死んだ副大隊長の携帯電話から見えるテーボーボー駐屯地の状況

2022年05月18日付 その他 - ザボイスオブスプリング 紙
特別記事

今年5月18日にテーボーボー基地を占領した際、軍評議会の軍人の遺骸約5体と共に携帯電話一つをカレン民族解放軍(KNLA)の合同部隊が押収した。
特筆すべきは、血の付いた前記の携帯電話には画面ロックがかけられていなかったことである。
カレン民族同盟(KNU)の担当兵士達が情報を得るためにその携帯電話を調べた。
携帯電話の持ち主の死ぬ数時間前に、同じく前線にいる戦友と互いにやりとりしていたことがわかる。
「今夜は今のところ大丈夫だ。まだ攻撃はされていない」。
他の戦地の友人からの、「そっちの具合はどうだ」という質問への返答であった。
「そうか、気をつけて、こっちもさんざんだよ」。
連絡相手の友達も彼の直面している最前線の状況について漏らしている。

さんざんだという言葉から状況が良くないことは明らかである。
「こちらも全てがめちゃくちゃだ。援軍も無ければ後方支援も無い。弾薬補給もできないので、いつまでこの調子なのだろうか」とこちら側で彼が直面しているひどい戦況について本音を語った。

こうして胸の内を明かしている携帯電話の持ち主は副大隊長アウンニェインチャン少佐である。
いつまでこの調子なのかという彼の疑惑や不安、さらに、間も無く亡くなる彼のアウンニェインチャン少佐の遺骸が、軍の崩壊を表しているようだった。

軍の組織が崩壊している。戦闘能力もない。重要なのは、前線を支える人間がいない。。ある限りのわずかな舞台にすら、後方から支援を送れないということが明らかだ。見せかけの勢いがあるだけだとCDMをしている大尉の一人が本誌に述べた。

月給も一銭も得られない。前線に来ているので別途手当が払われるということもない。残りの備蓄を飢えないように食べて、駐屯地で待っていなければならない。必要な武器弾薬の補給もなかったと捕虜となった兵士が言った。自分のことは自分で責任を取るという意味だと匿名希望のコーパラー戦に参加した軍の1人が本紙に語った。

前線で国民と敵対し無意味に死を選ぶよりも、国民側に移り、気高く自分の命を自分で守ることのできる機会を手に入れる権利は、テロリスト軍評議会の前線にいる兵士たちには常にあるのだ。
「底辺の兵士たちをこうして死に至らしめる。彼らにとっては何の価値もない。無理難題を言う、抑圧する、これだけだ。そのため、最前線の軍評議会の兵士たちはもう一度考えてみるべきだ。このように無意味な死を選ぶのか。死んでも国民が自分たちの死体を見て喜んでいるのだ。自分の命を自分で守る権利がある。時間もまだある。CDMを行い、新たな生活をを樹立することが出来る。尊厳を持って生きていくことが出来る。このことも考えていただきたい」とCDMに参加している大尉が本誌へ続けて述べた。コーパラー戦における前掲のテーボーボーでの奪回戦で、軍評議会の部隊にいた5人が死亡し、6人が捕虜となった。他の10人以上の軍評議会の兵士たちは恐怖からタイへ、命からがら逃亡した。

副大隊長であるアウンニェインチャン少佐は、自分のいる駐屯地から10マイルほど離れた所に、第44師団の配下にある大隊が1隊、駐屯していることをよく知っていた。戦闘中は10マイルほどしか離れていない所からの援護を最後まで心待ちにしていたのではないだろうか。このように援軍を待ちながら彼らが頼りに誇りに思っていた軍評議会の配下である御立派な軍隊(タッマドー)の真の意味合いを知ることとなり、命を終えることとなった。いつまでこのままにしておくのかと言って、死ぬ数時間前から友人に不安を漏らしたアウンニェインチャン少佐を含む5人の死体は、KNUの兵士が敵であるにも関わらず人間の尊厳に照らして丁寧に埋葬した。しかし、彼の死を国民の誰も悲しまない。誇りに思わない。心配もしない。

国民の村落や家が灰になるまで毎日火をつけ、集団殺戮を繰り返すような残酷な人たちが勤める軍評議会の旗の下で、今更後悔したり、(軍のために)亡くなった人々の遺体を、一般の国民はただ忌まわしく思うだけでだということは確かである。血に染まった副大隊長の携帯電話から得られた情報は多くはなかった。しかし、軍評議会は自分の軍の前線にいる兵士への配慮もなく、無慈悲に死に追いやるほど残酷であり、何も支援ができなくなるまでに部隊が壊滅しているということは、結論として見出せるだろう。


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翻訳者:M.T.T., K.K.M., K.Y.M., H.O.
記事ID:6378