建前に隠された軍指導者の策謀

2022年04月23日付 その他 - バーマアソシエーテッドプレス 紙
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軍指導者ミンアウンフライン上級大将は、現在の内戦に対して対話と解決のための出発点をつくった。彼は、EAOs(武装勢力)と会って話し合う、一組織につき、指導者を含む3名の出席者を5月9日までに名簿を提出するよう、述べた。彼は、参加者と自ら会見するとも言った。
他の組織からまだ声を上げていなかったが、その前にKNU(カレン民族同盟)の報道官パドー・ソードーニ―(訳注:パドーは大臣など政治的に重要な地位にいる人物に付ける称号)から声明が一つ届いた。要約すると彼の論点は4つである。
本記事は、2部に分けて提示するもので、一つは建前に隠された策謀が軍指導者にはあるというもの。もうひとつはパドー・ソードーニ―の要求事項を検討してみることである。
まずパドー・ソードーニ―が述べた4点を一つずつ検討してみる。

(1)軍は政治から撤退すること

これは、ミャンマーの政治家が常に要求してきた点である。アウンサン将軍が率いたビルマ独立義勇(BIA)、ビルマ防衛軍(BDA)といったタッマドー(ここでは敬意の意味が入る「タッマドー(国軍)」という語彙を使う。単に軍指導者の配下にある軍隊を指す場合は「シッタッ(軍)」という語彙を用いる)は国民の支持を得て独立を果たした。
独立後、政治家たちの内部分裂を経て内戦が勃発した。軍はこうした内戦を鎮圧せねばならなかった。それ以降軍の役割は、ミャンマー政治のなかで大きくなっていった。軍の権力の及ぶ範囲が広くなり、役割も大きくなってきたことで、軍はもはや政治から撤退しなくなった。その後、軍事独裁者が現われ、それは軍司令官ミンアウンフライン上級大将の時代まで続いている。
憲法でも軍に関連する章が多く定められている。憲法に基づき、軍は議会で議席数の25%を占めている。最高司令官とは武装化した軍全体の長を示している。

内務、防衛、国境省大臣を任命する際に、軍の最高司令官の意向を仰ぐ必要がある。副大統領3人の内1人は軍が推薦する人間である。この点の変更には国会議員75%以上の支持が必要である。その次に国民投票を行う必要がある。これは極めて困難である。要するに、独立前と独立時代前期には、国軍はProblem Solver(問題を解決する人)であった。現在はというと、彼ら自身がProblem(問題)である。国家が軍の問題を解決する必要がある。そのため国から軍を取り去る必要がある。述べてきた点を検討すると、パドー・ソードーニーの要求事項は歓迎すべきであろう。

(2)移行期正義の確立

和平協議でこの件についても話し合ったが、軍側は今後の和平交渉を続ける上で妨げになるという表現により、拒否した。国民が味わわなければならない苦しみに対して、正義の確立がいかに重要かということは言うまでもない。

ミャンマーの歴史の中で、軍の指導者は国民に対して犯した越権行為に対して、その正当性も示せていない。謝罪する気もない。だからこそ、2008年憲法の中に、(これまでの指導者に対して)遡及して罪を問うことはできないという条文が見出せることがわかる。この点は軍の指導者たちの逃げ道にもなっている。

移行期の正義の確立に関して、何もなされなければ、和解には程遠い。両者の信頼を得ることができていない。そして信頼なくして和平はない。移行期の正義の確立を行うため、軍の指導者たちは責任を持つことが必要だ。パドー・ソードーニーはこの点も求めた。

(3)フェデラル民主主義を構築するという公式宣言と(4)和平プロセスにおける国際的な監視。
 この二つのことは重要だが新しい要求事項ではない。新しくないにも関わらず、なぜ要求するのだろうか。まだ(フェデラル民主主義が)手にできていないから、そして、(和平プロセスに)信頼がないため要求するのだ。以前の平和交渉で約束が反故にされたため、要求するのだと言わざるをえない。
 
