彼女もまた社会の中の一人 メイクアップアーティスト、ハリヤ

2022年06月15日付 その他 紙

研修生に対し熱心に教えている、背中くらいまでのびるしなやかな髪をした標準的な体つきをしたこの人を、知らない人がもし見たら、一人の女性だと思うかもしれない。しかしこの人は、幼い頃から女性のように装うことが好きで、自分のことを女性であると考えているメイクアップアーティストのハリヤである。

実はハリヤは「男性」だが、心では自分のことを女性であると理解している。

自らのそうした性の在り様を理解しメイクの技術を学んでいた時、彼女の両親は本当にこれで大丈夫なのだろうかと考え、あまり応援したがらなかったのだと彼女は言う。

一方彼女は目標と信念を曲げず、なりたかったメイク専門家になるために粘り強く努力し学び続けてきたため「ハリヤ」という名前で有名になり、メイクアップアーティストとして一人前に働くことができるようになってきたと話す。

「両親も当初あまり応援したがらなかったが、私が努力を少しも絶やさず熱意を持ち続けたので、私の意志を受け入れ、応援するようになった」

ハリヤは、自分が今のように仕事も安定し落ち着いて生活できているのは、自分の両親が他人のいうことを鵜呑みにすることなく、自分たちの子供は何になりたいのか、そしてそれを実現できる可能性があるかどうかを検討し応援してくれたからで、彼らが私のことを頭ごなしに非難したり、疎外したりしていたら今のように落ち着いて生活するのは難しかっただろうと話した。

「父と母は、私が何になりたいか、またそれになれる可能性があるかどうか前もって検討して、私にとって必要なものを補ってくれた。そのように両親が私に寄り添ってくれなければ、今の状況に至ることはなかっただろう」

一部の親は性や愛の多様なあり方を理解せず、自分の子どもの信念と心に抱いた願望を受けとめ応援することをせず、親自身の願望のみ優先するのだとハリヤは語る。

そのような親たちのせいで、道を間違ってしまうLGBTの子どもたちは大勢いるため、両親の協力・支援は大変重要であるのだとハリヤは指摘しつつ語る。

「私も昔、自らの生き方について非難されることが何度もあった。私の両親が私の味方でなかったら、私は今のようになれたはずはない。今も若い子にしても、彼らの願望を親が受け入れないので、彼らは自らの性自認や自身のなりたい姿をカミングアウトする勇気を持てず、また自分たちの願望を表明する勇気も持てず、多くの人が道を誤ってしまう。そうあって欲しくない」

LGBTの人でも社会の一員であり、社会から排除してしまうのではなく彼らと連帯し、助け合いの心と暖かい心で彼らと関係を持つ必要性があるとハリヤは訴える。

LGBTの性自認への程遠い理解の下でLGBTの人々は生まれ育ったため、家族や周囲の人々から職場や地域に至るまでの人々に差別されるので、現在平等に扱われるための闘いをしているのだとハリヤは言う。

一部の人々は、彼らのような人々を社会にいてはいけない人であるかのようにみなし、男性が女性の服を着ることに対し、「マカウンデールー」(悪い人)、「アチャウマ」(訳註: 日本語の「オカマ」に似た意味)のような侮蔑的な言葉を現在に至るまで使用し、誹謗中傷を受けることが現在まで続いているとハリヤいう。

「自らのような人も社会の中の1人であるのに、なぜ侮蔑を受けるのか。侮蔑するよりも支援し手を差し伸べていただきたい。今存在する差別意識という色眼鏡で粗探しするのではなく、目の前のありのままの存在を受け入れてほしい」

社会において、LGBTの人々は現在に至るまで差別や中傷や非難に直面している最中である。

LGBTという用語はレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの略語であり、彼らは社会的には「性同一性障害者」という言葉、もしくは「同性愛者」という言葉を使って呼ばれる。

ハリヤは「一部の人たちは私が女性の着るような服を着ていることが気に食わないのか、道を通ると嫌味を言われ石を投げられ傷つけられたこともある。このような時、本当に心の底から悲しくなり落ち込んでしまう」と語った。

国際的にも、1990年以降から映画俳優や女優、歌手やスポーツ選手のように有名な人々が自身のありようなりたい姿をカミングアウトしはじめ、ようやく世界全体で多くの人々が自分自身をLGBTであると勇気を持って告白しはじめたと、LGBT活動家たちは語る。

LGBTであるという自らのあり方を受け入れることは恥じることや肩身の狭いことではなく誇るべき差異であるとみなすことができるよう、自分のあり方を受け入れ認めた上で自分自身を励ましていくのは難しい挑戦であるとLGBTの活動家は話す。

自分自身のあり方を受け入れ、なりたいものを固持し、努力しゆっくり正確にひたすら歩んでいけば著名で成功したメイクアップアーティストになれることを自ら証明できたとハリヤは語る。

「重要なのは自分が何をしたいのか自分自身が知ることだ。他人の自分に対する侮辱を真に受けないよう努めてきた。今は自分が活躍できるような状況になってきたので私の周りで自分を誹謗中傷する人はいない」

ハリヤは成熟していて落ち着いており、自身の信念や彼女の仕事に大変価値をおく人であると彼女の近所に住む女性は語る。

「私はハリヤが子供のころから成長を近くで見てきたのだが、辛抱強く穏やかである。彼女は自分自身がなりたいもの、興味のあることに対して何としてでも努力してきた。彼女のことで誰も精神的に迷惑を被っていない」と語った。

現在ではLGBTコミュニティーは受け入れられているが、彼らは他の人々と同じような平等な権利のため、法的保護を受けるためにこれまで戦いつづけている。

LGBTの人たちは仕事の機会を求めて戦っており、これはLGBTの人々の生活の安定のためにとても必要であると、自身もLGBTであり、かつ自らと同じ境遇にあるLGBTの人々が雇用の機会を得るための要求をしているアーカーゾーは指摘する。

「現在に至るまでLGBTの人たちは端に追いやられていると言えるだろう。なぜかというと、どの求人に応募してもLGBTたちは自動的に後回しにされていた。言い換えると、LGBTの人たちは働く能力はあるが、LGBTであるからと言って働く機会を逃していた。そのような仕組みで後回しにされていたのだ。職場でもLGBTを受入れ雇用し、彼らの能力にあった仕事を与えてほしい。そのような状況になっていき、差別が減少したらLGBTの人たちは徐々に権利を得るだろう」。

メイクアップアーティストのハリヤは、彼女のような同じ境遇の若者たちに手を差し伸べ、道を踏み外さないようにできるだけそばで協力し、社会の側も彼らを無視せずに手を差し伸べ温かい支援で接することを依頼した。

ハリヤのところでメイク技術を習っている、同じ境遇にあるLGBTの1人の若者は「ハリヤは辛抱強い。彼女の仕事のノウハウを隠さない。また、教えてくれる時も、一歩ずつ辛抱強く教えてくれた。わからないことがある時はいつでも説明してくれる。質問をされても嫌な顔一つしない」と語った。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。


この記事の原文はこちら

同じジャンルの記事を見る


翻訳者:H.K C.O H.N MY.S N.M.M
記事ID:6432