を、手数料を支払って現金化する際(翻訳者注:本文最後参照)に1万チャット札の束の間に偽造紙幣が挟まってきたという人から、その出来事について聞いたところ「現金を渡して送金しようと思い、送金してくれるところに出向いて紙幣を数える機械で数えて初めて、偽物だということが分かった。1枚ずつ見ればわかる。各束の間に4、5枚挟まって入っていたのでわからなかった。通常の紙幣よりも厚い。A4サイズのコピー用紙のような感じだ。用紙に印刷してあり少しだけ厚い。(偽造防止用の)棒線は入っていない」との答えであった。
 フラインターヤー区に住む雑貨店店主によれば、彼女の店に買い物に来た人から5000チャット札の偽物がみつかり、通常より厚い紙幣だったため取り替えてもらったことが分かった。
 さらに、フラインターヤー・ミークエッ市場で飲料水を販売している人から、1万チャット札の偽物を見つけた時の様子を聞くと「棒線は入っていない。コピーのような感じだった。2枚出されたが、番号も同じだった。偽札の紙質は本物とはちがい、つるつるしていた。二度と使うな、危ないぞと言って返した。2、3回遭遇したことがある」と答えた。

中央銀行の説明
 このようにミャンマー紙幣の偽物が広まっているという情報に関し、3月16日にVOA(ボイスオブアメリカ)ビルマ語ニュースが中央銀行の副総裁ウー・ウィントーに取材しており、副総裁は偽札拡散の情報は正しくないと否定した。副総裁は「中央銀行のシンボルマークが(ニュースの中で)使用されており、中央銀行が(偽造紙幣拡散を管理できないと)発表したという意味にとれるので、ウェブサイト上で発表している人を内務省経由で捜査し処分してもらうだろう」と答えた。

軍評議会の主義思想を広めるチャンネルからの拡散
 このニュースが明らかになった日に、テレグラム(翻訳者注:メッセージをやり取りするアプリのひとつ)の軍評議会の思想を広めるチャンネルのひとつであり購読者が12000人いる「フマインウェ」で「暴力的NUG(国民統一政府)が偽造紙幣を発行している」と初めて記載され拡散された。
 このチャンネルは2022年(翻訳者注:2021年の間違いと思われる)12月3日にはじめて作成されており、ここではNLD(国民民主連盟)、CRPH(連邦議会代表委員会)、NUGを非難し、貶め、からかいあざ笑うほか、軍評議会の兵士を支持する書き方をし、急進的愛国者の活動を広めている。
 このチャンネルでは「NLDはゲリラ戦に入り苦しんでいるPDF(国民防衛部隊)を支援するための資金が十分にないほか、寄付金もあまり集まらないため、偽造紙幣を製造しミャンマー通貨を崩壊させている。この偽のお金を製造している場所はKNLA(カレン民族解放軍)第5旅団管轄地域にあり、偽造紙幣を連続して製造している」と記述されている。
 同様な記述は、テレグラムの「ポースィー軍曹」「バニュン」「リンネー」「コーカン(#KK)」などにもみられる。フェイスブックでも「コーミョー」「ティッサーシン」「バインナウン」「ミンスィッカ」などのアカウントが最も早い時期に拡散しており、シェアする人やコピーして拡散する人が多く存在した。

偽情報の拡散に関し第5旅団責任者への取材
 第5旅団の報道官パドーミンミンに対し、このような偽造紙幣製造の有無、および第5旅団管轄地域内の金銭使用について尋ねたところ「製造はしていない。(カレン)州内にいる国民との物の売買がある場合、タイバーツを使用することが多い。物流、販売、事業運営などでタイバーツの使用が70%を超えている。軍評議会側は自分たちと戦っている敵軍に対していろいろ非難をするだろう。それに対して特別話すことはない」と答えた。

ミッズィマ 2022年3月19日

翻訳者注:クーデター後しばらくしてから、情報統制のためにインターネットを遮断したのでモバイル決済などにも大きく影響した。インターネット遮断はすぐに解除されたが、モバイル決済への不安から銀行口座にある預金を引き出して現金化しようとする人が急増し、どの銀行でも引き出し制限が続いている。その結果、現金が手元にある人(場合によっては銀行関係者)は、自分の口座に現金化したい額を送金してもらったうえで、手数料を引いて手元の現金を渡すという新しいビジネスを始めており、政府も黙認している。


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翻訳者:ビルマ語メディア翻訳班(SA)
記事ID:6287