 パドー・ソードーニ―の要求事項は国家と国民に必須の事柄であり、そのことは記録すべきであろう。しかしその要求は満たされるのか。軍指導者の考えがどのようなものであるか考える必要がある。つまり、パドーソードーニーは軍指導者が権力を放棄することを要求しているが、それは実現可能であるはずもない。現時点では、軍隊を政治から撤退させることはできない。だからこそ軍指導者がゲームの1つ(訳注:ゲームとは執筆者の考えで、少数民族との戦闘が作り出されたものだと指摘している)を作り出したのである。
 
 一方で軍隊は、様々な国民防衛部隊、民族武装組織との戦闘により相当の損害を得ている。最近、NUGは領土の50%を実効支配できるとの声明を発表した。それほどの比率ではないにせよ、相当範囲をすでに実際に支配しているというのは事実である。国民も、独裁政権を嫌っており、精力的に支援している。その結果、ふんだんとはいえぬまでも、武器を自分たちで生産しはじめている。

そのため、軍隊は地上戦で相当の被害を得ている。
あと1点は、間もなく雨季が始まるため、空軍が思うほど攻撃ができない。空軍が参与できないと、軍指導者側の陸軍も張子の虎である。
軍隊には、名高い共産主義者やカレン民族同盟(KNU)らと命がけで戦った、敵も敬意を表するような、立派な指揮者ももういない。
その後は軍隊は高性能の武器を所有するようになったが、ラウカインの戦い、アラカン軍(AA)との戦闘をみると、その戦闘能力を算定することが出来る。
国民防衛隊(PDF)の若者たちは信念のため戦っているのであり、(軍は)軍隊の軍指導者の願望が何が何だかわからぬまま戦闘しており、士気・勢力に差がある。民衆の支持も異なっている。こうした差異は、戦闘において軍を損なうものである。従って、少数民族武装勢力(EAOs)は戦いに関与せぬよう、言い換えれば、カレン民族同盟(KNU)、アラカン軍(AA)、カチン独立軍(KIA)と国民防衛隊(PDF)から挟み撃ちされ、双方から攻撃されぬよう、軍指導者は交渉の場を設けようという提案をしたにすぎないのである。
交渉に成功した場合、背後の憂いなく、新しく結成された国民防衛隊(PDF)のみに専念し制圧することができる。アラカン軍(AA)結成当時も、まずは軍側は和平交渉という言葉で抑制した。戦って抑え込めない状況になってようやく、平等に扱うようになったといったことを、ここで再度思い起こす必要がある。。
軍指導者の会議招待を、一部の少数民族武装勢力(EAOs)は受け入れることもあろう。例えば依存先を探しているシャン州和解協議会(RCSS)、クンオッカ大佐のパオ民族独立機構(PNLO)のようなグループである。
 カレン民族同盟(KNU)、カチン独立軍(KIA)といった勢力の強い集団は、軍と組む可能性は低い。軍指揮者は自分で自分のカードを切る2023年の選挙を実施し、タンシュエの足跡をたどりたいと考えている。したがって、その移行期にEAOsと和平交渉という言葉で宥和し戦線が広がらないようにコントロールしたいという意思に過ぎない。
いずれにせよ、現在は、軍にとってあらゆる戦局に備える時期である。政府として国内外の承認はない。国民も支持していない。民族武装勢力との戦闘もある。国民防衛部隊も勇敢に軍に抵抗している。国も崩壊しつつある経済も悪化の一途をたどっている。
こうした多方面の圧力下で和平交渉を行うという軍指導者の言葉は、まやかしの何物でもない。和平交渉を国家建設の為ではなく国家戦略の一つとして利用しているに過ぎない。。多方面からの圧力のなかで息継ぎができるよう、和平交渉を行うといっているに過ぎないということは火を見るより明らかだ。


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翻訳者:M.T.T, H.O, M.S, M.S, M.I, M.N
記事ID:6336